優等列車を設定せよ! 下
優等列車として運行開始した急行列車は、その速達性と快適性から人気列車となった。
これ自体はもちろん喜ばしいことだが、この列車は客車の等級が一等だけの、いわば金持ち列車だ。だけど、これは必然。なにせ主要な客層は、高級貴族や高級商人なのだから。
そんな急行列車が、鈍行を追い抜いていく。その鈍行にも、首都へ向かう下級貴族や零細商人が乗っている。
彼らからしてみれば、車内の様々なサービスはともかくとしても、自分たちも速く移動してチャンスを掴みたいという欲望が生まれて「俺たちでも乗れる急行を!」という声が起きるのは、予想できることだった。
急行のスピードは欲しいけど、そんな豪華な設備いらん。とにかく、安くというわけだ。
そんな声が急行運転開始から3ヶ月もすると、次々と届くようになった。
もちろん、その対策はちゃんと打ってある。そもそも急行列車用にスジを3本も開けたのは、まさにこの安価板優等列車を運転するためだ。
ただ最初は客車を2等と3等にするだけで、停車駅は急行と同じ列車にしようと考えていた。
しかし、これは部下たちから止められた。曰く、停車駅が同じだと高級貴族や高級商人のプライドを傷つける可能性があるというのだ。
そこで、急行の停車駅に数駅追加し、種別も準急とすることで決着した。
この準急は急行より2時間遅れで、それぞれの始発駅を発車するダイヤを組み、特急よりも1時間ほど所要時間が長くなった。車両も二等と三等の客車に、娯楽設備と言えるのは車両の中間に挟んだ食堂車だけ。そのメニューも作り置きした弁当やサンドイッチ、軽食といったもので、どちらかというとビュッフェに近い。
その代わり車内販売を乗せて、多少補うことにした。
社内の意見では、相手は下級貴族や零細商人だから、ビュッフェ車や車販すら不要ではと言う意見も出た。しかし、さすがにただの座席車だけでは優等列車として貧相すぎる。
将来的に、国鉄も含む各線で優等列車を運転するための試金石であり、カジュアルなライト層のリピーター乗客を育てる意味からも、ビュッフェ車と車販の採用は断固貫いた。
こうして、急行に遅れること4ヶ月あまり、バトと王都を結ぶ準急の運転がはじまった。
結果は、急行以上の盛況となった。やはり必要とする乗客の母数が違ったようだ。
このため、運転開始1ヶ月後には空けていたもう1本分のスジで、隔日運転の臨時準急を設定した。隔日運転にしたのは、機関車や客車、要員の手配が間に合わなかったからだ。だからこの臨時準急は、最初食堂車なしの寄せ集め編成だった。
それらの製造と要員の養成が終わる3ヶ月後には、ちゃんとした正規編成の準急による毎日2本体制が確立するはずだ。
さらに、旅客だけでなく貨物の速達便も求められた。新鮮なバトの海産物を、魔法で冷凍して少しでも速く内陸に運びたい需要等であった。
こちらも、途中駅での貨物の積み降ろしを無くした直行貨物便を設定した。ただし、こちらは夕方出て早朝に着くダイヤなので、基本的に人目に付かない。だから、関係者以外からはあまり注目されなかった。
ただこうして貨客共にうちの鉄道がシェアを奪ったことで、沿岸航路は大打撃を受けたのだが。
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