10.9月6日
俺がこの計画を父親に相談したのは夜遅くのことだった。
その日の夜、母はすぐに寝てしまった。父が帰宅したのが22時過ぎのことだった。俺は一人静かに食事をする父に、そっと話しかけた。運送会社の社長として働く父は、この装置についてきっと理解をしてくれる。そんな気がしていた。
「…父さん、この前渡したあの装置、見てくれた?」
「あ、ああ」
父は、日頃引きこもって誰とも話さない俺に突然話しかけられて少し驚いている様子だった。
「あの自動運転装置の性能を見せるために、実証動画を撮ってサイトに流そうと思う」
「…そうか。たしかKシステムだったな」
「そのKシステムを、高速バスに設置しようと思う」
「人手不足な業界だからな。良いと思うぞ」
父はビールを飲み、豚の角煮をつまんでいた。
「走っている深夜バスに設置して、運転手がいなくても車が走るところを証明したい」
「……」
父の箸が止まった。
「俺が深夜バスに乗って設置する。2時間ぐらいして、運転手を運転席から引きずりだして、誰もいなくてもバスが走るところを証明したい。これを動画で撮れば装置の有効性を証明できる」
俺が計画を説明した。父は静かに口を開いた。
「運転手を引きずりだす、というのは少し乱暴じゃないのか?」
「でも運転手がいると、運転していると思われる。運転席に誰もいないことを証明しないと自動運転の意味がない」
「運転手は仕事中だから抵抗するぞ」
「抵抗したら脅迫する」
「…そうか」
父はそうつぶやくと、再び黙って食事を続けた。俺の熱意に押されたのか、しばらく終始無言だった。しばらくして、重い口を開いた。
「…そうか。わかった。乗車するバスはこちらで手配しよう」
「ありがとう。父さん」
ふと、俺の涙が流れた。父はそれを無言で見つめていた。




