016 面談2──本人のプライバシーに関わるから、大きな声では言えないんだけど──
「そうかぁ……まぁ……それはいいとして」
「…………」
無意識のうちに身体が強ばり、呼吸が浅くなっていた。
「それじゃあ、蜷川さんは……今の仕事には慣れた?」
「は、はい」
「うーん。本当にそうなのかなぁ……」
「………………」
「君と同期の安田くん、四月に本社の企画課に栄転したよね? で、今は開発課と積極的にやり取りして、新商品立ち上げのプロジェクトリーダーをやってるよね」
「はい……」
「あと、同じく同期の井上さん。彼女は営業2係で、先月は1位の売り上げを叩きだして、次期エースとして飛ぶ鳥を落とす勢いだってのは知っているよね?」
「はい…………」
「……君は今の事務係で……なんていうのかなぁ……わたしはこれのエキスパート、…………ここは自分のテリトリーです。この仕事ならわたしに任せて下さい、って感じの得意分野を、何か持ってる?」
「……………………」
「普通、三年目だと……なんて言うのかなぁ。一人立ちって言うか、自分で新たな仕事を作るというか……広げていくもんなんだよね。……はっきり言って、君は入社一年目に与えられた仕事をこなすので精一杯じゃないの? 遠くから君の働きぶりを見ていると、そんな風に見えちゃうんだよねぇ……」
「………………………………」
入社一年目の社員の仕事すら、正直勤まっていない呉葉は何も言い返せず、悔しさのうちにその目を伏せた。
「なんと言うか、適材適所って言うの? 君には君に適した、君の能力を十二分に活かせる場所があると思うんだ」
「…………」
「先日、ここを辞めた古倉さんのこと覚えてるでしょ? これは本人のプライバシーに関わるから、大きな声では言えないんだけど…………」
赤津支店長はそう言うと、声を潜めた。
半ば無意識に、呉葉は呼吸を止めていた。




