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魔法少女ペッツ 〜魔法少女の深刻な成り手不足らしいので、うちの白ヘビが魔法少女にされました〜  作者: 小潟 健


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15/15

第15話『あつまれ魔法少女! お局様もやって来た!!』

午前9時、作戦まで残り1時間。


魔守沢動物魔法少女隊は、軽トラにて現場付近へ到着した。


付近のワゴン車の横に女性の一団があり、俺はその中に岡部かおりさんを発見し、挨拶へと伺う。


「岡部さん、お待たせしました。 魔守沢組到着です」


「ああ、ゴッドくん、おはッ!?⋯⋯よう、さん。 いやぁ、キミ、強烈やねぇ」


「ああ、この仮面ですか? すみません、ディカが言うには一度取ると付け直しが面倒らしくて、失礼ながらこのままでお願いします」


「いや、まぁソレはかまへんけどな⋯⋯ソレだけやなくて、ヘビ巻き付けたり、肩に猫とか頭上にダチョウの頭乗っけてたりとか、合わせたビジュアルがいかついなぁ⋯なんてな、ま、ええですわ。 ほんなら、メンツが揃った事だし、軽い紹介と作戦の確認をしようか?」


岡部さんが振り向いた先には6人の女性が居た。


「さぁみんな、今来てくれたこの白仮面くんは、隣の市の動物魔法少女の飼い主及び引率者さんや」


「初めまして。 アクトゥーへの身バレ防止の為に、俺の事はゴッドとお呼び下さい」


「このハイセンスな格好はアクトゥーへの身バレ防止に妖精たちが細工したモンやから、本人の趣味や無いで。 昨日話したけど、中身は真っ当な好青年やったから安心してくれ」


岡部さんは俺の姿をフォローしてくれた。

この格好をちょっと気に入ってる事は黙っておこう。


「そんで、ゴッドくん、動物の子たちは変身して貰えるかな?」


「そうですね、それじゃあ⋯」


「グぇーーーーッ!!」


俺の背後で元気の良い鳴き声と共に光が放たれ、それが終わる頃に背中にのしかかる重量感。


ケマリちゃんが勝手に変身し、俺におんぶの様な姿勢でしがみついていた。


「ガハハー」


今朝は少し寒いから、くっついて暖を取りたい様だ。


「このダチョウの子はケマリちゃんです、非常に身体能力の高い魔法少女でー」

俺の言葉の途中で胸から首にかけてが発光。


ケマリちゃんと俺との間、挟まれ心地が悪かったのか、トグロちゃんは魔法少女へ変身しながらモゾモゾと位置を調整した。


「ベスポジ発見伝」


「えー、ケマリちゃんはパワー、スピードともに非常に強力ですが、このヘビのトグロちゃんのコントロールが必須ですので、この2匹はセットで運用して下さい」


トグロちゃんがポジションを替えた事で居心地が悪くなったのか、肩のおニャンちゃんはトグロちゃんを踏み台にして上へと飛び上がり、ケマリちゃんの頭上へと降り立ち、そして魔法少女に変身した。


「お前ら、おニャンの上に立つなにゃ」


「猫のおニャンちゃんは素早い身のこなしで近接戦闘が得意なタイプです」


胸のポケットからモゾモゾと蠢く感触。 手を差し出してあげると、一度その上に乗り、そこから大きくダイブするハムスター。


空中で変身した魔法少女は岡部さんたちに向かってペコリと頭を下げる。


「はじめまして、ハムスターの魔法少女キミコです! 今日はガサ入れのお手伝いに来ました! よろしくお願いします!!」


パンパンの頬袋をブルンと振り回しながら元気に挨拶をした。


「ハムスターのキミコちゃんは頬袋の弾を放つ遠距離戦闘が得意な子です」


これが魔守沢の誇る動物魔法少女たちです。



「ゴッドくん⋯⋯キミ、体幹強いね」


体幹?


