ちぐはぐこくはく② side IKU
中学3年生の、地味な男の子とキラキラした女の子。
普段の生活からテリトリーの異なる二人が、気がつけばお互い気になるように……。
※ 保険の為R15設定にしてあります。
「わたしね ━━━ 告白されちゃった」
攻めたーーーーーーーー!!
東雲くんの気持ちを探るためとはいえ、こんなに攻めて大丈夫なのわたし!?
ほら!
東雲くんてばあまりに突然の話できょとんとしちゃった!
でもさっきまでの様子だと、少しはわたしのことを気にしてくれてると思うし!
気にしてくれてたよね? 東雲くん。
「……」
……ん?
あれ?
もしもーし?
東雲くん?
目の前で手のひらをひらひらとさせても反応が無い。
東雲くんの目をじっと覗き込んでみても、どこか遠くの方に照準が合っているようで、わたしの存在そのものを認識していないようだ。
これって……もしかしたらとんでもなく衝撃を受けているのでは!?
ショックだったのでは!?
だとしたらいやん! うれしい!
ショックであれ!
YouはShock!!
そのまま彼の目を見つめていると、突然目に光が戻ってきた。
「あの……だ、誰に?」
「あ、いや! 話の流れ的に生徒会長にだよね!」
耳を真っ赤にして口にした質問に、自分で答えてまた止まる。
どうやら頭の中でぐるぐると、様々な思考が巡っていたようだ。
次に口から出た言葉は、あからさまだった。
「な……なんて返事をしたの?」
返事が気になるってことは……ってことだよね?
合ってるよね!?
しかしここで慌ててはいけない。
あくまでも主導権はわたしの手に握っておきたい。
じゃないとわたしの心臓が、ドキドキのブレイクビーツでもたないもの。
「気になる?」
逸る気持ちを抑えて、なんとか必要最低限の言葉を絞り出し、焦らしてみるわたし。
もっとも自らも焦れているから、諸刃の剣だったりするわけだが。
質問に質問で返すのは良く無いけども、やっぱりもう少しはっきりとした形で言質を取らねば、心許ない。
不安な乙女心というやつなのだ。
「き、気になる!」
言質取ったーーーー!!
「それに昨日のことも……!!」
「え!? 昨日のこと……!?」
反撃もついてきちゃったーーーー!!!!
昨日のことってあれよね!?
抱きついたこと……!!
最初はドキドキしたけど、東雲くんの心臓の音を聞いてたら安心してきたっけ。
くっついているところはぽかぽかで、そうそう、思っていたより筋肉質だったな……ふふ。
はっ!
だめよ郁!!
思い出しうっとりから、現実に戻らないと!!
「ま、まずその……告白はちゃあんと断りました!」
はぅ……焦って早口になっちゃった!
それに『ちゃあんと』って……断るのが当たり前みたいに……!!
いえ、わたし的には東雲くん以外考えられないから、断って当たり前なんだけど、これ完全にばれちゃったかも……!!
「あ……そ、そうなんだ」
ほら、東雲くんの反応、微妙に訝しげじゃない?
ここは深く考えさせちゃダメ! 絶対!
「それと、昨日のことって……駅前でのこと……だよね?」
「あ、はい! そうです……!!」
わずかに間が空いちゃったけど、多分セーフ!
きっとセーフ!
でも抱きついた理由を教えるって……それもうつまりはそういうことで。
しかも勝手にヤキモチ妬いて……はわわわわわ……恥ずかしすぎる!
でもでも……。
がんばるって決めたんだから!
今、わたしの気持ちをはっきりと東雲くんに伝えよう。
「あれはその……」
改めて決心し口を開いたその時、教室のドアが開き、御厨さんが入ってきた。
なんでーーーー……。
きゅぅぅぅーーん。
「あ、いたいた」
いたいたじゃないのよ。
御厨さんはわたしたちを見つけると、ずかずかと歩いてきて東雲くんの隣の席に座り、東雲くんとわたしの顔を交互に何度も見ると、面映ゆくなる言葉を口にした。
「ふーん……今日も二人っきりでいるんだね」
あらあらあらららんらんるー!
そんなにいつも一緒にいるように見えるのかしら!
うふふふふ。
「もしかして、お弁当もいつも一緒に食べてるの?」
「こ、これは、お昼休みにお弁当を食べる暇がなかったから……」
わたしの手元のお弁当箱を見て、全身がくすぐったくなるような言葉を畳み掛けてくる。
もっと言ってもいいのよ?
