第19話 天才 其の一
「1134回目……!」
私が今日。回復魔法、及び強化魔法の上級術式の構築に失敗した回数だ。私は4日間、寝る間も惜しんで魔法に時間を溶かしている。
前に火魔術の上級を習得するのにかかった時間は約半年程……。いやこれでも十分すごいんですよ?
しかーし! 早ければ半年後なんてもうすでに魔王城の中!! 出発は一週間後。つまり私はあと一週間で二つの魔法の上級を習得しなければならない!!
「回復魔法!!」
「パリーンッ!」
「強化魔法!!」
「パリーンッ!」
駄目だ!! 1136回目……。気分が悪くなってきたな。魔力回復薬を飲んでおこう。これがないと私はやっていけない。
「はぁ……」
私が大きなため息を公園中に響かせる。
「行き詰まっているようだな」
「うん。なかなかうまくいかなくて――」
「って、ナイト!? いつの間に」
「30分ほど前からだ。」
ナイトが【隠密】を使いながら私の練習を見てたことに気づかなかった。これは、隠密スキルの対策も考えておかないと。
私がくたびれた様子で俯くと、ナイトが私の肩に腕を置いて、口を開いた。
「顔色が悪いな。少し休んだらどうだ?」
「どうしたの? 今日は珍しく優しいじゃない」
「勘違いするな。またお前の吐瀉物の後始末をするのが嫌なだけだ」
「ふーん」
意外と、ナイトはツンデレ気質なのかもしれない。もしかしたらもっとちゃんと話せば服を着てくれるかもしれない。
公園をあとにした私達は、ナイトの提案でアイスクリーム屋さんに行くことになった。ナイトの奢りらしい。やったね!!
「バニラでいいな?」
「うん」
「バニラアイスを2つ」
「はいヨー!! 400マノンだヨ!」
「ああ」
「毎度ありダヨ!! また来いヨだヨ!」
店員さんは、東側の国の人らしく、言語はカタコトだが、とても優しそうな人だった。アイスを持ってベンチに座った私達に手を振ってくれている。
「店員さんいい人だったね」
「そうだな」
「そうだ、アイス買ってくれてありがとう」
「ああ」
「……」
気まずい……。一緒にベンチに座ったは良いものの……。一体何を話せば良いんだ!!
私が話せないでいると、ナイトが口の周りについたアイスをペロッと舐めてから、話し出す。
「魔法がうまくいかないのか?」
「……うん」
「ここ最近のお前の様子はとても理論的とは言えん。睡眠時間を削ることは良くない事はお前ならば知っているだろう」
「そうね」
「食事や睡眠を疎かにしてしまうほど、魔法の研究に精を出すのは良いことだが、本当に取らなければ元も子もないだろう」
「はい……」
ナイトに理論で言い負かされるなんて……。でも、ナイトが言ってることは全部正論だし、理にかなってる。
「そこで俺から提案だ」
「食事は三人で取ろうではないか」
「三人で?」
「ああ」
いつもは「俺は一人でいい」みたいな感じで、一人で食べてるから、この提案は意外だな。
「今日の19時に、宿屋に集合だ。忘れるな」
「うん。わかった」
「では俺は図書館に戻ろう」
去り際、ナイトは
「どんな天才にも、食事や睡眠が必要不可欠なのだ。無理に上達させようとしても体を壊すだけだ。程々にしておけ」
と、去り際とは思えない長いセリフを吐いてから、踵を返した。
ちょっと説教臭かったけど、これがナイトなりの気遣いだったのかな。私は去っていくナイトの後ろ姿を見ながら思う。
――全裸なのに、なんでこんなにいい言葉のように聞こえるんだろう。いや、いい言葉だけど……。
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