⋯⋯なるほど。


確かに、今の俺は女子小学生3人相当を上半身に載せているからね。


「ハハハッ、みんなバランス良く載ってくれてますからね⋯⋯キミコちゃんも載る?」


「う、楽しそう⋯⋯でも、え、遠慮します!」


「真っ当?⋯⋯訂正を⋯いや、動物に好かれてる人やから⋯⋯まだ好青年を否定するほどでは⋯」


さて、魔守沢組の紹介は一通り終わった。


「今度はそちらの方々のご紹介をお願いできますか?」


「そ、そうやな⋯⋯それならコッチは、まずはこの子からやね。 この辺り、K市南部を担当してくれているカナちゃんや」


岡部さんは隣の小柄な女性の背を軽く押す。


「は、初めまして、南部担当のカナです。中2です」


なんと、現役少女の魔法少女とは珍しい(?)

だが、なぜか不安そうに俺たちを見回している。


「あの⋯⋯魔守沢担当のシノンちゃんとは何度か会った事があるんですけど、今日は居ないんですか? ⋯⋯もしかして、引退されたんですか?」


「シノンお姉ちゃんは魔守沢の守護でお留守番です!」


「キミコちゃんの飼い主さんはシノンちゃんさんなんですよ」


「あ、そうなんですね⋯それならよかったです。 あの、キミコちゃんはシノンちゃんのえっと、ペット? でいいの?」


先ほどとは違い、今はホッとした様子のカナさん。


「ハイ! お姉ちゃんにはごはんからウンチまでお世話してもらってます!」


お、今度はギョッとしているね。




カナちゃんとキミコちゃんが和やかに話すのを横目に、スッと、岡部さんがさり気ない動作で俺に近寄ってきた。

そして小さな声で、

「悪いゴッドくん、昨日の作戦、いったんパーになってしもうたわ」


それだけ言って、またスッと身を離した。

はて、今の言葉にはどんな意味があるのだろうか?


「さあてお次は、今日になって東京からワザワザ応援に来て下さった方々をご紹介させてもらいましょうか」


ほう、東京から?

昨日そんな話は無かったですよね?


岡部さんは2人のスーツ姿の女性たちに手を向けた。


「魔法少女組合、本部業務監督課、課長の大坪さんと、主任の腰枝さんのお二人ですわ」


「岡部さんどうも」


2人のうち、40歳代の年長と思われる女性が前に出てきた。


「ご紹介に預かりました、魔法少女組合本部業務監督課の大坪です。 今回K市南部アクトゥー集団潜伏事案合同摘発作戦に参加させて頂く事になりました、よろしくお願いします」


そしてもう1人、30歳ぐらいの女性は大坪さんより一歩引いたままで話し始めた。


「私は大坪課長の部下、組合本部主任の腰枝でございます。 皆さん、今日は課長の素晴らしいご指導のもと、アクトゥーを一網打尽にしていきましょうね」


腰枝さんの発言に、岡部さんの眉がピクリと動いた。


「腰枝さん、今日の作戦の指揮権は私に任されとりますぅ〜。 誤解を招く発言はお控え下さいねぇ?」


岡部さん、笑っていない笑顔がとても素敵ですね。


「え!? ひえッ! す、すすすみま⋯」

「あら、うちの腰枝が差し出がましい事を申しまして、ごめんなさいね。 でもね岡部さん、我々業務監督課としては、皆さんが適切な魔法少女業務に当たられているのかを見極めて、指導しなくてはいけない立場なのはご理解頂けるかしら?」


「そ、そうですわ! さすがは大坪課長! 岡部さん、主任のアナタが大坪課長に口ごたえなんて許されないのよ!」


「いえいえ、口ごたえだなんてそんな事、とんでも無いですわ〜。 監督課のご指導は当然、広域対策部の我々もありがた〜く伺わせて頂きますとも。 ですがまぁ〜しかしですねぇ、魔法がドンパチ飛び交う現場では、先任の指揮官の意見が優先される事は、大坪課長ともあろうお方ならば当然ご承知でございますよねぇ?」


「ええ、もちろんですとも。多少の提案くらいはしますが、指揮は岡部さんにお任せしますとも」


「ほんならええですわ。 ⋯⋯さ〜て、残る3人やけど」

「ハイハ〜イ!」「お待たせされ過ぎてしまいましたよ!」「フッ、主役は遅れてやってくるモノさ」


20歳くらいの3人が揃って前に出ようとし、

「ゴッドくん、コイツらは私の部下や、まとめて三馬鹿でええからよろしゅう。 ほな、作戦の概要を説明するで〜」


非常に軽くだけ紹介された。


「ちょ!?姐さんそれヒドく無いすか!?」「おーぼーやで!」「アタシらの扱い雑過ぎやろ!?」


「作戦まで時間も押しとるからな。時間余ったら後でもっかいやったるわ。 さて、皆この地図を見てくれ」


岡部さんは折り畳み式テーブルの上に作戦対象の家と周辺の道路が描かれた地図を広げる。


「これが対象の家やけれども、それぞれに注意せなアカンポイントがある。 東向きは玄関ドア。南向きに中庭と縁側、2階のベランダ。北向きは勝手口と、他の向きより窓が多い。西向きには窓が2つあるだけやが背後に交通量の多い国道へ続く道がある」


