情報提供⑬ 帰還者
こんばんは、無記名です。
今回も、
読者の方からの情報提供になります。
連絡をくださったのは、
四十代男性。
二十年以上前、
山中で一時行方不明になった経験があるとのことでした。
本人の希望により、
詳細な地域名などは伏せています。
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無記名:
「当時の状況を教えていただけますか」
男性:
「友人と山へ入ったんです」
男性:
「別に心霊スポットとかじゃないですよ」
男性:
「釣りみたいなもんでした」
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無記名:
「行方不明になったのはいつ頃ですか」
男性:
「高校生の時ですね」
男性:
「三日くらいだったと思います」
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無記名:
「その間の記憶は?」
男性:
「ほとんど無いです」
男性:
「だから今でも変な話なんですよ」
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男性は終始、
落ち着いた様子でした。
話し方も普通です。
ただ、
当時の記憶について触れると、
時々言葉が止まる。
何かを思い出そうとしているようでした。
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無記名:
「目が覚めた場所は覚えていますか」
男性:
「川の近くでした」
男性:
「でもそれくらいですね」
男性:
「どうやってそこに行ったかも分からない」
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無記名:
「橋はありましたか」
男性:
「……分かりません」
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無記名:
「集落は?」
男性:
「無いと思います」
男性:
「少なくとも覚えてない」
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無記名:
「白い洗濯物は見ませんでしたか」
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ここで、
男性が黙りました。
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男性:
「なんで知ってるんですか」
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無記名:
「え?」
男性:
「いや……」
男性:
「別に覚えてる訳じゃないんです」
男性:
「でも今、
聞いた瞬間に思い出したというか」
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男性は、
しばらく視線を落としていました。
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男性:
「白かった気がする」
男性:
「いっぱいあった気がする」
男性:
「なんでだろう」
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その後、
男性は何度か首を振っています。
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男性:
「変な話ですね」
男性:
「覚えてないんですよ」
男性:
「でも、
そこだけ引っ掛かる」
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インタビューは続きました。
ただ、
ここから少し雰囲気が変わります。
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男性:
「逆に聞いていいですか」
無記名:
「どうぞ」
男性:
「あなた、
どこまで行ったんですか」
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意味が分かりませんでした。
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無記名:
「現地確認のことでしょうか」
男性:
「橋です」
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しばらく沈黙。
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無記名:
「渡っていません」
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男性:
「そうですか」
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そう言った後、
男性は少し笑いました。
ただ、
その表情が妙に気になった。
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男性:
「嘘だと思った」
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冗談だったのかもしれません。
ただ、
理由の分からない違和感が残りました。
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その後、
インタビューは終了。
録音も停止しています。
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ただ、
帰宅後、
内容確認のため録音を聞き返していた時、
妙なことに気付きました。
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会話が違う。
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最初は聞き間違いだと思いました。
何度も再生しています。
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問題の部分です。
私の記憶では、
『橋はありましたか?』
と質問していました。
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録音では違いました。
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『向こうはどうでしたか?』
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そう聞こえる。
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何度聞いても同じです。
編集はしていません。
録音ファイルにも異常はありません。
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また、
別の箇所も記憶と違っていました。
男性が質問した直後です。
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男性:
「あなた、
どこまで行ったんですか」
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その後。
私の返答。
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録音では、
少し聞き取りづらい。
ノイズもあります。
ただ、
どうしても、
『まだです』
と聞こえる。
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私は、
そんな返答をした記憶がありません。
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帰宅後から、
妙に川の音が気になります。
気のせいかもしれません。
今日はここで終わります。




