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ウェディングトレインを走らせろ!

 開業式典から1週間、とりあえず今日まで事故なく、我がヤマシタ鉄道は運行中。


 現在のダイヤは旅客列車が朝昼晩に1往復ずつの3往復で、この内朝のオジリシ方面上りと晩のワジフラ方面下りが国鉄直通便。貨物列車が午前中上りの午後下りで1往復だ。


 現代日本なら「廃線一歩手前のローカル線かよ」と言われそうだけど、まだ長距離需要が充分発掘されていないこの世界では、まずはこのあたりからだ。


 現代日本みたいに、数分に1本やって来る長い電車が、次々と発着してお客を捌くなんて光景は、数十年は先の話だ。


 さて、とりあえず順調な鉄道の運行を横に見ながら、俺はアイリとの結婚式の準備。本来であれば、公爵であり領主の俺の結婚式は、この国の貴族の風習に則って領地をあげて、大々的にやるべきなんだろうけど、俺自身は異世界人とは言え庶民出身だし、それに嫁のアイリはかつての敵である魔王だからね。


 幸いなことに、モクロ陛下から異世界人の勇者である俺に関しては、この国の貴族が守るべき慣習の多くを免除していただいているし、今回のアイリとの結婚もお墨付きをもらっている。


 という訳で、アイリとの結婚式も自由にやらせてもらう。


 今回俺が結婚式場として選んだのは、列車の上だ。つまりは、ウェディングトレインの運行だ。


 予備の食堂車内に装飾を施して簡易な式場にして、路線を1往復する間に結婚式・・・というより、ちょっとしたパーティーをするというプランだ。だって、俺は異世界人でアイリは魔族のトップの魔王。つまり、この世界の宗教とは縁ないから。


 それに、どうせ俺もアイリも親兄弟はいないし、呼ぶべき参加者もモクロ陛下の代理人や、会社の関係者、あとは日々世話になっている屋敷の使用人くらいだから、食堂車1両で事足りる。


 もちろん、旅客貨物合わせて1日4往復しか走っていない路線だから、1往復の臨時列車を差し込んでも何ら問題なし。


 こうして、開業からちょうど10日目、ウェディングトレイン運行当日を迎えた。


「出発進行!」


 俺たちを乗せたウェディングトレインが、オジリシ駅を出発して、ワジフラへと向けて走り出した。


 俺は開業式でも来た社長用礼服に身を包み、アイリの方もあの日着た白のドレスだ。


 さっきも言ったとおり、特に宗教的な何かをするわけでもないので、参加者を証人に、俺たちは夫婦の誓いを交わした。


「旦那様、末永くよろしくお願いいたします」


「お互い不老不死だから、本当に長い付き合いになるだろうけど、こちらこそ、よろしく頼むね」


 そして、俺は彼女の指に特注の指輪を嵌めた。


 この世界では、結婚指輪を送る習慣はないけど、俺は敢えて彼女に結婚指輪を送った。やっぱり、何がしか夫婦になったっていう証が欲しかったから。


「さあ、みんな。短い時間だけど、俺たちの門出に集まってくれて、ありがとう。好きなだけ飲んで食べて楽しんでいってくれ!」


 鉄道に乗りながら楽しいひと時を、それこそ俺がこの世界で目指すものだ。


「旦那様・・・愛してます」


「俺もだよ、アイリ」


 列車に揺られながら取ったアイリの手は、とても暖かかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新乙です。 それでは、、、 リア充、爆発しろ! 失礼しました。
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