ダンジョン編-17
とにかくこの場をまとめる必要があった。
ケイモは頭を掻いて
「あー、その……なんだ。人が嫌がることをするのはーー」
「ここから第2第3のゼオンが誕生するかも知れないんですよ! すごい名誉なことです!! だからあなたからも是非!」
ヒネクは苦い顔で、
「おい勘弁してくれよ。年寄りから生き血を搾り取ろうなんて無茶言うな」
「そう言わず! 少し、ほんの少しですから!」
東方に棲むという魔族の一種である吸血鬼みたいだ、とケイモは思った。
それからケイモは咳払いをした。
「なんかよくわからねーがここでは神様がお休みなんだぞ。さらに怪我人もいる。静かにするか、騒ぐのなら上でやれ。なにより、神様に客だ」
そこでようやくオーバンとヒネクもケイモの背後に立つユーインたちの存在に気づいたようだった。
オーバンがユーインを見てなぜか首をかしげる。
ユーインは気にした様子もなく、
「ヤジットは?」
「神様ならその上だ。あと呼び捨てにすんじゃねぇ」
ユーインが進み出て祭壇をよじ登って、ヤジットを覗き込んで、
「ヤジット起きて」
躊躇なくゆさゆさ揺らしはじめたのでケイモは驚愕した。
神様になんてことしやがる。それから呼び捨てにするな。
「……起きない」
揺らすのを辞めてしばらく考えたユーインがヤジット様に向けてやおら拳を振り上げたので、
「や、やめろ! やめてください!!」
慌てて止めた。
「でも起きない」
ユーインの不満げな顔に、いいから降りろと言いかけたところで、ザンエとかいう司教がなんだか意味ありげに咳払いをした。
「言いたいことがあったら言え」
「これは失礼。私、鑑定魔術を使えます。第二深度までですが。それでこちらの寝ている方を調べてみましょう。理由がわかるかも知れません」
「それはすごい!!!!」
驚いたように言ったのはオーバンだった。
何がすごいのかわからずケイモは首をかしげる。
「わからないんですか!? これで簡易測定ではなくてちゃんと測定できるはずです。こんなところに、アリオン女神の眷属である天使バササエルと契約している奇特な人がいるなんて!」
「奇特……ですか」
「そりゃそうでしょう。鑑定なんて教会の中以外使い道がないですから」
なんだかショックを受けた感じのザンエ司教に対してオーバンがニコニコしながらそう答えた。
このオーバンとか言う新入り、やけに癇に障る。こんな奴だっただろうか。もっと気配が薄い奴だと思っていたが……。
「ともかく鑑定かなにか知らねーが、向こうでやってくれ。神様が起きるーーのは、まぁいいのか。だが怪我人もいるんだ馬鹿野郎」
「怪我人」
ユーインが周りを見回した。
そして目をつぶって、何かを唱える。
そして次の瞬間、
「お、おお……!」
オーバンとザンエ司教がのけぞる。
ケイモも突然のことで驚きのあまり動けない。
ユーインの魔術の発動とともに現れたのは神々しい姿の聖霊だった。
次回更新は7日(水)の予定です。誤字脱字があればすぐに修正しますので教えていただける助かります。また感想などお気軽にぜひ。




