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旅客輸送を拡充せよ!

「これは勇者様!遠路はるばるお呼び立てして、申し訳ありません」


 到着翌日、鉄道省に顔を出すと、クマラギ大臣がめちゃくちゃ腰の低い姿勢で出迎えてくれた。もう、この時点で嫌な予感しかしない。


「あの、大臣。直球で聞きますが・・・国鉄の経営、かなりマズいことになっていません?」


 すると、クマラギ大臣が汗を拭き始めた。


「やはり、バレていましたか」


「中央駅の閑散ぶりを見ましたので」


「はい・・・実は乗客数が思ったように伸びておらず」


「まあ、もともと軍事利用第一の路線でしたからね。しかし、戦後を見据えて幾つか計画は練ってあった筈ですが?」


 今回わざわざ新しい提言をするまでもなく、戦時中の敷設段階で、戦後の経営を軌道に乗せるための計画をいくつか作っていた。新駅の設置や、旅客列車の増発などだ。


「はい・・・いや、実を言いますと経営上マズいことになっているのは、旅客だけで貨物はそれほどではないのです。問題なのは、貨物から旅客へのシフトが進まないのです」


「ああ、なるほど・・・」


 何となくわかった。おそらく、戦争中に運転していた軍需列車のスジが、本来旅客に振り替える筈だったのが、そのまま貨物列車に移ってしまったのだろう。


 案の定、クマラギ大臣の説明を聞くと、これまで陸の輸送は、最小だと人力、最大でも馬車であったが、そこに安価に大量輸送可能な鉄道が登場したせいで、中長距離における貨物の需要を、鉄道が独占してしまったという。


 おかげで、戦前見込まれていた貨物列車のスジを旅客列車に移すという計画が、上手く進まなかったようだ。


「それに、既存の馬車組合との兼ね合いもありまして・・・」


 これまでの陸の交通の主役であった馬車は、貨物の需要を鉄道に取られた。一方で、その分の輸送力を旅客に振り替えたために、今や乗合馬車は活況を呈しているらしい。これも鉄道の旅客数が伸びない遠因となっていた。


 鉄道を知る身としては、馬車より列車を選ぶが、馬車の場合運賃が鉄道よりも破格なほどに安価で、庶民は乗合馬車を選ぶ傾向にあるという。


「需要が貨物に傾き過ぎますと、今後の新線計画にも影響が出ます」


「でしょうね」


 確かに貨物輸送も、鉄道の大事な仕事だ。この世界では内陸部の輸送はこれまで馬車しかなかったから、その数倍の輸送力を発揮できる鉄道は、まさに革命的な輸送手段。加えて、俺の持ち込んだ知識で産業革命を成し遂げたこの世界では、鉄道は産業を支える車の両輪だ。大規模な工業地帯への資源と、生産された製品の輸送に欠かせない。


 一方で貨物だけに偏重してしまうと、人間の輸送は旧態依然のままとなってしまう。これでは国の発展に充分な貢献ができない。


 さらに、大臣の言うとおり人々の流動を想定して作った新線の敷設計画に支障が出るだろうし、また各地の領主たちへの説得材料としても使えなくなる。


 つまり、軍需や産業目的以外に鉄道を敷設する意味がなく、領主たちに鉄道建設反対の材料を与えることになる。


 全国に鉄道網を張り巡らせるためには、あまりにも不都合だ。


「つまり、旅客輸送の立て直しが急務と言うことですね」


「そういうことです」


 ふむ、そうなると・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] 馬車組合を鉄道駅に客を集めるバス路線として取り込むしかないでしょうな
[一言] 町中を走る馬車に対して補助金出して長距離需要を低下させつつ 比較のビラをまいて対費用効果の目視化しつつ。定期などでの割引きあたりかな? ぱっと思いつく範囲だと
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