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社員を育成せよ!

 今のところ、この国では鉄道車両の製造は国の独占となっている。何せ、鉄道に関する一切合切の資料は、勇者である俺が地球から取り寄せ、それを国家管理のもとで鉄道の製造に利用したからだ。


 ただし、対魔族戦争中ならともかく、戦争が終わった現在では、鉄道の建設にしろ運営にしろ、国家(国鉄)だけで行うのは無理だ。


 とりわけ、鉄道車両製造は路線が伸びれば伸びるほど需要が増してくるし、そうなると国鉄の工場だけでは手に余る。だからいずれは、修理から始まって、続いて製作難易度の低いの貨車や客車の製造、そして機関車の製造と言う段階的なステップアップを経て、車両関係の仕事を民間へと移すことになるのが、国の政策で決定している。


 これには、既にいくつかの商会が興味を示しているらしいから、近いうちに実現するだろう。もちろん、うちの鉄道会社もだ。


 さて、施設と車両に続く絶対に必要なもの、それはすなわち人員だ。これがなくては、何も動かない。


 機関車を動かす機関士に、貨客関わらず列車の管理をする車両、駅の管理を行う駅員、車両の整備士、信号員、踏切警手・・・上げればキリがない。


 言うまでもなく、これらは鉄道が開業した明治日本でも特殊技能者だった。そしてついこの間産業革命を起こしたばかりのこの世界でも、それは変わらない。


 事故を起こさず安全運行を成し遂げるには、彼らに高いモラルと技量がないとできない。


 という訳で、社員の育成は既に国鉄が数カ所に設けた鉄道学園で行っている。今日はその内の一つを見て回っている。


 見て回っているんだけど・・・


「随分若い人が多いですね」


 今目の前では、機関士候補の学生たちが投炭訓練を行っているけど、皆若い。どう見ても高校生くらい、なかには中学生て言われても仕方がない子もいる。さらに言うと、女の子が混じっているのも目立つ。


「戦争が終わって、復員した元兵士たちが様々な職場に復帰したのと、軍が大幅に縮小したせいで、若い者たちの働き場所が減ってるんですよ。だから、いまや鉄道業界は若い者にとって、有望な働き先ですわ。彼らは新しい鉄道のことも、怖がりませんしね」


 案内する鉄道学園の職員が、そんな説明をしてくれる。


「それと、最近は読み書きと簡単な計算ができる者が、本当に増えましたからね。おかげで、採用には困りませんよ」


 読み書きと計算は、こっちの世界に来てからなされた改革の一つだ。対魔族戦争中に、俺が国王陛下の許可をもらって、満7歳から11歳までの子供に無償で読み書きと計算を習わせる学校制度を作った。


 下層民に教育をするという政策に、反発はあったけど、勅命と戦時下の政策でゴリ押ししたんだよね。だってそうしないと、戦争が終わった後の近代化ができないから。


 その成果がジワジワと出てきたようだ。


 実際、国鉄だけじゃなくてうちの会社での採用も順調と、人事部長から聞いている。にしても、ここまで若い人に偏っているとは、聞いてなかったな。


 やっぱり、新しい鉄道と言う仕事に対して、まだまだ忌諱が強いってことか。今後の課題だな。


 それから、俺は他に車掌や踏切警手、さらには食堂車のウェイトレスとして働くサービス部門の養成風景を見学させてもらった。


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