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マットなぼくとPPな彼女  作者: kats(恋)


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12/19

ちぐはぐこくはく② side MAKOTO

中学3年生の、地味な男の子とキラキラした女の子。

普段の生活からテリトリーの異なる二人が、気がつけばお互い気になるように……。


※ 保険の為R15設定にしてあります。

「わたしね ━━━ 告白されちゃった」


 確かに九重(ここのえ)さんの口からはそう聞こえた。

『告白されちゃった』……と。


 こくはく【告白】《名・ス他》

 ①かくしていた心の中を、打ち明けること。また、その言葉。

 ②自己の信仰を公にすること。また自己の罪を神の前で打ち明け、罪の許しを求めること。


 大丈夫!

 意味はわかってる!

 この場合②は無い!


 いや、ワンチャンあるか!?

 九重さんは女神みたいなもんだし!?

 入学式の時のことを懺悔してたし!?

 そもそもなぜぼくに教えたの!?


 これは……試されているのでは?


 でも何を……?

 彼氏でもない。

 お互いに告白したわけでもない。

 つい数日前からやっと普通に話をするようになったばかり。


 ぼくの恋愛の法則(ラノベ)に基づくと、大体以下の選択肢が思いつく。


 ①純粋に相談、アドバイスを求められている。

 ②自分の気持ちを整理するための聞き役。

 ③特定の相手の反応を見ている。


 ①は無さそうかな……女の子は答えより共感を求めるという伝承(ラノベ)を読んだ記憶がある。

 ②はありそう。

 すっげーありそう。

 何の感情も抱いていない相手(ぼく)って聞き役にすごく使えそう。

 ③であれ!

 ③であってくれ!!


 そんなことをぼくの脳内シナプスが伝達している間も、彼女は真剣な表情でぼくの目をまっすぐ見つめている。

 照れる。

 だが今は照れている場合では無い。


「あの……だ、誰に?」

「あ、いや! 話の流れ的に生徒会長にだよね!」


 自分の質問に自分で答えるぼく。

 だめだ、脳が沸騰して泡立ち、考えがまとまらない。

 実際のところ、脳は41度を超えるとタンパク質が変容し始め、42度を超えると脳に不可逆的な損傷が起こるらしい。

 つまり考えがまとまらないのは、本当に脳が沸騰しているわけではなく、あくまで比喩表現で……。

 いやいや、何を考えているんだぼくは。

 とにかく気になっていることを素直に聞くんだ。


「な……なんて返事をしたの?」


 って、返事が気になるって……これもう告白していると同義では!?


「気になる?」


 彼女がぼくの心を見透かすように、問うてきた!

 しかしぼくももう引くわけにはいかないのだ!


「き、気になる!」

「それに昨日のことも……!!」


 よし!

 よく言ったぞ、ぼく!!


「え!? 昨日のこと……!?」


 ん?

 あれ?

 九重さんの覇気が薄まった……?


「ま、まずその……告白は()()()()()断りました!」

「あ……そ、そうなんだ」


 ちょっと早口気味に、九重さんは結果を教えてくれた。

 そうか。

 断ったんだ。

 ほっとするぼく。


 二人の間に一瞬の沈黙。


 ん?

 ちゃんと?

『ちゃんと』ってどういうことなのかと聞こうとした時、九重さんの口から次の言葉が紡がれた。


「それと、昨日のことって……駅前でのこと……だよね?」

「あ、はい! そうです……!!」


 なんで突然抱きついてきたのか。

 いや、そもそもあれはハグだったのか?

