表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
♪♪♪♪ ハッタツショウ害シャノ唄 ♪♪♪♪   作者: 動物の世界で人間らしく
第三章 ゼロを目指して歩いてる
21/21

NO GO!(2) ──同じ船とか。



 うん。




 さっきの夢……。


 子供の頃からくりかえし、くりかえし見ている。

 




 これまでの半生を振返るに……アタシは人生のどの段階でも、みんなについていけてなかった。

 いつも置き去りにされていた。




 幼稚園のとき、うまく周りの子供たちに溶け込めず。


 小学校のとき、遠足や運動会で……どこのグループにも入れてもらえず、気が付くとポツンと一人取り残された。


 ワイワイがやがやと楽しそうな女子たちの背中は、アタシを拒絶しているよう。


 授業中、先生に指を指されても、何も答えられない。


 分数の足し算も掛け算も……まったく意味が分からなかった。何が分からないのかも分からない。


 国語の時間……作文や、読書感想文がいつまで経っても書けなかった。


 本を読んでも、何も感じることはなかった。

 物語の主人公たちが何をしているのか? 何を考えているのか? まったく読み取れない。何も心が動かない。


 せいぜいアタシに分かるのは、面白いか、つまらないか……それだけだ。


 正直に「つまらなかったです」と1行書くと、そこで終わった。


 他の生徒は次々に書き終わり、原稿用紙を提出していく。


 教室の中の生徒の数が、徐々に減っていく。



 焦る。



 最後の一人になる……空回りする脳味噌。


 書くことなんて最初から何も浮かんでないのに、ますます分からなくなっていく。



 焦燥だけが募り、まなじりが震え始める。







 中学生のとき、周囲の同級生と、会話が成立しないことに随分苦しい思いをさせられた。



 何故かこちらの意図が伝わらない。

 何を言っても、悪い風に解釈される。



 高校に入ってからも、ずっとそうだ。



 皆がアタシに背中を向けていた。



 誰とも、どこにも行くことのない休日。

 部屋で一人、何もせずに過ごす時間。



 今、アタシは大切な何かを浪費し、棄損している……指と指の隙間から何かを大量に取りこぼし、失い続けている……そんな焦りと不安に追い詰められた。





 一人取り残されて、どこにも行けない……。





 高校三年のとき、勉強についていけなくて留年した。



 みながアタシに背中を向けたまま、楽しそうな声と笑顔を交わしながら遠ざかる。


 一人同じ場所に残されて、後からやって来た子達とは、またうまくやれない……





 次の年はなんとか卒業出来たけど、行き先はどこにもなかった。

 





 アタシは人生の分かれ道に差し掛かる度、みんなの移動先についていくことが出来ないでいた。



 みんなと同じ乗り物に同乗出来ない……。








 でも……今は、それでいいんだと思ってる。





 みんなと同じペースで、人生を前へ前へと。進み続ける必要はない。


 乗れない船に無理に乗ろうとしても、振り落とされて海の藻屑になるだけだ。





 落ち着いて。

 深呼吸をひとつして。



 まわりをよく見て。

 アタシにもできそうなことを探して。


 アタシにも進めそうな道を見つけて。

 “あっ、やっぱり無理そ”ってなったら引き返して。



 そんな感じで。



 無理に前に進まなくていい。

 青くて綺麗(に見える)、広い海に乗り出せなくてもいい。



 ずっと陸にとどまっていてもいいんだ。




 とにかく、焦らず……っ!






 コップの中の麦茶を飲み干して、室内の茹るような空気を掻き分けて布団に戻る。




 さて、もう一回寝れるかな……



 気づいたら、また険しそうな顔をしている呉葉ちゃんを見て、エアコンの温度を1℃下げる。



 

 押し寄せられた眉間にもう一度指を伸ばす。




 3回撫でて、なおらなかったら諦めよ、って心にきめて、眉の上を指のお腹でゆっくりとなぞった。




 どうか、明日がいい日でありますように。

 おやすみなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