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あの後はすっかり、悪夢を見ることもなく数千年ぶりによく眠れた。首筋はすごいことになっているが。
「この赤いの、治していい?」
「嫌だ」
アズは首筋の痕のことになると、すっかりこの調子だ。
「お兄さんが甘えてくれた証なんだから、残しといてよ」
アズは拗ねている。唇が痛むのか少し話し方が変だ。
「……今日だけだぞ」
どうせ、今日は人に合わない。それでアズが納得してくれるなら、なんでもいいと思った。
しかし、人生というのは予想もしないことが起こるばっかりである。人と遭遇してしまった。しかも、知り合いに。
「リュカ君、首どうしたの」
「……虫刺され」
抑揚のない喋り方でリュカに質問するのは、記憶の竜守り。彼女は白髪をなびかせながらリュカの知らない男と一緒にいる。
「噛み跡もあるぞ……」
少年はあまりの激しさにかなり引いていた。
「……そちらの方は?」
「リオ」
記憶の竜守りは、それが当然であるみたいに答える。
「こっちの人間は?」
「アズです。僕と一緒に旅をしています」
人に人を紹介するときは、普通これくらいはいうものだろう。そうしないところが姉さんらしい、とリュカは懐かしくなった。
「2人は何してるの?」
「星を拾ってる」
「星?」
リュカが首を傾げると、リオが慌ててキラキラと光る、あの石を見せてくれた。
「お兄さん、これ、やっぱり星だって!」
アズはリュカの肩を掴んでジャンプする。
「お二人はこれをご存知ですか?」
リオに聞かれる。「ご存知も何も……」とリュカはあの石を取り出した。
記憶の竜守りと、リオの目が丸くなる。
「あたし達にちょうだい」
アズの方を見ると頷いていたので、収納から全ての石を取り出した。すると、低めの山くらいの量が出てきた。
「うわ……すごいな……」
リオは開いた口が塞がらない様子だった。アズは褒められたと思ったのか、ニコニコしている。
(すごいよな。これに付き合った僕が)
リュカは心の中で自分を称賛した。
「姉さん達はなんでこんなものを集めてるの?」
記憶の竜守りはキッとリュカを見つめた。
「星をまた、空に輝かせたいの」
「俺たちと一緒だ!!」
アズが叫ぶ。
「愛の姉さんに方法を聞いてきたよ」
リュカは平静を装っていたが、内心大興奮していた。
「竜守りが、自分の竜を手懐ければいいって」
記憶の竜守りはその言葉に体をブルリと振るわせる。
「……リュカ君はできる?」
リュカは結論が出ているのに、考えているフリをした。そうしないと、示しがつかないと思ったからだ。
「できない」
記憶の竜守りはほっとした。彼女は考えが全て顔に出るのだ。
「でも、」
と、リュカは続ける。
「やってみる価値はあると思う」




