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【第11話】ゲリラダンジョン編(2)

【コンセプト厨】


オンライン時代には、いつだってそういう“種族”がいた。

現実とはまるで違う人格や設定を掲げ、

ただ“面白さ”のために動く者たち――。


ゲーム内で奇抜な服を着たり、

トロール行為をしたり、

掲示板で釣りスレを立てたり。


それだけの存在だった。


だが、〈ハンター〉の力が発現した今――

新しい時代の“コンセプト厨”が現れた。


その名も――


「力を隠したハンター」!


何の能力もないフリ、弱いフリをしながら、

絶体絶命の瞬間にド派手に正体を明かしてカタルシスを得る者たち。


その代表格こそ――

A級ハンター、〈カエサル〉ギルド所属の“レオ”。


そして彼の特徴は、ただ一つ。


「無名様のファンにして、自称・弟子。」


あれほどの実力を持ちながら、あえて力を隠す自分を見て、

彼は確信していた。


レオ:(無名様も、きっとこの孤独を感じておられるに違いない……!)


もちろん彼は知らなかった。

すぐ隣に“本物の無名”がいるということを――。


キム・チョル:「では、まずは閉じ込められた人質の救出を最優先とします。

ジウさん、三階Bエリアへの案内をお願いします。」


チョン・ジウ:「はい。」


レオはさりげなくジウを見やった。

(この女……ただの一般人じゃなかったのか?)

(ダンジョンの中なのに、なんでそんな平然としてんだ?)


ジウ:「ここが三階への扉です。」

キム・チョル:「開けます。」


彼がドアノブを掴んだ瞬間――

カサカサ……と、向こう側から何かが這う音がした。


ガチャ――!


扉が開いた瞬間、

不気味な虫型モンスターがうねうねと蠢いていた。


レオ:「ヒッ……ヒィィィィィィッ!!!

む、虫ぃぃぃ!!」


悲鳴を上げてドアをバンッと閉めるレオ。


ジウ:「……あいつ何?」

「ちょっと頭おかしいんじゃない?」


キム・チョル:「ジウさん、まずは……私の顔から降りていただけますか? 前が見えません。」


ジウ:「あ、ごめん。」


ようやく肩の上から降りたジウ。

レオは脂汗を流しながら叫んだ。


レオ:「み、みんな見ただろ!? あっちはダメだ! 絶対行っちゃダメ!!」


キム・チョル:「何を言ってるんですか! 市民救出が最優先です!」


レオ:「で、でも……!」


ドォン――!


言葉が終わるより早く、

建物が大きく揺れた。壁が裂け、階段が崩れる。


(また……今度は何よ。)


【特性:衝撃保護が発動しました】


視界が一瞬、真っ白に弾けた。

そして――

救助隊はそれぞれ別の階層へと吹き飛ばされた。


ジウが落ちた先には、

周囲を半壊させたまま立ち尽くすレオの姿があった。


どうやら落下中に虫を見て取り乱し、

無差別にスキルをぶっ放したらしい。


チョン・ジウはスキルを解除しながら近づいた。


レオ:「またモンスターか……」


振り向いたレオは、ジウを見た瞬間に凍りついた。


「こ、これは……! まさか、あなたが“力を隠したハンター”だったなんて!!」


レオ:「ち、違う! 誤解だ! これは俺じゃなくて――」


(ふふっ、もう少し遊んでやるか。)


ジウ:「あっ、後ろに虫。」


「な、何ィ!? どこだ!!」


スキル【抜刀】発動。

雷光のごとく刀が閃き、虫は跡形もなく蒸発した。


レオ:「……虫……いたんだ……」


ジウは微妙に笑いながら、額に汗を滲ませた。


レオ:「まさか……君も……?」


沈黙を肯定と受け取ったレオは、急に興奮し始めた。


レオ:「こんな偶然があるか!?

あ、もちろん俺がA級ってのはナイショな、分かるだろ?」

「俺たち、分かり合える気がするんだよね~!」


(……何を分かり合ってるつもりなのよ。)

(私はむしろ、力を使いたくない側なんだけど……)


レオ:「でもさ、ジウちゃんって魔力ほとんど感じないな?

特性、何だそれ?」


雑談のように装いながらも、レオはジウを鋭く観察していた。

彼は単なるA級ではない。


光があれば、闇もある。

“無名”が光なら、

“レオ”は闇。


アンダーグラウンドで〈裏社会の頂点〉と呼ばれた男。

何らかの理由で〈カエサル〉と契約している――と、ジウは知っていた。


(まさかここでもコンセプト演技してるとはね……)


レオ:「でもよ、あのレベルの実力者が、どうして隠してんだ?

大体の強者は把握してるが……今、正体を明かしてないハンターって誰だっけ?」


ジウ:「け、剣士!」

思わず口を挟むジウ。


レオ:「剣士ね……でも魔力ゼロっておかしくね?」


その瞬間、タイミングよく蜘蛛型モンスターが現れた。


ジウは即座にスキルを発動。

シュッ――

モンスターの頭部が一閃で吹き飛んだ。


ジウ:「ほら、斬ったでしょ。

斬ったなら、剣士でしょ。」


レオ:「じゃ、ハンターネームは?」


ジウ:「バ、バットウゼイ……」


レオ:「バットウゼイ!?

渋谷ダンジョンで大活躍した、あのバットウゼイ!?

あの時助けてくれたの、君だったのか!

でも、あの実力でどうして活動してないんだ?」


ジウは答えなかった。

ただ、ほんの少し顔を逸らして――


(また始まった……めんどくさい誤解フラグが。)




【塔攻略状況】


国家:アメリカ合衆国(27階)

国家:日本(17階)

国家:韓国(12階)

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