「でも今も東雲くんの席に来て食べてたんだよね?」
ひゃぁ……本当にもっと言ってきたー。
東雲くんと二人きりで、大切な話をしていたところを邪魔された形なのに、こんなにわたしを喜ばせる発言を重ねられると、つい許したくなっちゃう。
さては人たらしね!
決してわたしがちょろいのではないと言っておこう!
「それよりも何か用?」
そんなわたしをよそ目に、珍しく強めの口調で問い返す東雲くん。
語気の強い東雲くんも最高に素敵!
そうよそうよ言ってやってダーリン!
なんて言ってみたりしてーーーーきゃーー!!
もちろん心の中でだけだけど!
「せっかく東雲くんと再会できたからさ。一緒に帰りたいなって思って誘いにきたんだ」
「「え!?」」
御厨さんの発言に、わたしは驚いて声を上げてしまった。
そしてなんと、同じタイミングでダーリンも声を上げる……!
シンクロしちゃった!
もっと言ってやって言ってやって!!
今ダーリンは、わたしと大切な話をしているんだから、ちゃんと断っちゃって!!
「……この間も二人同時に驚いてたよね。息ぴったり」
「やっぱり二人は付き合ってるの?」
くぅぅぅ……!!
こやつ、またもや人を喜ばせる言葉を投げかけてくる!
もはや人たらしどころではなく、メロ術師!!
決してわたしがちょろいのではないと、重ねて言っておこう!
「今ちょっと大切な話をしてたんです!」
おっと、さすがダーリンはこの程度では揺るがない!
さすだり!!
本当にガツンときちんとちゃんと言ってくれちゃった!
そうよ、ダーリンが御厨さんと一緒に下校する未来なんて、一生来ないんだから!
「一緒に帰るのはまたの日にしてください!」
えーー!?
「あ、え!? ちょっとちょっと……!」
「とにかく今日はだめです!」
まだ何か言いたそうにしている御厨さんを、強引に教室の入り口まで押して行き、ドアを閉めるダー……東雲くん。
そしてちょっとどやった顔で、私の目の前に戻ってきたので言ってやりました。
「今日じゃなかったら一緒に帰るんだ?」
追い返すまではよかったんだけどね。
……ばか。
━━━ その後、御厨さんが帰ってすぐに親から急用の電話が入り、少し悲しそうな表情をした東雲くんを一人残して帰ることになった。
途中、下駄箱で御厨さんに追いついたけど、気が付かないふりをして出てきちゃった。
東雲くんにもちょっと……ううん。
かなりきつい言葉だけ残してきてしまい、現在帰宅後の反省中。
わたしって独占欲強いのかなぁ。
途中まではいい感じだったのに……締まらないんだからもう。
『一緒に帰るのはまたの日にしてください!』
東雲くんはそう言った。
つまり、御厨さんと二人で帰る気があるってことだよね。
二人で帰るってかなりのイベントだよ?
わたしがそう思ってるだけで、男の子からしたらたいした事じゃないのかしら?
でもそういえば佐伯くんもあの時……。
『その時から俺、好きになっちゃったんです。』
『御厨さんのことが!』
昨日わたしは、確かに佐伯くんから告白された。
でもそれはなんと恋愛相談、わたしが相手ではなかったのだ。
だからその、東雲くんには私が告白されたって思われるように誘導……言ってしまえば嘘をついたことになるのよね。
でも佐伯くん、最初の出会いはあんなだったのに、一体何でそうなったのか。
なんか好きになった経緯も色々と聞かされたけど、ほぼ右の耳から左の耳に通り過ぎていった。
とりあえずわずかに記憶に残っている部分で、佐伯くんは言ってた気がする。
『どうしたら一緒に登下校したりできるでしょうか!?』
って。
やっぱり男の子にとってもかなりのイベントだよね。
ならわたしがぷんぷんしても当然なのだ。
東雲くんめ。
明日はむこうから話しかけてこない限り、お話してやらないんだから。
まぁ目があったりしたら話してあげてもいいけど。
ちょっとでも姿が見えたら話してもいいかもね。
場合によっては、わたしから話しかけてあげようかな。
……そもそもまずは嘘ついちゃったことを謝らないとだめだよね。




