第8話
「お帰り、理音くん♪」
「あぁ。ただいま」
理音が仕事を終えて、怜生を預かって貰っているため、吉井家に顔を出すと深秋が直ぐに飛びついてくるが、今回は不意を突かれなかったせいもあり、理音は深秋をしっかりと受け止める。
「お風呂にする? ご飯にする? それともボク?」
「最後の選択肢には興味が引かれるが、一先ずは夕飯だな」
「えー」
深秋は理音に向かい、3択を迫るが理音は彼女のボケを軽くスルーし、深秋は予想していた答えと違ったようで不満げな声を上げた。
「みあちゃん、遊んでないで、手伝って、理音くん、お帰りなさい」
「お兄ちゃん、お帰りなさい」
「あぁ。ただいま、怜生、秋菜」
深秋に遅れて秋菜と怜生が理音を出迎える。
「しかし、どうして、いつもの事だか、みあは玄関に出てくるのが速いんだ?」
「……みあお姉ちゃん、前にお兄ちゃんの匂いがするって言ってました」
「そうか」
理音は1番最初に深秋が出迎えてくれる事がずっと疑問だったようで首を傾げると怜生は以前に、深秋が言っていたであろう言葉を理音に教えてくれるが、理音には理解ができないようで眉間にしわを寄せた。
「えーと、とりあえず、その件は置いておきましょう。理音くん、もうすぐ、夕飯ができますから、ゆっくりしていてください。みあちゃん」
「うん」
秋菜は苦笑いを浮かべるとまだ、夕飯の準備が残っているようで深秋に声をかけ、2人でキッチンに戻って行く。
「怜生、行くか?」
「はい」
理音は2人の背中を見送った後に怜生に声をかけると怜生は返事をするが何かを期待しているのか理音の顔を見上げ、理音は怜生の様子に彼を抱きかかえると居間に向かって歩き出す。
「理音くん、結ちゃんから、聞いたんですけど、週明けにまた転入生がくるって本当ですか?」
「ん? あぁ。1人、スカウトをかけたのが入ってくるな」
夕飯が始まり、しばらくすると秋菜は結に頼まれた転入生浅倉奏の事を理音に聞くが、理音は特に隠す必要性を感じてないため、直ぐに頷く。
「そうなの? どんな子?」
「あぁ。名前は浅倉奏。学年はお前達と同じ2学年だ」
「奏? 女の子?」
「いや、男だ」
深秋は奏の名前に首を傾げると理音は淡々とした口調で答える。
「理音くんがスカウトしてきたって事は何かしらの才能があるって事ですよね?」
「あぁ。それに関しては資料があるが、見るか?」
「えーと、見ても良いんですか? それって、個人情報ですよね?」
秋菜は理音が連れて来た生徒と言う事で何かしらの才能があると理解し、遠慮しながら聞くが理音は気にする事なく資料に目を通すかと聞き、秋菜は流石に不味いと思ったようで苦笑いを浮かべた。
「そうか? 特に気にする必要はないと思うが、それにウチの新聞部や放送部なら躍起になって調べている気もするがな。明日の朝にはすでに号外や臨時放送で転入生自身が知らない情報まで調べ上げている気がするがな」
「……確かに、そうですね」
理音は桜華学園の生徒達の行動を考えるとすでに情報は回っている可能性もあると言うと秋菜は大きく肩を落とす。




