NO GO!(1) ──子供の頃から、繰り返し繰り返し見ている夢【挿絵あり】
・
・
・
たくさんの人の背中が遠ざかる。
大きな船に乗ったみんなの姿が、陸を離れて遠ざかる。
息を飲んで伸ばそうとした手が、伸びきることなく宙を泳いだ。
・
・
・
……また、いつもの夢か……。
背中に嫌な汗がじっとり滲む。
片手をついて、ゆっくりと半身を起こして目をこらす。
カーテンの隙間から漏れる月の明かりが、蝉の鳴き声と共に、室内に差し込んでいた。
すぐに目が慣れて、見慣れた部屋の様子がおぼろに浮かぶ。
となりで寝ている呉葉ちゃんを見下ろすと、眉間にシワを寄せていた。
なんか嫌な夢でも見てるんだろうな。
呉葉ちゃんの寝顔は、いつも大抵こんな感じだ。
どんな夢を見てるんだろう? 楽しくない夢であることは間違いない。
あまり……というか、ほとんど呉葉ちゃんとそういう話をしたことがない。
なんとなく、そういう話題は避けてしまう。
多分、袋小路だから。共感の前に閉塞感が押し寄せる……っていうのが、お互い話す前から分かるから。
それに、こんな話はいつでも出来る……っていうのもあるかもしれなかった。
それはさておき、アタシの寝顔も大抵こんな感じなんだろうか?
そっと指を伸ばして呉葉ちゃんの眉間に触れる。
軽く押して……愁眉? ってやつを開こうと、優しく撫でる。
一向に開かれないそれに小さく嘆息。
代わりに頭を、そっと撫でてみる。
黒い髪を、指の間に泳がすように梳いていく。
再び眉の上をなぞるように優しく撫でた。
何度も何度も続けていると、やがてシワのよった眉間がひらかれ、小さな達成感に包まれる。
外の蝉の鳴き声が、アパート全体を揺るがすようだった。
子供の頃、こんな夜中に蝉って鳴いてたっけ???
まあ、いいや。妙に目が冴えてしまった。
冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注ぐ。
ちゃぶ台にそれを置き、正座して。キリッと眉を上げてみる。
うん。
さっきの夢……。
子供の頃からくりかえし、くりかえし見ているやつだ。




