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クラウン・フォビア~幽霊少女の死んでからはじめるVRMMO~  作者: 稲葉めと
一章 幽霊少女の死んでからはじめるVRMMO
20/37

020 【ワールドクエスト:原初の竜インシュピータ】 中編

長くなりすぎたので分割しました。ぜ、前後編とは言ってないので(震え声

 ボス戦本番、と行く前に、現在のわたしとペットであるクルーアのステータスを確認してみよう。


名前:ラクリマ

種族:ハーフリング

クラス:無職


HP:42/42

MP:47/47

ST:52/52


【装備】

頭:なし/マジカルクラウンハット(アバター)

胴:なし/マジカルクラウンローブ(アバター)

腰:なし/マジカルクラウンショーツ(アバター)

脚:なし/マジカルクラウンブーツ(アバター)

右手:満月輪

左手:なし

装飾:なし


【パッシブスキル】

筋力  30

持久力 40

精神力 20←NEW

落下耐性50

死体回収40

シャウト12

水泳   8

回避  25

投擲  20

挑発   3

調教  20←NEW

登攀  30

邪法  30

演技   5 

曲芸  25

精密射撃 1

自然回復15←NEW


【アクティブスキル】

《サクリファイスハート》

こいつ直接脳内に(テレパシー)

《ストライクシュート》

《ジャグリング》

《モツ抜き》←NEW

《フォーリンインヴァリィド》←NEW


【モーション】

《土下座》


称号:

《漂流者》《リアルゴースト》←NEW


 NEWと表示されているのは前回ステータスを開いた時にはまだ覚えていなかったスキルだ。

 基本的に落下して邪法を使ってを繰り返していたのでそれ回りのスキルが上がっている。

 精神力は魔法系を多用すると上昇するパッシブスキルで、MPに関係してくる。

 調教はペット関連。クルーアへの無茶振りや復讐者さんが呼び出したゴーストをテイムしていたら結構上がっていた。

 自然回復はHP、MP、STが減少している状態でじっとしていれば勝手に回復してくれるというもので、それぞれの上限値にも影響を与える。ちなみにわたしはほとんどじっとしていなかったのが原因でロリコンに教わるまで取得していなかった。

 前作と違ってVRでじっとしてるのってしんどいんだよね。ゲームを放置して漫画を読むとかできないし。


 アクティブスキルは実際に使うときに説明するとして、問題は称号である。

 おいこら、なんで掲示板での強制固定ハンドルネーム(コテハン)が称号になっているんだ。これじゃ身バレし放題だろう。

 そう思って他のコテハン持ちに聞いてみたところ、称号は設定しなければ他のプレイヤーからは見えないらしい。これは鑑定などのステータス看破スキルであっても同様。ただしNPCは設定していない称号も参照して特殊行動することがあるらしい。


 次にクルーアを見てみよう。


名前:クルーア Lv2

種族:ホムンクルス

クラス:ペット


HP:30/30

MP:30/30


スキル:

《アタック》

《ガード》

《アンサイクロペディア》


称号:

《人造生命体》《サポーター》《ラクリマの眷属》


 うん、ほとんど上がってないんだ、すまない。

 それというのもペットのレベル上げはペットがどれだけエネミーにダメージを与えたかに依存する。

 クルーアにはほとんど攻撃させてこなかったし、わたしのスキル上げ中は横で見ているだけだったからね。

 検証時に単身特攻させた時の経験値でかろうじて2レベに上がっていた。


 さて、わたしたちの現状を把握してもらったところで、次はお相手の原初の竜インシュピータを見てみよう。と言ってもステータスはわからないので相対してみての感想だ。


 レイドボスと一口に言っても色々いるけれど、基本的なスペックは大差が無い。

 すなわちHPが高く、大きくて、雑魚エネミーを召喚する。そして防御力が低い。


 HPが高いのは、高火力のプレイヤー大勢と殴りあうため。

 大きいのは、プレイヤーに群がられても隠れてしまわないように。他のプレイヤーでボスが見えないとか嫌だしね。

 雑魚を用意するのは、雑魚向けの範囲スキルを持っているプレイヤーがストレスを溜めないように。

 防御力が低いとHPが高い理由と矛盾するように思えるけど、防御が高すぎてダメージの与えられないボスというのはとにかくストレスが溜まる存在だ。


 ゲームにおいて適度なストレスはゲームを楽しむスパイスだけど、ストレスが溜まるだけのボスというのはプレイヤーをゲームから離れさせる要因になる。この辺のバランス調整は難しい。


