国王陛下を歓待せよ
「まずは、鉄道開業おめでとう、助雄」
「ありがとうございます。陛下」
「今は僕たちだけだ。以前のように、砕けて話してくれてもいいんだぞ」
「いやいや、そう言う訳にも参りますまい」
モクロ・ルーレ国王。このルーレ王国の頂点に立つ少年。今年20になるけど、出会った頃と変わらないな。
この国に俺が召喚された時、彼はまだ王子で、ようやく政治や軍事に顔を出し始めた頃だった。最初は俺のことを胡散臭そうに見ていたけど、俺が異世界から取り寄せた本の虜になり、その後は様々な面で、俺の良きパトロンになってくれている。
「それにしても、まさか魔王を奥方に迎えるとはな」
「陛下の寛大なお心には感謝しています」
「なあに。あの者の身柄は助雄に譲ったんだ。お前の好きなようにすればいい」
アイリとの結婚について、幸いなことにモクロ陛下の許可を得られた。これで少なくとも、この国の中では彼女との仲は盤石だ。
「で、式はどうするんだ?」
「実は、せっかくなので、列車の中で挙げたいと考えております」
列車を使った結婚式は、向こうの世界では時々行われていたけど、せっかく自分の鉄道を手に入れたからには、これを使わない手はない。
「ほう。結婚式まで列車の中でか。本当に鉄道が好きなのだな、お前は」
「もちろんです。先ほどの祝辞にあったように、この鉄道は始まりに過ぎません。やりたいことは、まだまだたくさんあるので」
何せ、作りたいものはまだまだある。電車に、路面電車、ケーブルカーに鉄道連絡船。数十年スパンになるだろうけど、新幹線のような高速鉄道や、大都市を支える都市圏鉄道なんてのも作ってみたい・・・まるでどこかのゲームみたいだけど、それを実現できる力と時間を、俺はこの世界で得ている。
「わかったわかった。この国のためになるのであるなら、好きにやってくれ。私は最後まで付き合えないだろうが、お前の夢がどこまで実現するか、見届けてやる」
「感謝いたします。陛下・・・さあ、小難しい話はここまでに致しましょう。この列車はオジリシから王都まで直通します。短い時間で、列車の上ゆえにささやかなものとなりますが、宴にいたしましょう」
今回お召列車に利用した車両は、全て国鉄との乗り入れ用に狭軌用台車を履いた車両になっている。だから、このまま終点で国鉄に入り、陛下を送り届けるために王都まで直行する。それまでは、俺がホスト役として陛下をもてなす必要がある。
とは言え、このもてなしも大事な宣伝だ。
「こちらが、今後我が鉄道の食堂車で出すメニューです。この中から好きなものをお選びください」
「ほう・・・随分と種類があるな。これを本当に、列車の中で出すのか?」
「もちろんです」
魔法様々で、メニューはかなりの数を取り揃えることができた。コックも王都をはじめ、一流ホテルまではいかないけど、それなりに名の通った人を引っ張って来ている。
「そうか・・・では、赤ワインとつまみのセットに、チキンのソテーをいただこう」
「畏まりました」
その後列車は国鉄線に入り、無事に王都に到着した。食堂車のメニューに対する陛下の評価は、彼が御満悦な表情で降りて行ったのだから、合格点だろう。
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