玄関は言わずもがな、ベランダや勝手口からはアクトゥーも脱出が楽だし、意表を突かれて西側の窓から国道へ逃げられれば、隠れたり通行人に危害を加える恐れもある。


「突入する玄関と複数の出入りがあり得る中庭側は戦力を厚く配置しておきたい。 勝手口側は窓が多いから飛び道具のあるヤツを配置したい。 国道側は足の速いヤツらが逃げ込む恐れもあるからコッチも足の速いヤツで抑えたいんやけれども⋯」


岡部さんはそこまで言うと、組合から来た大坪さんと腰枝さんを見た。


「昨日の時点で決めていた作戦やと、正面は私と部下3人。 国道側が足の速いトグロ、ケマリコンビ。 勝手口側が遠距離攻撃のあるシノンもしくはキミコと派遣予定やったベテラン。 中庭側は派遣予定やったベテランにカナちゃんと魔守沢組の残る1人を指揮してもらう。 ゴッドくんは正面で私の後方に付いてもろて、通信で魔守沢組との連絡、指示出しをしてもらう予定やったんやが⋯」


「ええ、理にかなった良い作戦だと思います。それでは私が中庭を、腰枝さんが勝手口側を請け負いましょうか」


と、あっさりと岡部さんの提案を受け入れた。


「はぁ⋯えらいアッサリと認めはりまんなぁ⋯⋯あッ!」


岡部さんはハッとした顔で俺と動物魔法少女たちを見る。


まぁ、そうだろうね。


おそらく組合の目的は魔守沢の動物魔法少女の視察。

キミコちゃんとおニャンちゃん、その2匹と組める配置なら文句は無いだろう。

だから、もしも2匹の代わりに人間のシノンちゃんさんが来ていたらゴネていたかもね。


岡部さんが俺を見詰める。動物魔法少女たちと組合の2人を組ませても大丈夫か?と伺っている様子だ。


「お2人は動物魔法少女と組んだ事はありますか?」


俺は組合組に話しかけてみた。


「ゴッドさん、でよろしいでしょうか? その質問への答えは、組むどころか今日まで実物を見たこともありませんでした、ですね。 今回我々が来た理由は、新しく採用された動物魔法少女たちの視察なのですから」


「なるほど、当然のご判断です。 具体的にはどういった視察内容になりますか? 戦闘能力、人間との意思疎通、その辺りだとは思いますが、この大捕物の最中に出てきたアクトゥー全てをこの子たちだけに戦わせる、なんて事ではないのでしょう?」


「当然です! ペット如きが大坪課長のお手を煩わせるような_」

「いいえ、当然私たちも前に出て戦います」


「あ、え? 課長? ⋯⋯と、当然!この腰枝しっかりと戦働きを果たす所存でございましたとも!! 」


「アクトゥー討伐が第一の目標であるからには、それがおろそかになる様なマネは出来ません。 作戦を優先して戦い、その中で動物魔法少女たちを見極めます。 その程度の器量は持っていますから」


「そ、そうです! さすがは大坪課長! ステキ!!」


「腰枝さん、貴女もやるのよ」


「は、ハイぃ!!」


ふむ。 大坪さんの態度を見る限りでは信用できそうだ。 腰枝さんもしっかりと釘を刺された様だし、預けても大丈夫かな?


