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第20話 フィオナとコーディネート

私は、魔法の研究の気分転換に、この街の大きな商業施設、『リオンモール』に来ていた。建物の外装は近代的で、私達のいたところとは似ても似つかない建築技術の発展した場所だ。


話には聞いてたけど、本当に色々なお店がある。おいしそうなご飯屋さんの集まったフードコート、服屋さんが密集しているアパレルコーナー、それ以外にも色々なお店が並んでいる。


私がまず最初に入ったお店は無論、服屋だ。ナイトの服はもちろん、自分の服も買いに来た。私の魔法を通しづらくするローブはもうボロボロなのだ。


「いらっしゃいませ~」


服屋の店員さんはとても感じのいい優しそうなお姉さんだ。


「今日はいったい何をお探しで?」

「えっと、魔法を通しづらくするローブを買いに」

「それでしたら、こちらの方にありますよ〜」


――ここ、本当にローブ売り場なの!? 私が案内された場所には、猫耳のかわいいローブから、革造りのかっこいいローブまで沢山の種類のローブが100品以上も存在している。


「すごい。こんなにローブが……!」

「初めていらっしゃった方は大体その反応なんですよね〜。このアパレルショップ『ユニシロ』のデザイナーさんは、あの『イズナ・ゾロ』さんが担当しているのです!」

「へ、へぇ。そうなんですね」

「それに、魔女っ娘人気は今も一定の信頼があるのです!!」

「はぁ……」

「私、アナタをさっき始めてみたときから、ちっちゃくてかわいいと思ってたんです!! 是非! アナタのローブ……いや! アナタのコーディネート、私に選ばせてくれませんか?」


――ヤバい人に捕まってしまったかもしれない。いや、私も十分ヤバい人たちとつるんでいるけども、それとは別のベクトルのヤバい人だ。


「すみません。私、そんなにお金持ってなくて……」

「『お金がない』それが理由なんですね?」

「は、はい」

「でしたら、私の今月のバイト代を使って、買ってあげます!! なのでアナタのコーディネートを選ばせてください!」

「そんな、悪いですよ。それに、私がおしゃれしたところで――」

「いいえ!! それくらいの価値があなたにはあるんです! 自分に自信を持ってください!」


店員さんの圧力に徐々に押されていく。崖っぷちの相撲取りのような気分だ。こういう押し売りって、詐欺とかに使うやつだよね? 普通。え、これ本当に無料で貰えるの?


「どうです! これでコーディネートさせていただけますか!?」

「え、ええ。それでは……お言葉に甘えて?」

「ありがとうございます!! あー!! こんなかわいい娘の服を選べるなんて! 今日はなんて良い日なの!」

「は、はぁ……」


服を買ってもらうことより、着てもらうことを優先するなんて。 仕事に誇りを持ってらっしゃる。きっとこの人はこの仕事が天職なんだろうな。


「どうかしら! これとかかわいいんじゃない?」


更衣室に座らされた私は、気が付けば店員さんの着せ替え人形になっていた。


「すみませんゴスロリとかは……私もう19歳なので」

「うーん。あんまり好みじゃなかった?」

「そうね〜」


少し考えたあと、店員さんはまた服の入った箱の中に体を突っ込んで、ガサゴソと漁り始めた。


「これとか、どうかしら?」

「それ、メイド服ですよね。ふざけてます?」

「じゃあこれは!」

「いや、それ水着ですよね?」

「これも気にいらなかったか〜」

「それじゃ! これ!」

「いや……それ、もはやただのコスプレじゃないですか……」


こんな感じのやり取りが20分程繰り返され、私の心はもうヘトヘトになっていた。いや、何度も布を被せられた続けた体もヘトヘトだ。ナイトもこんな気持ちだったのかもしれない。


「すみません。私、ローブを買いにきたって伝えてませんでしたっけ?」

「あ! ごめんごめん!! あなたが可愛すぎて忘れてたわ!」

「えぇ……」

「ちょっと待って頂戴! 魔女っ娘系のコーディネートをもってくるからー!」


1分程経って、店員さんが10着程の服を持ってきてくれた。


「はぁ、はぁ……持ってきたわ!」

「早くないですか!?」

「お客様を待たせるわけには行かないからね。急いだからあんまり持ってこられなかったわ」

「なんか、すみません。そんなに親身になっていただいて」

「いいえ! 気にしなくていいわ!! だってあなたは可愛いもの」


この店員さん、さっきアルバイトって言ってたけど、絶対正社員になったほうがいいほどの逸材!!


「早速、着てもらえるかしら?」

「わ、わかりました」


鏡に映った私は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。なぜなら、店員さんが選んでくれたコーディネートは紅茶とクッキーのように、すごく私に似合っていた。


「ね? かわいいでしょう?」

「は、はい」


私の髪の毛の色である青と白を基調としたカラーの服に、程よい黒。丁度いい長さのスカートにピッタリと合ったサイズ感。これがオーダーメイドではないのだから、世界は不思議だ。


「す、すごい。こんなに私に合った服がオーダーメイドじゃないだなんて」

「いつか、来たるお客様のために私が夜な夜な作った服でございます」

「え?」

「様々な服の種類、大きさ、色の服を作っているのです」

「ちなみに、何着くらい?」

「そうですね。今のところ――198426着ほどですね」


――何この人怖い!! え? いや、仕事に情熱があるのはいいことだけれども! 普通いつか来るお客さんのためにってそこまでする!? オーダーメイドの意味って何!?


「す、すごいですね」

「でしょう。私はかわいい娘のコーデを考えるためならなんだってできるのです!」

「は、はぁ……」

「これ以外にも、アナタの着替えや、靴、お帽子それに水着だって選んであげます!!」

「え?」

「そのためには必要な情報がございます」

「そ、それは?」

「アナタのスリーサイズでございます!」

「えっ! ちょ……!」


店員さんは私を壁際に追いやり、おもむろにメジャーを取り出す。


「ちょ……やめてくだ――」

「ふふ! 上から61! 54、81!」

「あぁ!!」


私の顔はまるで夕焼けのようにみるみる真っ赤に染まっていく。


「ふむ。身長は156――」

「もうやめてー!!」


――二人きりの更衣室に響いたのは、私の体の情報を読み上げる店員の声と私の悲鳴だけだった。

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