 もう直接聞かないと、ぼくの経験(ラノベ知識)では処理しきれない。


「あれはその……」


 九重さんがアンサーを口にしようとした時、教室のドアが開き、御厨(みくりや)さんが入ってきた。

 そうだった。

 こっちもありました。


「あ、いたいた」


 彼女はぼくたちを見つけると、つかつかと歩いてきてぼくの隣の席に座り、ぼくと九重さんの顔を交互に見て、嬉し恥ずかしいことを言ってきた。


「ふーん……今日も二人っきりでいるんだね」

「もしかして、お弁当もいつも一緒に食べてるの?」


 九重さんの手元のお弁当箱に目をやり聞いてくる。


「こ、これは、お昼休みにお弁当を食べる暇がなかったから……」


 九重さんがここでお弁当を食べていた理由を話すと。


「でも今も東雲(しののめ)くんの席に来て食べてたんだよね?」


 鋭いツッコミ。

 気になることは聞いちゃう。

 御厨さんのはっきりきっぱりしているところが、ちょっとうらやましい。


「そ、それよりも何か用?」


 しかし今はとても大事な話の最中、できれば席をはずしてほしいのだ。

 自然と問う口調も強くなってしまう。

 ぼくは御厨さんに何の用事なのかを促す。


「せっかく東雲くんと再会できたからさ。一緒に帰りたいなって思って誘いにきたんだ」

「「え!?」」


 ぼくが驚いて声を上げたら、同じタイミングで九重さんも声を上げる。


「……この間も二人同時に驚いてたよね。息ぴったり。やっぱり二人は付き合ってるの?」


 鋭いツッコミ。

 気になることは聞いちゃう。

 御厨さんのはっきりさっぱりしているところが、ちょっと鬱陶しい。


 でも今日のぼくは一味違う。


「今ちょっと大切な話をしてたんです! 一緒に帰るのはまたの日にしてください!」


 九重さんは告白を『ちゃんと』断ったって。

 ならぼくだって『ちゃんと』断るのだ。


「あ、え!? ちょっとちょっと……!」

「とにかく今日はだめです!」


 まだ何か言いたそうにしている御厨さんが本当に口を開く前に、半ば強引に教室の入り口まで見送り、ドアを閉める。

 そして席に戻ると、九重さんが言った。


「今日じゃなかったら一緒に帰るんだ?」


 ああん。

 ぼくのばか。




 ━━━ 結局、あの後九重さんから話の続きを聞くことはできなかった。

 不機嫌になった彼女は、自宅から電話で呼ばれたこともあり、すぐに帰ってしまったのだ。

 大事な話の時に限って、タイミング悪くイベントが発生する……そんな変なところだけ、ラノベの主人公と同じ属性持ちな気がしてくる。


『ちゃんと』断れてなかったことを反省し、少し時間をおいてから教室を出ると、もう空は瑠璃色に染まり、空気も氷のように冷たくなっていた。

 冷たい空気が程よく頭を冷やしてくれる。

 クールダウンした頭で今後の対策を考えつつ、すっかり人気の無くなった校舎を出て校門をくぐると、校門の影から御厨さんが現れた。


「東雲くん、遅い!!」


 なぜか開口一番怒られる。

 お叱りの言葉を紡いだ御厨さんの唇が、ちょっと青ざめている気がする。


「もしかして……ずっと外で待ってたの?」

「追い出された後下駄箱で靴を履き替えてたら、九重さんが一人出てきたからさ。東雲くんもすぐ来るかなって思ったのに……」

「なのに全然出てこないんだもん!」

「ご、ごめん」


 ってあれ?

 つい謝っちゃったけど、これってぼくが悪いの?


 でもこんな寒い中、わざわざぼくを待っててくれたんだ……はっ!

 これは鈍いぼくでもさすがにピンと来たぞ!

 今度こそ『ちゃんと』しなければ!


「御厨さん! ぼくが好きなのは九重さんなんだ!」


 言ったーーーー!!

 まさかぼくが女の子を振る立場になることがあるなんて!!

 しかもこんなに可愛い子に!!


「知ってるよ?」

「だからごめ……ん?」

「なんで謝るのさ?」

「えぇーーーーーーーーっ!?」

「だって……ねぇ? あれ? ぼくのことが気になって……んー?」


 やっぱりぼくは鈍かった!

 何もピンと来てませんでした!


「あ。昨日ぼくが言ったことで勘違いさせちゃった?」

「『あれからずっと、東雲くんのことが気になってたんだけど』って」

「『じゃあ、ぼくのことはどう思う?』って」

「あ……はい」


 まさにそこ。

 いやん。

 ぼくってば、センチメンタルサーカスのピエロ状態。


「ふふ。気になって『た』だよ。過去形(か・こ・け・い)

「あ……」

「今気になってる人は別」


 現在形がいることを告げて淡く頬を染める御厨さんの表情に、ぼくの心臓は大きくひとつ、跳ね上がった気がした。


「……でしたか」

「でもあんなにはっきり断られると結構ショックだよね。可愛いって言ってくれたのにー」


 ちょっとだけ残念に感じている自分がいる。

 ぼくだって好きな人は別にいるのに、なんて自分勝手なんだ。

 御厨さんも可愛く唇を尖らせながら非難してくるが、本気でショックとは思っていないんだろう。

 どう見ても目がいたずらっぽく笑っている。

 こんなに素敵な女の子が、過去形とはいえぼくに好意を持ってくれていたなんて、いまだに全く信じられない。


「じゃあこの間は、その、なんでぼくに気があるようなそぶりをしたの?」

「なんでかな……」

「まだちょっと……東雲くんのことが好きだったのかも」

「え」


 尖らせた唇に指をあて、片目をつぶって見せると、また動揺するようなことを言う彼女。


「再会できたことでテンションが上がっちゃって」

「でも再会した好きだった人は他に好きな人ができてて」

「しかも明らかにぼくのこと『お邪魔虫』って雰囲気をガンガンに出しててさ」

「ゔ……」


 めっさ心を読まれてた。


「だからちょっとだけ、意地悪したくなっちゃったのかな」


 ……ちょっとだけ?

