第9話
「まぁ、浅倉奏は一時期話題になったから、インターネットで検索をかければすぐに出てくると思うがな」
「そんな有名人なんですか?」
「あぁ」
理音は奏の事は簡単に調べられると言うと秋菜は首を傾げた。
「理音くん、どんな人なの?」
「神童浅倉奏、才能としては音感や聴力に特化した天才。全ての音を聞き分け、声の調子や抑揚で相手の感情すら聞きわける」
深秋は個人情報など気にする気はないようで、直ぐに奏の名前に食いつくと理音は奏の持っている『異質な才能』について簡潔に話をする。
「感情すらも聞きわけるですか?」
「あぁ。相手にとっては自分の考えている事が簡単に読まれてしまうんだ。拒絶するには充分な理由だろう?」
「理音くんはが相手のしぐさとかで何を考えているかわかるように声を聞けば何を考えているかわかるんだね」
理音は奏が周囲から拒絶される理由を話すと深秋は理音と奏が似ていると思ったようで頷く。
「そうだな。俺の場合は表情がないから、周囲はあまり気にしないが、浅倉の周りはそうはいかなかったんだろう。彼の周りは彼を奇異の目で見て、彼を拒絶した」
「お兄ちゃん、そんなの悲しいです。その人、1人です。1人は寂しいです」
理音は淡々とした口調で話を続けていると怜生は奏の事を考えて、涙を流し始める。
「そうだな。だから、怜生は仲良くしてやってくれ」
「はいです」
理音は心優しい怜生の言葉に無表情な彼の表情は軟らかくなり、怜生の頭を優しく撫でると怜生は小さく頷く。
「理音くん、でも、あの、浅倉くんは桜華学園で上手くやって行けるんでしょうか? 私やみあちゃんは大丈夫だと思いますけど」
「ん? 大丈夫だろ。理事長と言う肩書を持っている人間が言うのもなんだが、うちの学園はおかしな人間しかいないからな。それくらいの事は些細な事だ」
「そ、それもどうかと思うんですけど」
秋菜は自分と深秋は理音と言う前例があるため、おかしな視線を向けないが周囲はどうかとわからないと言うと理音は表情を変える事なく、桜華学園の生徒はおかしいと言い切り、秋菜は苦笑いを浮かべる。
「まぁ、本人も自己防衛手段は持っているだろうがな。それをぶち壊す事から始まる。常識を本能のままにぶち壊す人間、論理的に考察して作った壁を少しずつ壊してくれる人間がこの学園には多くいる」
「そうですね」
理音は奏のような人間を助ける事が出来る生徒が桜華学園にいると話すと秋菜は理音と深秋を交互に見て頷く。
「自分が守ろうとしてきたものがなくなってしまい、支えを失ってしまった時に手を差し伸べてくれる人間がいる」
「うん」
「み、みあちゃん!?」
理音は秋菜の視線に気が付き、表情を和らげると深秋は秋菜に抱きつき、彼女の行動に秋菜は驚きの声をあげる。
「まぁ、転入は2人と同じクラスにねじ込んでおくから、任せるぞ」
「うん。ボクとお姉ちゃんに任せてよ。理音くん♪」
「はい。頑張ります」
理音は2人の様子にくすりと笑うと深秋は力強く頷き、秋菜は自信なさげに頷く。