 よってこれらを基本として、ボスが小さかったり、雑魚は出さない代わりに複数の部位にHPが設定されていたり、呼び出す雑魚たちが攻略ギミックだったりと、様々なバリエーションが用意され、差別化される。


 では今回のレイドボス、原初の竜インシュピータはどれに当てはまるのか?

 基本だ。基本中の基本。


 高いHP、大きな身体、低めの防御力。威力弱めの範囲スキルに、威力の高い単体攻撃スキル。

 雑魚は呼び出さないが、頭、羽、尻尾、胴体の四部位にHPが設定されていた。


 今のところ他の特徴はない。

 恐らくは例の演出が最大のギミックだったんだろう。一見えげつない、誰にも分からないようなギミックだったけど、解けてしまえばいくらでも対処できる。チュートリアルで強制的に落下耐性を経験させられたのも、今にして思えば伏線だったに違いない。


 攻撃系スキルでインシュピータへ順調にダメージを与える戦闘系プレイヤーたちを眺めつつ、わたしはちまちまと投擲で貢献していた。

 大見得切ったは良いけれど、わたしは攻撃系スキルをほっとんど上げてないからねぇ。

 もっとも曲芸スキルは回避や命中全般に補正をくれるらしい。避け続け、堅実に命中させ続けているおかげで一回のダメージは低くとも、累計ダメージはそこそこなんじゃなかろうか?


 幸いと言っていいものかわからないけど、現在生き残っているプレイヤーたちは演出検証のために何度もインシュピータへと突撃したプレイヤーたちだ。特大ブレスで倒れた人もいたけれど、インシュピータの動作に慣れているためあれから倒れた人は居ない。


「聞きそびれてたけど、メシマジーナはあれからどれくらい鈍器スキル上がったの?」


 メシマジーナと†ブレイバー†とはレイドボス討伐募集中に再会し、せっかくだからとPTを組んだ。なので二人の現在のステータスはよく知らない。


「上げてないですよ?」

「あ、武器変えたんだ」


 言われてみればメシマジーナが装備している武器が少し変わっている。

 メイスのような形状なのは変わらないんだけど、先端の部分はギザギザした突起が増え、中心部は空洞になっている。

 もしかして普通のメイスじゃなくてソードメイス扱いなのかもしれない。


「攻撃系のスキルでしたら、あれから何も上げてないですけど」

「はい!?」

「料理ばっかりやっていたので」


 いや、ちょっと待ってほしい。

 たしかにPEVRは好きなスキルを上げればいいし、全員が全員戦う必要は無い。前作だって、生産に特化したプレイヤーや、アイテムを売り買いする露天が好きなプレイヤーだっていた。

 わたしだってネタスキルに走っていたし、さっきも自分の好きなスキルで戦えばいいと言った。


 だけれどもだ、さすがにレイドボスで戦闘スキルなしはまずい。

 だってこれは戦闘系のイベントなのだ。攻略法の確立したボスならともかく、今回のように検証兼討伐目的だと、他のプレイヤーからの印象が悪くなってしまう。

 メシマジーナはゲーム初心者だと言っていたし、仕方ないのかもしれないけど。


「あ、違うんですよ! わたしもさすがに生産キャラでレイドボスは怒られるかなぁって思ったから、ひとりでこっそり試したスキルがあるの」

「このタイミングで言うってことは落下防止系じゃないんだよね、どんなの?」

「それはね、こんなの! スケイル・リムーバー!」

「グルルオオオオオッ!?」


 わたしたちの近くへ振り下ろされた尻尾を避けながら、メシマジーナがアクティブスキルを発動させてメイスを振るう。

 そのメイスが直撃した尻尾からはキラキラと輝く、透明な板状のものが無数に飛び散るエフェクトが発生。直撃した部位には赤い六角形が表示され、その中心には《weakness》の文字。


