依頼4-1
その時オレは、多分、仏頂面をしていたと思う。
『なんでも屋』の記念すべき第一号の客を迎えていたというのにだ。
新品の万能座卓を前にしている客は、この街のちょっとした有名人だった。それでも歓迎できないのは評判がよくない人物だったからだ。
その人物の名は山野田タキという。小柄で老人のように見えるが、ばあさんの話では見た目よりずっと若いという。
なぜ悪評がたっているかといえば、タキの家に問題があったからだ。タキの家は塀の内側から外側までびっしりとゴミが積みあがったゴミ屋敷だったのだ。近隣の住民はかなり迷惑しているという。
そのゴミ屋敷の主人がオレに依頼しにきたのだから仕事内容は想像に難くない。
それでオレは渋い表情になっていたのだ。
タキは背中を丸めてすわっていた。小さいカラダが余計に小さく見える。
気分は乗らなかったが、オレはタキに依頼内容を尋ねた。
「猫が、猫が持ってちまったのサ」
タキは定まらない視線で、ぼそぼそと囁くような声で言った。どうやらオレが想像していた内容とは違うようだ。
「タキさん、なにを持ってかれたンですか?」
「だから言ってるだろ。昼寝してる間に持ってかれちまったのサ、猫に……」
「タキさん、話がわかりません。猫に持ってかれたものをオレが探せばいいンですか?」
オレはついつい口調が強くなってしまった。
「ぴーちゃんを早く探しておくれよ。ぴーちゃん寂しがってるから…」
タキはぼろぼろの布袋からがま口を取り出し、これで足りるかい? と四つに折りたたんだ一万円札を万能座卓の上に置いた。オレは慌ててタキに尋ねる。
「タキさん、ちょっと待ってよ。なにしていいのかわからないのに金だけ受け取れないよォ。『ピーちゃん』ってなに? オレはそれを探せばいいのか?」
オレの問いに対してタキは、ぴーちゃんを早く探せと何度も繰り返した。
オレは前途多難な船出だと頭を抱えた。