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マットなぼくとPPな彼女  作者: kats(仮)


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ちぐはぐこくはく side IKU

中学3年生の、地味な男の子とキラキラした女の子。

普段の生活からテリトリーの異なる二人が、気がつけばお互い気になるように……。


※ 保険の為R15設定にしてあります。

 ふわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ……!!


 抱きついちゃった!


 東雲(しののめ)くんびっくりしてた。

 そりゃびっくりするよね。

 ダンマリからいきなりハグ。


 ふわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ……!!


 駅で東雲くんと分かれた後、帰宅してからわたしはずっと、ベッドの上で悶えていた。

 がんばるって決めたけど、照れるものは照れる!!

 みんなこういう時どうやって落ち着くの?

 無理くない!?

 無理!!


 でもさすがに何十分もジタバタしてたら、物理的に疲れてきた。

 疲れでジタバタする動きが小さくなると共に、少しずつ頭も冷えてくる。


 とにかくもう押しまくるって決めたのだ。

 じゃないと御厨(みくりや)さんに負けちゃうもん!!

 ライバルという存在ひとつで、自分がこんなに不安になったり、嫉妬したりすることになるなんて……。


 御厨さん可愛かったなー……。


 初めて会った時の姿は確かに地味目だったけど、おとなしくて真面目な感じで、むしろ男の人はああいう存在を守りたいって思ったりするのかも。

 しかも磨けばがっつり美少女!

 話し方まではっきりきっぱりさっぱりな感じになってた!


 あれってやっぱり、東雲くんのために変わったのかな……。

 誰かのために変われるってすごいよね。


 でも絶対東雲くんは渡さない!

 明日からガンガン話しかけてやるんだから!

 覚悟してよね! 

 東雲くん!




 翌日。

 なんでー……。

 なんで今日に限って、みんないつも以上に話しかけてくるのーーーー!?

 朝からクラブやら勉強やら恋愛やらの相談がひっきりなしにきて、トイレに行く暇もありゃしない。

 でもやっぱり周りに合わせちゃうんだよね……わたしってば。


 恋愛相談なんてわたしの方がお願いしたいくらいだよ!!


 ……当然、東雲くんとは全く話ができないでいる。

 こんなはずじゃなかったのにー。




 昼休みになってやっと一息つけるタイミングがきた。

 今度こそ東雲くんに話しかけるぞ!


 ……その前にトイレトイレ。

 生理現象は仕方ないよね。

 もう少しだけ待ってて東雲くんーーーー!


「九重さん。ちょっと時間いいかな?」


 ああん!?

 廊下に出たところで誰かから声をかけられた。

 誰だっけ?

