NO GO!(2) ──同じ船とか。
うん。
さっきの夢……。
子供の頃からくりかえし、くりかえし見ている。
これまでの半生を振返るに……アタシは人生のどの段階でも、みんなについていけてなかった。
いつも置き去りにされていた。
幼稚園のとき、うまく周りの子供たちに溶け込めず。
小学校のとき、遠足や運動会で……どこのグループにも入れてもらえず、気が付くとポツンと一人取り残された。
ワイワイがやがやと楽しそうな女子たちの背中は、アタシを拒絶しているよう。
授業中、先生に指を指されても、何も答えられない。
分数の足し算も掛け算も……まったく意味が分からなかった。何が分からないのかも分からない。
国語の時間……作文や、読書感想文がいつまで経っても書けなかった。
本を読んでも、何も感じることはなかった。
物語の主人公たちが何をしているのか? 何を考えているのか? まったく読み取れない。何も心が動かない。
せいぜいアタシに分かるのは、面白いか、つまらないか……それだけだ。
正直に「つまらなかったです」と1行書くと、そこで終わった。
他の生徒は次々に書き終わり、原稿用紙を提出していく。
教室の中の生徒の数が、徐々に減っていく。
焦る。
最後の一人になる……空回りする脳味噌。
書くことなんて最初から何も浮かんでないのに、ますます分からなくなっていく。
焦燥だけが募り、眦が震え始める。
中学生のとき、周囲の同級生と、会話が成立しないことに随分苦しい思いをさせられた。
何故かこちらの意図が伝わらない。
何を言っても、悪い風に解釈される。
高校に入ってからも、ずっとそうだ。
皆がアタシに背中を向けていた。
誰とも、どこにも行くことのない休日。
部屋で一人、何もせずに過ごす時間。
今、アタシは大切な何かを浪費し、棄損している……指と指の隙間から何かを大量に取りこぼし、失い続けている……そんな焦りと不安に追い詰められた。
一人取り残されて、どこにも行けない……。
高校三年のとき、勉強についていけなくて留年した。
みながアタシに背中を向けたまま、楽しそうな声と笑顔を交わしながら遠ざかる。
一人同じ場所に残されて、後からやって来た子達とは、またうまくやれない……
次の年はなんとか卒業出来たけど、行き先はどこにもなかった。
アタシは人生の分かれ道に差し掛かる度、みんなの移動先についていくことが出来ないでいた。
みんなと同じ乗り物に同乗出来ない……。
でも……今は、それでいいんだと思ってる。
みんなと同じペースで、人生を前へ前へと。進み続ける必要はない。
乗れない船に無理に乗ろうとしても、振り落とされて海の藻屑になるだけだ。
落ち着いて。
深呼吸をひとつして。
まわりをよく見て。
アタシにもできそうなことを探して。
アタシにも進めそうな道を見つけて。
“あっ、やっぱり無理そ”ってなったら引き返して。
そんな感じで。
無理に前に進まなくていい。
青くて綺麗(に見える)、広い海に乗り出せなくてもいい。
ずっと陸にとどまっていてもいいんだ。
とにかく、焦らず……っ!
コップの中の麦茶を飲み干して、室内の茹るような空気を掻き分けて布団に戻る。
さて、もう一回寝れるかな……
気づいたら、また険しそうな顔をしている呉葉ちゃんを見て、エアコンの温度を1℃下げる。
押し寄せられた眉間にもう一度指を伸ばす。
3回撫でて、なおらなかったら諦めよ、って心にきめて、眉の上を指のお腹でゆっくりとなぞった。
どうか、明日がいい日でありますように。
おやすみなさい。




