107話 待機
新年明けましておめでとうございます。
今年も変わらず投稿していくつもりですので、どうかお付き合いのほど何卒宜しくお願いします。
投稿時間が半日ほど遅れてしまって申し訳ありません。
「いよいよである!!我らボア族はこれまで座して静観してきたが、これより馬出しと協力して敵を逆襲、勢い戦運を我らの物とする!!」
ラインハルトは大手門付近に集まった遊撃隊に向かい作戦の概要を説明した。
今や遠征軍の馬出しへの攻撃は完全に停止している。
遠征軍の魔道士にかなりの被害が出たのだろう。エカテリーナの魔導攻撃の後からは、遠征軍からの魔法攻撃はない。
魔法で援護して寄せ手の前進を再開させる考えだった遠征軍としては、作戦が完全に失敗したことになる。寄せ手は前進を止めて矢を放ち始め、今や馬出しと寄せ手の間で弓合戦の真っ最中だ。
ラインハルトはこの機に乗じボア族を中核とする遊撃隊を大手門から出撃させ、一挙に敵を逆襲して初戦を制す腹だ。義清もこれに同意し、寄せ手の攻城陣地構築が始まる気配がない今こそ好機とみて出撃を許可している。
いよいよ遊撃隊出撃という段になって、大手門横の櫓からボア族が叫んだ。
「馬出しの門、開きます!!兵を繰り出す模様!!」
「なんだと!!合図はまだだぞっ!!」
ラインハルトは思わず驚きの声を上げた。
遊撃隊と合わせて出撃するはずの、ゼノビアの部隊が勝手に出撃してしまったのだ。ラインハルトが驚くのも無理はない。
馬出しの門は半円状の直線部分の端に2箇所ある。ここに門を設ければ敵は馬出し城門への攻撃の為に城と馬出しの間に入り込まざるを得ず、城と馬出しで挟み撃ちに出来るのだ。
その門の片方が開かれると兵が続々と出撃してくる。組頭であろう人物がアセナに騎乗して先頭を行く。兵は直ちに隊列を整え組頭の号令のもと矢を放ち始めた。
その兵の隊列の影に隠れるようにしてアセナに騎乗したヴァラヴォルフ族の戦士が5騎疾走する。
その背には赤く小さな細長い旗がいくつかと、白地に赤い百足の絵が描かれた大きな旗を背負っている。
ヴァラヴォルフの伝令が背負う特異な旗だ。伝令はその役目上最短で目的地に着く必要がありこの様な目立つ旗をしているのだ。どんな高位な者でも、例え部隊であったったとしても、この旗印を認めたときは道を開けなければならない。
馬出し門から出撃した部隊は伝令がある程度馬出しから距離を取って城へと向かうと、組頭の号令のもと馬出しへと退却した。
伝令が城に到達すると遠征軍の攻撃を警戒しつつ素早く門が開閉された。
伝令が場内に入るやいなやラインハルトは伝令に詰め寄った。
「どういうことだっ!!今まさに手はず通りこちらが出撃しようというこの時になって」
「まあ待て待て、ゼノビアも何か考えあってのことだろう」
義清が間に入り伝令が説明を始めた。
「ゼノビア様曰く、今遊撃隊を出撃させ逆襲したとて敵に痛手を負わせるのは至難ということで出撃を先延ばししてはいかがかと」
「何を言うか!!敵が動揺している今が好機ではないかっ。この機を逃してどうするというのだ」
ラインハルトは伝令に食って掛かる。
「ゼノビア様は敵に痛烈な一撃を加えることを考えておいでです。ついては敵が攻撃を再開し城壁に仕寄るまで逆襲を控えて頂きたく存じます」
「なるほど、馬出しからの攻撃を控え敵をわざと接近させ、そこを城から敵の側面を逆襲し一気に敵を押し込むと」
義清がゼノビアの考えをまとめた。しかしと義清の言葉は続く。
「なかなかに賭けではある。馬出しからの攻撃を控え過ぎれば多くの敵を引き寄せすぎる。逆襲のタイミングが早ければただの野戦に突入するし、遅ければ馬出しに敵が乗り込みかねん」
「そうですぞ!!ここは安全策で今すぐ出撃すべきですぞ」
ラインハルトがそれ見たことかと言わんばかりに言う。
「ゼノビア様曰く、ラインハルト殿は勢いに任せて出撃をしようとするが、ここは自重するが賢明とのことです」
「な、なんだとゼノビアのヤツめ、まるでこの場にいるかのごとく言いやがって」
「ハッハッハ、一本取られたなラインハルト。しかし危険なことには変わりないぞ」
「大殿、先程の馬出しでの防戦は殊の外うまくいきました。急ごしらえではあるものの我らヴァラヴォルフ族とスケルトンの連携も成功と言っていいでしょう」
「そうか、にわか作りではあったが種族間の連携が取れるのは戦力増強につながる。良いことだ。それは良かった」
義清はにわか仕込みの種族間の連携がうまくいったことを喜んだ。
「そこでですが、ゼノビア様はこの分であれば筒衆の働きも期待できるので、是非とも敵を懐に引き込みたいと」
「ゼノビアめワシが種族間の連携を喜ぶと知って筒衆の件を持ち出したか。うまい言い訳を考えたな」
「大殿、それでは‥‥」
「我らの負けだラインハルト。此度はゼノビアの説得の仕方が一枚上手だったな」
「ちくしょうめ!!」
ラインハルトは地団駄踏んで悔しがる。
「何も逆襲せんとは言っとらん。機を待つだけだ。待機が少し長引くだけだ」
義清はラインハルトをなだめ、遊撃隊に待機するよう命じた。
やがて伝令が大手門から放たれ馬出しに達すると、程なくして馬出しの防戦が控え目になっていった。
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次回投稿予定 2021/1/10