 インシュピータの叫び声が悲鳴に聞こえるのは、決して気のせいではないだろう。


「へへーん。これ料理スキルからの派生アクティブスキルなんですよ。魚の鱗とってたら覚えました!」 

「なるほど、SCALE REMOVER、鱗取り器ね」


 要するに、弱点作成スキルだ。

 前作では実装されていなかったけど、たしかアクションゲームでは時々実装されていた覚えがある。

 エネミーの身体に弱点部位を追加で設定し、そこへ攻撃を当てるとダメージが上昇するというものだ。

 メシマジーナのスキルは名前からして鱗のないエネミーには効果がなさそうだけど、いまこの時においては最高のスキルだった。


 それを察したプレイヤーは決して少なくない。

 前作組はもとより、新規の中にも他のゲームの熟練者が多く居る。もしかしたら、すでにわたしよりこのゲームに順応している新規だって居るかもしれない。


「メシマジーナさん、それって複数部位に同時使用ってできるか!?」

「え? あ、はい! 前に試した時はできました!」


 弱点作成って一箇所にしか使えないのが多いからね。

 スケイル・リムーバーは使える対象が限られる代わりにたくさん使えるのかも。


「よっしゃあ! 防御スキル持ちはできるだけ彼女を護衛してくれ!」

「そりゃいいけど、言いだしっぺのお前もしろよー」

「おれ攻撃系スキルしか上げてない!!」

「使えねええええええっ!」

「わはははは、ごめん、今度覚えとくわ」

「あなた達、ボイチャで喧嘩するキッズじゃないんだから、そこらへんにしときなさいよ」

「「はい、ごめんなさい」」


 なんて一幕もあったりしつつ、順調にインシュピータを削って行った。

 ただ当初の予定より戦闘が長引いている。やっぱり50人で挑むレイドボスに現状の18人では人手不足が過ぎる。

 事前に用意していた回復アイテムが尽きてきたのか、前衛でがんばっているプレイヤーたちもスキルより通常攻撃の回数が増えている。


「あっぶな」

「ぐええええええっ!?」

「おーっとロリコン吹っ飛ばされたあああ!」

「実況してないで助けてやれよ」

「これシャウト派生の範囲回復スキルなんですよおおおおおおおおおお!!」

「うわマジだ、俺も回復してる。相変わらずなに考えてスキル実装してるんだよこの運営」

『『今更何言ってんの』』


 ロリコンが尾による範囲攻撃でふっとばされたかと思うと、叫んだプレイヤーを基点に全員のHPが回復していく。どうやら使用者に近いほどHPが回復するスキルみたいだ。

 回復量は少なめだけど、PT単位ではない全体回復は貴重なのでありがたい。


「なのでえええあまり気にせず戦ってくださいねえええ!!」

『『めっちゃ気になる!』』


 シリアスな空気が台無しになるのだけが問題だった。


 なにはともあれ、プレイヤーたちに攻撃の動作を見切られ、弱点が増やされ、全体回復持ちまでいる以上、いくらレイドボスといえど長くは持たないだろう。

 戦闘スキル持ちだけだったらもっと苦戦しただろうから、ネタスキルや生産スキルが役立つあたりこのゲームらしいところだと思う。


 戦闘は順調に進み、羽のHPを削りきることには成功した。

 立派だった翼は、いまはもう見る影もなくぼろぼろの穴だらけだ。


 それでも相手はレイドボス。一方的にやられているわけじゃない。


「あ、やべ、お前ら逃げろ!」

「ぎゃあああこっちきぐふぉえぁっ!?」


 演出時を除いて二足だったインシュピータが四足へと移行し、全体回復をしていたプレイヤーへ突撃を敢行。

 間にいた防御スキル持ちも纏めて紙切れのように吹き飛ばす。


 さらにその場で立ち上がると、右足を持ち上げて全体回復……ええと名前は、ウタッコさんを踏みつけようとする。


「ひゅどらたん!」

「おわっ、ぬめっとするうっ!?」


 そこを復讐者さんのペット、ローパーのひゅどらたんが触手を伸ばし、ウタッコさんを救い出す。

 彼がいた場所はインシュピータの体重を乗せた踏みつけによって小さなクレーターが出来ていた。アレを食らったら一撃でHPが全損しそうだ。


