表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
♪♪♪♪ ハッタツショウ害シャノ唄 ♪♪♪♪   作者: 動物の世界で人間らしく
第二章 人に値札でも付いているのか?
10/21

017 面談3──同じお金をもらって、100の仕事をしている人もいれば、マイナスの人もいる──


「彼……発達障害者だったんだよ……そのことでずっと一人で悩んでいたみたいで……だから、もしもだよ? もしも蜷川になかわさんも何か…………そういうことで悩んでいたら、一人で苦しんでいないで相談して欲しいんだ。僕はそのためにいるんだから」

 

 伏せていた視線を上に上げ、支店長と目を合わせると、彼はその大きな顔をクシャっと笑みに歪めた。生じた目尻の皺から、黒い虫でも湧いて出て来そうだった。



「いいえ、わたしは……そういうのはありません」

「そう? 本当に?」


「はい。大丈夫です」

「なんか、苦手な仕事とかない? うまくいかないこととか。仕事以外でも、何でもいいから」


「何もそういうことはありません。楽しく仕事をさせていただいています」

 膝に置いたこぶしを強く握り締め、振り絞るような声で答えた。



「…………いやぁ……誰がとは言わないよ。あくまで噂話なんだけど……君が発達障害者なんじゃないかって、話をする人がよくいるんだよねぇ……」

「…………」



 親指の骨がポキリときしむ音が、どこか遠くで聞こえた。



「いや、もちろん、君がそうだってことを言いたい訳じゃないよ。でもさ、ほら! なんて言うか、わかるでしょ?」



 呉葉は理解した。恐れていたことが、とうとう現実に染み出てきたのだ。

 

「ほら、給料ってみんな同じでしょ? 基本的に。同じお金を貰って、100の仕事をしている人もいれば50しかしていない人もいる……でも、中にはもっと酷くて、マイナスの人もいる……」

「…………」


 呉葉は唇をきゅっと強く引き結び、目の周りに力をめた。

 


「でも100の人も、マイナスの人も同じ給料を貰ってるんだ……これって何か変だって……あくまで一般論だけど、そう思わない?」

「…………」



 握り締めたこぶしの感覚が、徐々に曖昧になっていく。


 

「……どうだろう? 蜷川さん、今一度、自分の適性と自分のしたいことが一致しているか、真剣に考えてみてはどうかな? まだ24歳だよね? それって、とても素晴らしいチャンスだと思うんだ」

「…………」


 赤津支店長は呉葉の目を見て、放さない。それは決意を伴った目力で。

 



 まるで喪心した人のように。

 呉葉は全身の輪郭が、ぼんやりと溶けていくような感覚に包まれた。


 


 そんな中、呉葉は支店長に抗うように、必死に言葉を絞り出す。


「…………いえ……、わたしは今の仕事が楽しいです。身体も……心身ともに健康です。これまで通り……この職場で……一所懸命働きたい……です……」



「…………」

「…………」


 最後に支店長はこんな言葉を言い残し、やっと呉葉を面談から解放した。


「まぁ、今日明日に答えを求めてる訳じゃないからさ。真剣に今の自分、これからの自分のことを考えてさ。新しい人生を始めるつもりで、前向きに考えてよ」


 ・

 ・

 ・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