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19/20

情報提供⑬ 帰還者



こんばんは、無記名です。


今回も、

読者の方からの情報提供になります。


連絡をくださったのは、

四十代男性。


二十年以上前、

山中で一時行方不明になった経験があるとのことでした。


本人の希望により、

詳細な地域名などは伏せています。


──────────────────


無記名:

「当時の状況を教えていただけますか」


男性:

「友人と山へ入ったんです」


男性:

「別に心霊スポットとかじゃないですよ」


男性:

「釣りみたいなもんでした」


──────────────────


無記名:

「行方不明になったのはいつ頃ですか」


男性:

「高校生の時ですね」


男性:

「三日くらいだったと思います」


──────────────────


無記名:

「その間の記憶は?」


男性:

「ほとんど無いです」


男性:

「だから今でも変な話なんですよ」


──────────────────


男性は終始、

落ち着いた様子でした。


話し方も普通です。


ただ、

当時の記憶について触れると、

時々言葉が止まる。


何かを思い出そうとしているようでした。


──────────────────


無記名:

「目が覚めた場所は覚えていますか」


男性:

「川の近くでした」


男性:

「でもそれくらいですね」


男性:

「どうやってそこに行ったかも分からない」


──────────────────


無記名:

「橋はありましたか」


男性:

「……分かりません」


──────────────────


無記名:

「集落は?」


男性:

「無いと思います」


男性:

「少なくとも覚えてない」


──────────────────


無記名:

「白い洗濯物は見ませんでしたか」


──────────────────


ここで、

男性が黙りました。


──────────────────


男性:

「なんで知ってるんですか」


──────────────────


無記名:

「え?」


男性:

「いや……」


男性:

「別に覚えてる訳じゃないんです」


男性:

「でも今、

 聞いた瞬間に思い出したというか」


──────────────────


男性は、

しばらく視線を落としていました。


──────────────────


男性:

「白かった気がする」


男性:

「いっぱいあった気がする」


男性:

「なんでだろう」


──────────────────


その後、

男性は何度か首を振っています。


──────────────────


男性:

「変な話ですね」


男性:

「覚えてないんですよ」


男性:

「でも、

 そこだけ引っ掛かる」


──────────────────


インタビューは続きました。


ただ、

ここから少し雰囲気が変わります。


──────────────────


男性:

「逆に聞いていいですか」


無記名:

「どうぞ」


男性:

「あなた、

 どこまで行ったんですか」


──────────────────


意味が分かりませんでした。


──────────────────


無記名:

「現地確認のことでしょうか」


男性:

「橋です」


──────────────────


しばらく沈黙。


──────────────────


無記名:

「渡っていません」


──────────────────


男性:

「そうですか」


──────────────────


そう言った後、

男性は少し笑いました。


ただ、

その表情が妙に気になった。


──────────────────


男性:

「嘘だと思った」


──────────────────


冗談だったのかもしれません。


ただ、

理由の分からない違和感が残りました。


──────────────────


その後、

インタビューは終了。


録音も停止しています。


──────────────────


ただ、

帰宅後、

内容確認のため録音を聞き返していた時、

妙なことに気付きました。


──────────────────


会話が違う。


──────────────────


最初は聞き間違いだと思いました。


何度も再生しています。


──────────────────


問題の部分です。


私の記憶では、


『橋はありましたか?』


と質問していました。


──────────────────


録音では違いました。


──────────────────


『向こうはどうでしたか?』


──────────────────


そう聞こえる。


──────────────────


何度聞いても同じです。


編集はしていません。


録音ファイルにも異常はありません。


──────────────────


また、

別の箇所も記憶と違っていました。


男性が質問した直後です。


──────────────────


男性:

「あなた、

 どこまで行ったんですか」


──────────────────


その後。


私の返答。


──────────────────


録音では、

少し聞き取りづらい。


ノイズもあります。


ただ、

どうしても、


『まだです』


と聞こえる。


──────────────────


私は、

そんな返答をした記憶がありません。


──────────────────


帰宅後から、

妙に川の音が気になります。


気のせいかもしれません。


今日はここで終わります。

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