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需要はあるのか?

 日本を含む鉄道の歴史において、観光や参詣と言った、沿線住民の便宜のためではなく、特定の目的地へのアクセス手段として鉄道が敷かれた例はいくつもある。そして、現在に至るまでその使命が変わらない路線もある。


 また鉄道の敷設と並行して、沿線に住宅街やニュータウンを整備して、乗客需要をゼロから創出した例は、日本の鉄道経営史に燦然と輝く偉業だ。


 これを成し遂げた小林一三や五島慶太の名は、近代日本の歴史教科書に必ず出て来るし、多摩や大阪の千里と言ったニュータウン開発は、高度経済成長期の日本を語る上で外せない。


 さて、ではこのルーレ王国の鉄道運営において、そうした経営手法が有効かと言われれば、個人的には早過ぎると思っている。


 まだ産業革命の端緒にたったに過ぎないこの国では、急速な発展を見ているとはいえ、厳然な身分制度に、領邦制という封建制度が存在し、大多数を占める平民層の国民所得も押しなべて低い。


 となると、レジャー目的の鉄道利用や、或いは月賦制(ローン)をとっても一戸建て住宅を購入して、鉄道を利用しての通勤通学を見込めるほどに、国民の購買力が育っていないことになる。


 もちろん、この点に関してはモクロ国王とも将来解消するべき課題と言う共通認識は出来ていて、解決に向けて動き出しているけど、少なくともウン十年スパンで見ないと解決など出来ない問題だ。


 だから、今は出来るところからやっていくしかない。


 例えば観光目的の鉄道利用は、平民層にはまだ難しいけど、貴族階層や平民の中でも一部にいる富裕層に関しては、現状でも期待できる。総数としては多くないけど、社会への影響力が大きい彼らに鉄道の利便性を知らしめれば、今後の鉄道敷設で力になること間違いなしだ。


 つまり、富裕層向けの別荘地なり避暑地なりを鉄道沿線に開発して、そこへの交通手段として既存の国鉄を活かすのだ。そして幸いなことに、現在までに敷設した鉄道路線の沿線には、好立地の場所がいくつかあった。


 もちろん、その整備には金が必要になるわけだけど、もちろん現状旅客部門の収益が苦しい国鉄が出す余裕はない。


 そこで、モクロ国王陛下に応援要請を出して、俺も含む国内の有力貴族が出資してリゾート開発会社を設置し、そのリゾート会社が別荘地や避暑地の整備を行う。そして国鉄は、最寄り駅の設置費用だけを出すという作戦だ。


 ちなみに別荘地や避暑地自体は、駅から少し離れた場所に建設する。これは蒸気機関車からのばい煙や、列車の走行で発生する埃や振動対策に加えて、駅周辺に将来的な開発の余地を残すためだ。そうでなくとも、別荘地や避暑地を維持管理するのは、富裕層ではなく平民層の労働者だから、その生活空間はいる。その生活空間を駅周辺に設ければ、万々歳だ。


 爆発的な乗客増加は望めないけど、まあ旅客輸送の存在意義を残すのがまずは先決だからね。


 こうして、産業都市と学園都市の整備、そして富裕層向けリゾートの整備と言う、三本柱で国鉄旅客輸送の新規需要創出を図ることになった。


 

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