 生徒会長の……名前が出てこな……。


「あ、えっと……佐伯(さえき)くん」


 そうだそうだ佐伯くんだ。


「少しなら大丈夫よ。」


 ってわたしなら言っちゃうよねー。

 トイレ行きたくて仕方ないのにー。


「ちょっとここでは話しづらいので、この先の渡し廊下のところで」


 トイレと反対方向なんですけどーーーー。


「クラス委員の仕事じゃないの?」

「今日はその、ちょっと違う話なんです」


 うぅぅ……仕方ない。

 雰囲気的に真面目な話っぽいし、なるはやで済ませちゃおう。


 うちの学校は校舎、旧校舎、体育館、屋外プールとあって、それぞれが渡し廊下で繋がってるのよね。

 こっちは屋外プールだから、今の寒い時期はほとんど人がいない。

 確かに人に聞かれたくない話にはちょうど良さそう。

 東雲くんに告白される時は……ううん、わたしからの告白になるかも。

 その時はやっぱり人が来なそうな場所がいいわよね。


 渡し廊下に出るドアを開けて外に出ると、冷たい風が肌を突き刺してきた。

 日陰になっているところは昨夜降った雨で、まだ濡れている。

 そういえばドアのそばに、雨を拭いたモップが置きっぱなしになってた。


 ひぇぇぇ……寒すぎる。

 東雲くんと話す時は、暖かい場所にしよう、絶対。


「こっち側は風が強くて寒いねー。中じゃだめなの?」

「すみません。誰にも聞かれたくなかったので……」

「そっか。じゃあぱぱっと済ませちゃお」


 寒すぎてトイレ我慢できなくなっちゃう。


「何の話?」


「なんというか今更なんですが……改めて、入学式の時は注意してくれてありがとうございました」

「えー。そんなの気にしないでいいのに」


 なぜ今そんな話を?

 でもあの時のおかげで東雲くんを知れたんだよね。

 むしろこっちがお礼を言いたい!


「ちょうど昨日ね。とあることがきっかけで、あの時のことを思い出したの。あの時の佐伯くん、不良のテンプレみたいな格好してたよね。懐かしいなー」

「お、お恥ずかしい……」


 前髪がぐるぐるした感じで出っ張ってて、制服がびろーんて長くて、ズボンがずどーんて太くて、以前動画投稿サイトの『My Tube(まいつべ)』で見た、昔の不良感があって、正直ちょっと面白かった。

 ある意味ビジュアル系?

 ああいった不良ってまだいるんだなぁ。

 やっぱりすごい背もたれのついた自転車とか乗ってたのかな。

 ハンドルもどかーんて上に伸びてるやつ。


「本当に感謝してます。小学生の頃から先生も親も誰も俺を見てくれない、何も言ってくれないって……勝手に拗ねてグレてて」


 いけないいけない、佐伯くんは真面目に話をしているのに。

 全然興味のない自分語りがはじまってるけど、ちゃんと聞かなきゃ。


「あの時九重さんに注意してもらったことで、自分自身を見直すことができました」

「生徒会長になることができたのも、そのおかげです」

「生徒会長になれたのは、佐伯くん本人ががんばったからだよ、それに……」


 それに、そもそもわたしじゃなくて、東雲くんのおかげだよ!

 って言おうと思ったら、佐伯くんの話はまだ続きがあって言えなかった。


「いえ、それだけじゃないんです!」

「その時から俺、好きにな……」


 かっこぉぉぉぉぉん……!


「え…え?」

「誰かいるのか!?」


 まさかの告白!?

 と、思った瞬間、ドアの向こうから何かが倒れたような音が聞こえた。

 佐伯くんが慌ててドアを開け、中に入っていく。

 わたしも後について中に入ると、さっき壁に立てかけてあったモップが倒れていた。

 廊下の先に目を向けると、誰かの後ろ姿が角を曲がっていくのが見えたような……。


「隙間風でモップが倒れたみたいだね」


 そう言いながら、佐伯くんは倒れたモップを風が当たりにくいところに立てかけ直してくれた。

 モップがあったところには水が溜まっている。

 ん? 濡れた足跡……さっきの人がここにいたのかしら?

 話を立ち聞きしてた?


 ……あ!

 まさか!?


「えっと、話の腰が折れちゃいましたね。それでその……」


 佐伯くんは濡れた足跡には気づいてないみたいで、さっきの告白に話を戻してきた。


 でもわたしはここにいた人が誰なのか。

 そっちの方が気になっていた。




 トイレを済ませて教室に戻ると、ちょうど昼休み終了のチャイムが鳴る。

 教室に入る時、一瞬東雲くんと目が合った。

 そして目を逸らされる。

 やっぱりさっきあそこにいたのって……!


 うぁーーーーーーもしかして全部聞かれてた!?

 もーやだーーーー何で次から次に邪魔が入るの!?

 とにかくちゃんと、話をする時間を作らないと!!


 放課後こそは!

 絶対捕まえる!!

 逃さんぞ!!!

 東雲!!




