第二政 最後の一杯 9杯へ
デンマークの街にドイツ軍の装甲車が突入。対抗するデンマーク軍は歯が立たず苦戦するばかり。
4月9日
デンマーク侵攻
デンマーク陥落
ノルウェーの空をドイツ軍の爆撃隊が襲撃。対空砲火が空を覆います。
同日
ノルウェー侵攻
ヴェーザー演習作戦開始
オランダにはドイツ軍の歩兵が次々侵入し銃撃戦を繰り広げる光景が広がりました。
5月10日
オランダ侵攻
オランダの戦い勃発
ベルギーの森にはドイツ軍の戦車が木々を押し倒し轟音を立て前進し止まることはありません。
同日
ベルギー侵攻
ベルギーの戦い勃発
ルクセンブルクにはグライダーから降下する空挺部隊のパラシュートが落ちてきます。
同日
ルクセンブルク侵攻
ルクセンブルク陥落
フランスの前線には各要塞が構え、ドイツ軍を待ち受けるのです。そしてフランスの歩兵はドイツ軍と交戦を開始したのでした。
同日
フランス侵攻
スダンの戦い勃発
店長のレコードから響く曲、それはヴェルディ作曲『レクイエム:怒りの日』でした。
その響きは戦場のよう。
[全国民の皆様にお伝えします。戦争です。5月10日、アルマーニュはフランスの他、ベルジーク、ダンマルク、ベイ・パ、リュクサンブールに侵攻。既にフランス軍はベルジークにて交戦を開始し…]
「…始まった…」
このニュースにレ・キャフェイ・カデは大騒ぎでした。エマとジャンヌだけでなくお客さんもです。中には支払わず店を出てしまう者までいます。
「み、みなさん落ち着いてください!どうしようエマ!」
エマは何も答えられず、立ち尽くすだけです。
カランっとドアベルが鳴り入ってきたのは店長でした。
「店長!」
「慌てないで。君たちは何があっても私たちが守る。ご来店の皆様、支払いは構いません。すみませんがここを退店していただきたく存じます」
「分かったよキャフェイの旦那。生きてたらコーヒーをまた淹れてくれよ」
「もちろんですとも」
残っていたお客さんを全員逃します。この時、フランス中が疎開先を求め大規模な移動によるパニックが発生していたのです。
「君らも疎開先に行ってもらおう」
「やだ」
エマがキッパリと断りました。
「…エマ、お願いだ」
「やだ。イリス帰ってきてないし、私の故郷はフランスでもパリでもない。ここなの」
「私も残る!私だけ逃げるなんてしたくない!」
その意思は強く、店長が何度も説得を試みますが絶対に崩れません。
「あの…店長さん。そこまで言うんですしいいではありませんか。それほど覚悟があるんでしょう」
「料理人さんもですか…」
もう一度エマとジャンヌの顔を見ると、真剣に、真っ直ぐ店長を見つめています。覚悟で燃えた心の強さの表れだと感じました。
「…はぁ…いいでしょう。ただし、1つ約束をしてください」
「約束?」
「死なないでください。絶対に」
「分かってる」
フランス
5月16日夜
首都パリ
数少ないお客さんが出ていき、ついに閉店時間。そこへ1人の人物が歩き店前で立ち止まったのです。
「すみません…ただいま閉店時間でして」
「エマ」
その声ですぐに分かりました。一体誰なのか。
「…イリス…」
ジャンヌと店長もすぐに駆けつけます。
「イリス!」
「久しぶりみんな。元気にしてた?」
漆黒の軍服と腕の赤い腕章。ドイツ軍の武装親衛隊の服装でした。
「帰ってきてくれたの…?」
「少しだけね。ねぇみんな、アルマーニュに来る気はない?」
「イリス。私たちにとってはここが故郷だ。手放すわけには行かない。そっちは帰ってきてくれないのか?」
少し下に俯き、イリスはこう聞きます。
「ごめんねエマ。それは今はできない。みんなさ、パリに私たちが来たら攻撃する?店長、どうなの?」
「私は退役軍人兼この店の主人だ。フランスとこの店の関係者に手を出すというのなら容赦はしない」
「…そっか」
イリスは軍服の裏に手を突っ込みます。店長は察知しエマとジャンヌを店の中へ押し返すのです。
バンッ!と乾いた音が夜のパリに響き、店の看板に穴が開きます。
「拳銃…!」
さらにもう1発、外から発砲がしたのです。それは店長の第一次大戦時の戦友でした。弾丸はイリスの拳銃を貫き無力化しました。
「今だ!」
「くっ!私たちを邪魔するなら私も容赦はしないからね!スダンはもうすぐ堕ちる!ここもすぐに!」
イリスは走り出しどこかへ向かいます。
「逃すか!」
「これを使え!」
戦友がリボルバーを投げ店長に渡します。
「ありがとう!」
「あと5発だ!気をつけろよ!」
店長も全力で走りイリスを追いかけ、それにイリスとジャンヌも続きます。
交差点に辿り着くと、イリスは自転車を盗み距離を取ります。
「離される…!」
店長はリボルバーを構えますが、暗闇で正確に狙えません。何より、イリスに当たる心配もありました。
「…また夜かよ…!」
「店長!撃たないで!」
ジャンヌが店長の手を掴み下ろします。
「店長…」
「…すまないジャンヌ」
「…また明日の朝、また探そう。自転車ならそう遠くにはいけないと…思うよ…」
5月17日、スダンからイギリス軍とフランス軍で構成された連合国軍は撤退。後にアラスの戦いが始まりますがここでも連合国軍は撤退を余儀なくされます。
撤退をする中、イギリス軍のマチルダⅡ歩兵戦車、フランス軍のB1重戦車によりドイツ軍部隊は迂回をせざるを得なくなり、進撃スピードが一時的ですが緩まります。
同月24日にダンケルクの戦いが勃発。イギリスによる救出作戦でフランス軍、イギリス軍、ベルギー軍は撤退することに。28日にベルギーが降伏。残すはフランス本土に残存する連合国軍と首都パリとなったのでした。
第一政 レ・キャフェイ・カデ
第9杯 帝国の恨み へ続く…




