99話 顔2
今回のお話は前回の続き感が特に強いので、98話をななめ読みでも良いのでもう一度読んでいただければ幸いです。
評価ポイントくださった方ありがとうございます!!
モチベーションかなり上がりました。
やる気にもつながっております。これからもよろしくおねがいします!!
男が部屋に入ると義清が待っていた。
義清に飲み物を勧められると丁寧に礼を言って飲んだ。一息入れると男は用向きを話し始めた。
「こちらに来るか随分と迷ったんですがね、どうにも見ちゃいられねえもんで」
「何かあったか?」
「五日程前に外堀の拡張をご指示なさいましたね」
「南堀のことか。確かに指示したが」
「あんときに新しい人間が入って来たのはご存知で?」
「たしか新しい村から人手が入ったが、働きぶりでも悪かったかね?」
「いえそういう訳じゃんねえんですが、入ってきた中に妙な連中が混じってたもんでね」
「動きが怪しいと?」
「そういう訳でもないんでさ」
盗賊ギルドの男がその連中に築いたのは堀の拡張工事が始まってすぐのことだ。
村人の中に混じって屈強な男が六人いる。筋肉隆々で体中に傷があり、二人は顔にも傷があった。
男は一緒に来た村人に連中の事をそれとなく聞いて調べた。
すると村人は連中の事を全く知らないと言う。村人曰くこの地に着くといつの間にか集団にいたので、てっきりすでに大禍国に来ていた者が作業に混じったのだとばかり思っていたそうだ。
屈強な男達は黙々と作業し特に怪しい動きもなかった。しかし村人に似つかわしくない傷と体つきをしている。
(ありゃあ兵隊上がりか何かだな。野良仕事で付く傷じゃねえ)
男はそう思い、それとなく屈強な男達を見張ることにした。
男達はいつも一緒にいる。ほとんど会話らしい会話もしない。そうかといってこちらが世間話や飲み物を差し出すと会話にはなった。しかし自分達から他の人に話しかけることはない。
作業を一緒にする内にわかって来たことがある。顔に傷がある二人の男がボス格のようだ。一人は額に、もう一人は頬に傷がある。作業が始まると額傷の男が他の男達に指示を出し、額傷がいない時は頬傷の男が指示を出していた。作業が終わって休みになっても額傷の男が連中を仕切っているようだった。
そして時折額傷の男は築城指南役のボア族やヴァラヴォルフ族と話している。他愛ない世間話だったが額傷の男が話している時に、他の男達が全員その様子をじっと見ていた。
「敵方の間者か?」
義清の質問に盗賊ギルドの男は首を振った。
「あっしも最初はそう思ったんですがね。連中の仕草をどこかで見た気がして、それがずっと気になってたんでさ」
「仕草を?」
「少しして思い出しました。ありゃ盗賊ギルドに入ったばかりの新米が、早く一人前になりたくてやるやつでさ。つまり兄貴分の奴に気に入られたくて、その糸口探しに会話したりしてるんでさ。周りの奴も一緒なんで自分も仲間に入りたいからじっと様子を見てるんでさ」
「こっちに気に入られたいのか。しかし仕事ならやったろうに。給金もはずんだつもりだがな」
「旦那、あっしは上の方で話が付いてるんで、一声かければ旦那につないでもらえますが普通はそうはいきません」
「ワシに?連中はワシに会いたいのか?」
「旦那、屈強な体つきで体中に戦傷がある男達がすることなんてたかが知れてまさあ」
「暗殺か」
「あっしも最初はそう思ったんですがね。連中は旦那が朝に築城視察してるのを知ってるんでさ。それなのにそっちに顔を出すことはないんですぜ」
「不可解極まる」
「連中は旦那につなぎを付けてほしいんでさ。それも正規の手段で」
「何のために?」
「旦那お心当たりありませんか?戦場慣れはしているが交渉には不慣れな男達を使いに出すって事は、よっぽど周りに知られたくなくて、使いを出した主も大半の部下には秘密にしてるってことでさ」
男はコップを置くと更に言葉を続けた。
「そんな男達を使いに出すって事はいざとなったら旦那と話が出来ると算段があるからだと思うんですよ。どうです?旦那と話がしたいが周りにそれを伏せてる人に心当たりはありやせんか?」
「ああ、なるほど。誰かわかった、心当たりがある」
「そりゃあよかった」
そう言うと男はコップの中身を飲み干すと、それじゃあ、これでと立ち上がった。
男にとっての仕事はここまでなのだ。義清の心当たりが誰なのかや男達をどうするのかなどは男に取ってはどうでもいいことだ。男は盗賊ギルドで気づいた事があったから義清に知らせただけ。下手にその先を知ってしまうのはよくない。それで何かの企みに巻き込まれでもしたら命がいくつあっても足りない。
義清も男の立場を知っているので余計な事は言わない。義清は男の報せに対する報酬を渡し、男は部屋を後にした。
男が部屋を出ようとした時に義清はふと尋ねた。
「そう言えば、なぜそいつらの手助けするような事をしたのだ?怪しいと思った段でワシでも周りの我が配下の者にでも言えばよさそうなものを」
男は振り向くと照れくさそに言った。
「連中を見ていて昔の自分を思い出したんでさ。あの頃は早く一人前のギルドメンバーになりたくて必死に近道探して兄貴分に媚びを売る様な真似してましたが、そんな近道なんてないってある時気づきましてね。今から思えば兄貴分もわかっててあっしの相手をしてたと思うんですが、何にしても恥ずかしいかぎりでさあ。そう思うと連中が急に愛おしく思えてきちゃいましてね。思わず分を超えた事をやっちまいました」
そう言って笑う男の顔は先程ヴァラヴォルフ族に見せた笑顔とは異なり、人らしい照れ笑いをしていた。
奇跡的にこの小説にたどり着いた方、アドバイス感想などお待ちしております。
ブックマーク・評価などしていただけると嬉しいです。
次回更新予定日 2020/11/22




