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第43話:死亡エンドを全力回避したら、愛を知れて、親友ができて、ハッピーエンドを迎えることができた

 アメリはテオを選んだ、それは彼女自身が気持ちに気づいて決めたことだ。迷いも、後悔もしていない。



「してないけれどぉぉぉぉ」



 中庭のテラスでアメリは腹部を押さえながら項垂れる。今、竜人の国は盛り上がりを見せていた。花嫁は人間で、しかも両者が盛大な告白をしたという話が国中に広まっている。


 どんな豪快な女性なんだ、度胸がある人間だと話は膨らみをみせて期待値が上がっていた。そんな中、妃お披露目の日というのが待っている。花嫁が王子と共にパレードを城下で行うのだがその日がもう数日と迫ってきていた。思った以上の国民の期待にアメリは不安でいっぱいであった。



「そんなもん、気にしなくていいだろ」


「気になるんですよぉぉ。と、いうかですよ! どうして実家の中心で叫んだことが広まってるんですかぁぁあああ」


「一緒にいた兵士たちだろ、多分」

「そうですよねぇえっぇぇ! それしかないですよねぇ!」

「俺だって叫んだこと広まってるからな!」



 二人そろって叫んだことは広まっている。人の口には戸が立てられないというけれど、本当なのだなと思い知る。別に度胸があるわけでも豪快なわけでもないというのになんなのだとアメリはあぁとテーブルに突っ伏した。


 中庭のテラスにはテオとアメリの二人しかいないがもう少しすれば、マリアがやってくるころだろう。腹を押さえながら突っ伏す彼女にテオは困ったように頭を掻いた。



「アメリ」

「なんですか?」

「お前、本当に俺でよかったのかよ」

「いいですよ」



 アメリは顔を上げながら答えた。


 初めて来たとき、貴方はわたしを面白い人間だと言った。おかしな人間ではなく、面白いと。事件を解決したあと真っ先に褒めてくれて、貴方は不器用だけど優しい。貴方がいたから、竜人も怖くないと感じれたのだから――



「そんなテオ様だからいいのですよ」



 不安ならば何度でも伝える、わたしはテオ様を愛していると。アメリの言葉にテオは安堵したように息をついた、やはり少しばかり心配だったようだ。



「心配なのですか?」

「別にお前を疑ってるわけじゃねぇよ。ただ、その……俺は察せられねぇし……」


「頑固でもありまもんね。そこはテオ様が自覚しているならいいんですよ。直そうとか、気にかけているのならわたしは気にしませんよ」



 アメリは気にしていなかった。頑固な部分も、ちょっと察せられない部分も、彼は自覚し気にかけているのを知っているから。



「そんなテオ様が好きなのですよ」



 アメリはにこりと笑む。朗らかに、優しいその微笑みに見惚れたテオはそれを隠すように頬を掻いた。それは照れ隠しだとアメリは知っているけれど言わないでおく、その癖も好きなのだ。



「アメリ?」

「はい?」

「どうした?」

「なんでもないですよ」

「そうか――」

「カーっ!」

「あぁ、カンジャル! テオお兄様に体当たりしては駄目じゃない」



 カラスがテオの頭にぶつかってマリアが慌てて抱きかかえながら叱った。テオは睨むようにカラスを見遣るが、彼は気にしていない様子でつーんとしている。


 カンジャルと名付けられた彼はマリアの伝言を無事に届けたとして、好きな宝石をもらっただけでなく彼女の部屋で暮らす権利を得たのだ。メルゥと喧嘩をすることもしばしばあるが、アメリの仲裁もありやっていけている。



『ばーかばーか、幸せ者め!』

「絶対馬鹿にしてるだろ……」

「えっと、祝福はしてくれてますよ?」

「馬鹿にはしているのね」



 くすくすとマリアは笑うとつられるようにカンジャルが鳴く。テオはむっとするも扱いに慣れてしまったようだ。


 そんなテオの前にちゅんちゅんと小鳥が二羽、とまる。アメリはすぐによく話す小鳥たちだと気づいた。



「なんだ、こいつらは」

「わたしがよく話す子たちです。助言してくれたんですよ」



 この子たちのおかげでもあるのだ、自分の想いに気づいたのはとそう話せば、テオはそうかと小鳥たちを見遣る。


 小鳥たちは羽根を羽ばたかせながら鳴く。



『おめでとう』

『おめでとう』



 小さな祝福にアメリは頬をほころばせた。何を言っているのかテオやマリアには分からないけれど、それが悪い言葉でないのはそれだけで分かる。



「まぁ、心配すんな。不幸にはさせねぇからよ」



 こいつらの祝福を無駄にはしない、それはテオなりの彼らへの言葉だった。それが彼らしくて、アメリは思わず笑ってしまった。



「それはそうよねぇ。泣かせでもしたらバージルお兄様とシリルお兄様から怒られるだけじゃすまないですもの~」

「うっるせぇ!」

「ふふふ、頑張ってアメリを幸せにしてね」

「分かってる!」

「あ、そうだお兄様。お父様が式のことでお話があるって言ってたわよ」



 さっき探してたのとマリアが伝えれば、テオは「もっと早く言えよ」と言いながら席を立った。



「アメリ、また後でな」

「はい、気を付けて」



 テオはアメリの頭をわしゃっと撫でると中庭を出ていく。その背を見送るとマリアはアメリの隣に座って「おめでとう」と微笑んだ。



「あんちゃん、大変だったでしょ?」

「それは、そうですね」

「いきなり転生してさ、そしたら死亡エンドまっしぐらで。不安もあったと思う」

「それはマリア様がいたから大丈夫でした」

「でも、巻き込んだのはワタクシよ、多分」



 自分が生まれ変わったらあんことまた会いたいだなんて思ったからこうなったのだとマリアは言う。そうかもしれないけれど、彼女が謝ることではないとアメリは思ったので「大丈夫ですよ」ともう一度、伝えた。


 前世が猫だった身にいきなり人間のしかも死亡エンドまっしぐらの令嬢に転生したのは酷だと思ったけれど、今は生まれ変わってよかったとアメリは思っている。大好きだった飼い主と再会できて、友達に親友になれて、人間のことを竜人のことを知れて、誰かを愛する感情を抱いた。それは生まれ変わってこなかったらきっと知れなかったことだから、アメリは「幸せです」と笑む。



「また一緒に居られることも、テオ様を愛したことも、全部」

「あんちゃん……」

「だから、マリア様。また一緒にいてください」



 前世の時みたいに一緒に遊んで、傍に居てほしいとアメリに言われてマリアは彼女に抱き着いた。そんなこと頼まれなくてもずっと一緒にいるよと。



「あんちゃんの幸せを見守るから! ずっと一緒よ、親友だもの!」

「マリアさまぁ」

「うわーん! テオお兄様にうんと幸せにしてもらってね!」



 嬉しくて二人は泣いてしまった。元飼い主と猫という垣根ではなく、人間と竜人の親友として共に言われることが。泣きながら約束を交わす、それは二人だけの大切な秘密であって大事な宝物として。



END

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