 女の子って怖い。


「ごめんね?」

「いやもうぼくの方こそごめんなさいほんともう勘弁してください」

「ふふ。九重さんにも謝らなきゃね」


「あれ? でもそれなら今日は何でこんな時間まで待ってたの?」


 告白されるって勘違いを除くと、一体何の話なのか、ぼくには全く想像がつかなかった。

 だって昨日まで思い出しもせず、名前も知らなかったくらいなのだから。


「うん、その前に……ごめん、寒いからちょっとどこか入ろ。へへ」


 御厨さんはすっかり体が冷え切っていたんだろう。

 両腕を抱え、少し震えながらそう言うので、ぼくたちは場所を変えることにした。




「ふぅーー……」


 温かいミルクティーを飲んで、体の緊張がほぐれたのか、小さく吐息をもらす御厨さん。

 表情も緩み、頬に本来の赤みも戻ってきた。

 こうして改めて見ると、やっぱり御厨さんも美少女だ。

 はじめて会った時と全然印象が違う……女の子って本当にすごい変わるんだな。

 あの後ぼくたちは、帰宅時間で人の少ない、駅前のコンビニのイートインに入った。


「最初は本当に、ただ一緒に帰りながら、少し東雲くんと話をしたいなって思ってたんだけどね」

「う?」


 ちょうどカフェラテを飲み込もうとしていたぼくは、返事をしようとして変な声が出てしまう。

 噎せないように、落ち着いて飲み込んで……と。


「九重さん……今日、生徒会長(佐伯くん)と会ってたでしょ?」

「げほんげほん……!!」


 結局噎せてしまった。

 なぜ聞きたいのかはわからないが、これはとてもプライベートな問題だ。

 絶対話しちゃダメなやつ!


「ちょっと……ぼくにはわからないかな」


 何でそんなことが気になるんだろう?

 御厨さんには関係無いと思うけど。


「でも東雲くん、さっき教室で『大切な話』をしてるって言ってたでしょ。九重さんもお昼休みにお弁当を食べれなかったって言ってたし、生徒会長(佐伯くん)もお昼休みにいなくなってたから……」

「タイミング的にも同じ話っぽいでしょ?」


 色々と鋭い。

 鋭すぎる。


「もしぼくが知っていたとしても、御厨さんには関係無い話じゃないの?」

「関係ある!」

「……あるの」


 何か言いたいけど躊躇っているような間。


「だって……ぼく、佐伯(さえき)くんのことが好きなんだ!」


 御厨さんの口から、とんでもない話が飛び出した。

 今気になっている人って……生徒会長だったのか!

 最初の出会いはあんなだったのに、一体あれから何があったのか。

 そしてぼくってばどれだけ鈍感なのもー。


「……」


 黙ったまま、真っ赤な顔でこちらをじっと見ている御厨さん。


「えっと、生徒会長に直接聞くのはだめなの?」

「……聞いたらぼくの気持ちがばれちゃうでしょ」


 あ。まだ告白はしてないのね。

 これだけはっきりきっぱりさっぱりな御厨さんでも、自分の気持ちを伝えるのは難しいんだな。

 やっぱり、告白するってすごく……怖いよね。

 勇気がいる。

 ちょっと共感する。


「でもやっぱり、ぼくから教えられることはないよ。プライベートな問題だから」

「うー……そうだよね」

「御厨さん、今、顔真っ赤だけど……それだけ顔に出やすいと、もう会長にもばれてるんじゃない?」

「え。そんなに顔に出てる!?」

「自分の表情は自分ではわからないもんね」

「さすがにそこまでわかりやすければ、誰でも気づくと思う」


 これだけ(にぶ)ちんなぼくにもわかるんだもの。

 他人(ひと)態度(こと)ってわかりやすい。

 すると彼女はぼそっと言った。


「……あんたが言うか」

「え」


 ……あ!

 ぼくも九重さんに(他人の態度って)バレバレ(わかりやすい)かもしれないってこと!?

 さすが御厨さん、ぼそっという言葉も、はっきりきっぱりしている。

 だとしたらどうしよう…バレバレなのにぼくがはっきりしないから、九重さん怒ったのかも?


「ん。でもそうだね……よし!」

「佐伯くんに直接聞くことにする!」

「え」


 ぼくが御厨さんのこと(自分も)言えない(同じ)状況だと考え、悩みはじめた瞬間、御厨さんの方はズバッと決断していた。


「だってもう卒業まで時間もないし、今度()後悔したくないから」


 今度()……?


「東雲くんもがんばって!」


 そう言うと、御厨さんはコンビニから勢いよく出ていった。


今度()って……ぼく(過去形)のこと……だよね多分。

がんばってって……九重さんのこと(後悔しないように)……だよねきっと。


うん。

ぼくもがんばらなきゃ。

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