 そして放課後。

 東雲くんは大抵下校時間まで本を読んでいるから、まずはお昼休みに食べることができなかったお弁当で、エネルギーを補給することにした。

 放課後になってやっとお弁当を食べているわたしを見て、さすがに他のクラスメートも、今日はもう話しかけてこない。

 気がつくと、教室に残っているのは、わたしと東雲くんの2人だけになっていた。

 さっきまでこちらをちらちらと見ていた東雲くんは、本に集中しはじめたみたい。

 わたしは食べている途中のお弁当を持って、東雲くんの前の席に移動することにした。

 東雲くんの机にお弁当を置いて、椅子の向きを変え座る。


「ん?」


 東雲くんが本から視線を上げて、わたしの方を見る。

 東雲くんと話すようになって、少しずつ彼のことがわかってきた。

 見た目はクールだけど、実は結構慌ててたりあせってたりする。

 今は突然わたしが来て、ちょっと混乱してるんだろうな。


「九重さん?」


 ちょっと意地悪したくなっちゃう。

 わたしは何も言わずにお弁当の残りを食べ続けた。


 クールで落ち着いてる東雲くんが好きだなーって思ってたんだけど、慌てたりしてる東雲くんも可愛くて好き。

 たまにどもっちゃう時なんか、わたしの反応を見ながら一生懸命どうすればいいか考えてるんだろうなって、ちょー可愛くて好き。

 わたしが勝手に悩んだりヤキモチ妬いたりして黙っちゃう時、今みたいに少しオロオロしながらもそばにいてくれるの、大好き。


 なんだ、わたし東雲くんのこと、全部好きなんだな。


 考えてみると佐伯くんはすごい。

 そういった気持ちをわたしに伝えてくれたんだから。

 どれだけの勇気が必要だったんだろう。


「東雲くん、今日ずっとわたしの方見てたでしょ?」


 お弁当を食べ終えたところで、東雲くんに声をかける。


「う……はい」


 一瞬口ごもるところが可愛い。


「お昼休みの時も生徒会長との話、聞いてたよね?」


 本当に東雲くんだったかはわからないけど、カマをかけてみる。


「ご、ごめん。九重さんがお弁当を食べ終わったら、話しかけて謝ろうと思ってたんだ。」


 はい、ビンゴ!


「昼休みも話しかけようとしたら、先に生徒会長さんが九重さんに声を……それでつい」


 つい? 

 つい気になっちゃった?

 気になってついてきちゃったんだ?

 ちょー可愛い。

 可愛すぎて体が震えちゃう。


「本当にごめん」


 素直に謝っちゃうところも、もーーーー超好き!!


「ぜ、全部……聞いてた……の?」


 あぅ……ここまでいい感じで会話をリードできてたのに、可愛いがすぎてちょっとどもった。

 でもここは押しの一手よ。

 東雲くんにどこまで聞かれてたのか。

 告白まで聞かれてたのなら、彼はどう思ったのか。

 気になるんだもの。


「ち、違うよ! 生徒会長が入学式の時の不良って、その、入学式の時のお礼?、みたいなところだけ……やっぱり盗み聞きは良くないって、慌てて教室に戻ったんだ」

「その時廊下の水に足を取られて、モップを倒しちゃって……」

「ほんと? ほんとにそこだけ?」

「ほんとだよ」

「……良かった」


 良かった?


「……良かった、のかな」


 自分の言葉に自分で不思議になる。

 わたしが告白されたら東雲くんはどう思うのか。

 それが知りたいんだから、むしろ良くはなかったのでは。

 なのに聞かれてなくて、ちょっとほっとした自分がいた。


 東雲くんだって気になってついてきちゃったんでしょ?

 今だってわたしと話したくて残ってたんだよね?

 さすがにちょっとは気にしてるってことよね?

 ね?


 とにかく!

 こっちからがんばるって決めたんだから!

 行け、わたし!!


「わたしね ━━━ 告白されちゃった」


 攻めたーーーーーーーー!!

 どうなる、わたし!!

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