老剣士の修行場
洞穴の奥。
倒れた洞穴ハンター。
湿った岩。
静かな空気。
リオはまだ状況が理解できていなかった。
「……先生」
ヴァルは洞穴の壁を見ている。
リオが言う。
「修行って」
「ここでやるんですか?」
ヴァルは振り向かない。
「そうだ」
リオは周囲を見る。
暗い。
狭い。
湿っている。
「もっとこう……」
「外とかじゃないんですか?」
ヴァルは小さく笑う。
「外では無理だ」
リオ
「え?」
ヴァルはゆっくり洞穴の壁に触れる。
「まず一つ」
指を立てる。
「町で剣を振れば」
「すぐ噂になる」
リオは頷く。
「それは……そうですね」
ヴァルは続ける。
「わたしは目立つのが嫌いだ」
リオは苦笑する。
「でも先生」
「もう目立ってます」
ヴァルは無視する。
「二つ目」
洞穴の奥を指す。
「ここには逃げ場がない」
リオは周囲を見る。
確かに狭い。
一本道。
ヴァルは言う。
「剣とは」
「逃げられない場所で使うものだ」
リオは黙る。
ヴァルは続ける。
「広い場所では」
「人は逃げる」
「距離を取る」
「だが戦場はそうではない」
洞穴を軽く叩く。
コンッ
「狭い」
「暗い」
「逃げられない」
リオは小さく呟く。
「……なるほど」
ヴァルは三本目の指を立てる。
「三つ目」
少しだけ声が低くなる。
「ここは普通の洞穴ではない」
リオ
「え?」
ヴァルは足元の骨を見る。
「魔物が集まる」
「理由がある」
リオは周囲を見る。
骨。
残骸。
確かに多い。
ヴァルは言う。
「この洞穴」
「地下深くまで続いている」
「魔物の流れがある」
リオは驚く。
「流れ?」
ヴァルは頷く。
「弱い魔物」
「強い魔物」
「ここに集まる」
リオは少し不安になる。
「先生」
「それって……」
ヴァルは静かに言う。
「修行にはちょうどいい」
リオ
「よくない気がします」
ヴァルは笑う。
「安心しろ」
「死にそうになったら助けてやる」
リオは叫ぶ。
「死にそうにはなるんですね!?」
ヴァルは洞穴の奥を見る。
暗闇。
そして言う。
「だが」
「本当の理由はもう一つある」
リオ
「え?」
ヴァルはリオを見る。
初めて少し真剣な顔になる。
「お前のスキル」
「外で使うな」
リオは驚く。
「え?」
ヴァルは言う。
「まだ理解しておらんが」
「それは危険な力だ」
リオは困惑する。
「そうなんですか?」
ヴァルは頷く。
「人に見せるな」
「今はな」
洞穴の奥を指す。
「だからここで鍛える」
リオは静かに頷く。
「……わかりました」
ヴァルは剣を抜く。
シャッ
洞穴の中に金属音が響く。
リオは目を見開く。
空気が変わる。
ヴァルは構える。
「では」
「始める」
リオ
「え」
ヴァル
「修行だ」
次の瞬間。
ヴァルが消えた。
ドンッ
リオの体が吹き飛ぶ。
岩にぶつかる。
リオ
「痛っ!!」
ヴァルの声。
「立て」
リオ
「え!?」
ヴァル
「剣術の一歩目だ」
洞穴の空気が張り詰める。
リオの修行が
ここから始まった。