 ひゅどらたんに乗せられて復讐者さんとウタッコさんはインシュピータから距離をとることに成功。

 踏みつけの後は一定時間硬直するようで、その隙に他のプレイヤーが一斉攻撃を始める。

 それを受けながら、硬直が解除されたインシュピータが定めた次の攻撃対象は……周囲のプレイヤーではなくこちらだった。


 口が大きく開き、口蓋が輝くはじめる。


「ちょ、回避!」

「お供しますマスター」

「待って、わたし回避系スキルも上がってないの!」

「無駄に力強いな、俺に任せろ! プロテクション・ウォール!」


 慌てて回避しようとするわたしとクルーア、置き去りにされそうなメシマジーナの前に躍り出た†ブレイバー†が防御スキルを発動する。高さ2mほどの青白い透明な盾が横に3枚ほど展開され、インシュピータとわたしたちの間に壁となって立ちふさがる。


 次の瞬間吹き荒れた火炎はその盾に阻まれたものの、間にあった地面は黒こげだ。


「これ、もしかしなくてもヘイト管理ミスったよね」

「間違いないな。盾役が役に立ってねえ」


 ヘイト。面倒な説明を放り出して簡潔に言えば、敵が攻撃する順番だ。

 基本的に厄介なプレイヤーから狙われる。今回は回復スキルを多用したウタッコさんと、弱点作成スキルを使用しているメシマジーナへのヘイトが高くなっているんだと思う。

 そうじゃなきゃ自分を攻撃しているプレイヤーを無視して遠くのプレイヤーを攻撃したりなんてしない。


 今までこちらが優位に立っていたのは攻撃を食らったプレイヤーは下がって回復、直れば前衛に復帰し、メシマジーナは弱点を作ることに集中できていたからだ。

 逆に言えば、ひとりのプレイヤーが集中的に狙われたら守りきれない。プレイヤー個人とレイドボスには、それだけのステータス差があるはずだから。


「ただ、あの速度ならわたしみたいな回避や曲芸持ちなら避けられるかな」

「攻撃も、これくらいなら防御スキル持ちがちゃんと護衛してれば攻撃特化や生産キャラも守りきれるだろ、楽勝楽勝」


 なんて言っていたのが悪かったのだろうか?


 インシュピータが脱皮した。

 背中がぱっくりと割れて、綺麗な白い鱗に包まれた、新しい身体が現れる。

 そして飛んだ。

 そりゃ飛ぶよね、羽あるもん。


 って羽復活してるし!?

 あ、いやよく見たら直っているのは見た目だけで、HPは減ったままか。

 だったらいいんだ。飛ぶのは面倒だけど、そこはいいんだ。

 

 たださ、あいつ弱点表示、消えてないかな?

 ついでに速度、もしかして上がってたりする?


 呆然と見ていたわたしたちの上空から、急降下してきたインシュピータは両足で二人のプレイヤーをぐわっしと掴みあげると。


「うわっ!?」

「きゃあっ!?」


 遥か上空から地面へ向けて落とした。落ちてくるけど、あの人たちは落下耐性を上げていた組だから大丈夫だろう。そう思っていたら、インシュピータはその長い尻尾を叩き付けた。空中で縦に一回転して勢いをつけながら。あれはきっと通常攻撃じゃなくてスキルだろう。

 そうじゃないと、即死した二人が哀れすぎるし、わたしたちの勝ち目もなくなってしまう。

 倒された二人の内一人ウタッコさん。もう一人も回復スキルを多用していた人だった。


 さっきまでのを第一形態とするなら、第二形態からはヘイト管理が変更されるんだろう。つまり、回復や妨害をしてくるプレイヤーから倒すように。第一形態の最後でそれをしてきたのは、第二形態へ移行する前兆といったところか。


「一応聞くけど蘇生持ちって」

「こんな序盤でいるわけないだろ」

「知ってた」


<レイドバトル参加プレイヤー 16/50>

職場の色々で出勤日数がしばらく増えました。

なので二週間ほど物理的に執筆時間が削られるので更新頻度が下がると思います(すでに下がっている)。

申し訳ないのですがご容赦いただければと思います。

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