「分かりました。 キミコちゃんはとても素直な子なので、腰枝さんは作戦前によく話して連携して下さい。 おニャンちゃんは気まぐれですが、理のある提案には乗ってくれる賢い子なので、使い所を上手く見極めて下さい。 それでは岡部さん、後はお願いします」


「おう! 後は突入のタイミングやけど⋯ディカ? アクトゥーたちの動きはどうや?」


岡部さんがワゴン車を振り向く。

コチラに向いたドアが開き、その中には妖精のディカと目標の家を映す魔法の映像がいくつも浮かんでいた。


「おう岡部ぇ。 奴さんらの動きは今のところ全て想定の範囲内だ。 あと一匹、10時前に戻る予定のヤツさえ家に入れば、楽しいガサ入れセットの完成だぜぇ」


開いたドアの反対側、何故か取り付けられているブラインドを腕でシャッ!と広げ、その向こうにある目標の家を鋭い目で覗くディカ。

傍らには食べかけのアンパンと紙パックの牛乳、昨日とは違う渋い言動と合わさり、まるでベテランの刑事さんみたいだ。


岡部さんが腕時計を見る。 時刻は9時30分。


「それじゃあ、後はそれぞれの受け持ちで話す時間にしよか? 特に中庭組と勝手口組は連携の為に戦い方を擦り合わせるんやで」


「魔守沢組には今から俺が無線機をセットしていくけど、構わず打ち合わせして下さいね」


そして各々分かれて話し合いが行われる。


俺はトグロちゃんに無線機を渡す。

使い方は既にレクチャー済みなので手早く済ませて次へ。

少し寒そうなので2匹の上からカイロを沢山貼り付けたコートをかけた。

そのシルエットは傍目から見れば巨大な鳥足人間にも見え、新たな都市伝説になりうるポテンシャルを感じる。


「ぬくもりてぃー充填」


これで俺が居なくてもヌクヌクだ。他の2匹にもかけてあげようか。



勝手口組のキミコちゃんに無線機とコートのセットをする。


「ヒマワリの弾ってどのくらいの威力なんですか?」


腰枝さんがキミコちゃんの魔法を確認している。


「1個で撃つと缶コーヒーを貫通するくらいで、2個なら2倍よりもちょっと強くなって、正確には分かんないですけど、一度に撃つ種は増えるほど強くなります!」


「おお⋯⋯使えますね⋯⋯ちなみに今口の中に何粒入ってるんですか?」


「う〜ん、このくらいだと(ボヨンボヨン)⋯3万粒くらいかな?」


「ガトリング砲!?」



キミコちゃんのセッティングを終わらせて、最後は中庭組のおニャンちゃん。


「私はシノンちゃんから教えて貰ったビーム魔法が得意です」


「それではカナさんは後ろからの援護をお願いしようかしら? おニャンさんは⋯あ、貴女!? 女の子がスカートで大股開くなんて、はしたないわよ!」


「女? 何言ってるのにゃ?」


「おニャンちゃん、脚閉じよ。ね?」


「カナも何なんにゃ⋯みんなケットと同じ事言うのにゃ」


「まったく⋯⋯ケモノだからと言って、魔法少女に成るならそれ相応の品性と恥じらいを持って欲しいモノです」


おニャンちゃんは去勢された男の子なんだけれども⋯⋯まぁ、あえて言わなくてもいいか。



魔守沢組のセットを終え、正面玄関組へ合流する。


「働き者やねゴッドくん。 ⋯さっきはいろいろと悪かったね、ありがとう」


「いえいえ、世の中しょうがない事もありますから。 それに結果的にですが、作戦もほぼ変わらなかったですしね」


「そうやね、私ら玄関組は元の作戦と変わらず、ツバキ、アヤメ、ボタンがドアのノック、私が後ろでカバー、ゴッドくんは私らと他3辺の連絡を任せる」


ツバキ、アヤメ、ボタンとは、先程岡部さんが雑に三馬鹿と紹介した部下の女性たちの事だ。昨日名前だけは聞いていた。


「残りの時間で軽く自己紹介のリベンジなどいかがでしょうか?」


「ん? ん〜、まぁ、ええか。お前ら、ゴッドくんにお行儀良く自己紹介しときや」


「おお! 待ってましたよ!」「チャンスは再び巡るモノ!!」「姐さん、仮面の下はイケメンって信じますよ!!」


さあ、これから三馬鹿さんのめくるめく自己紹介が始まる、と、思われたそのタイミングで


「岡部ぇ! 来たぜ、奴さんがよぉ⋯⋯」


ディカがターゲットの来訪を告げた。


「ようし⋯⋯総員、変身して持ち場へ着いてくれ」


9時55分。

いよいよ、魔法少女たちのガサ入れが始まろうとしていた。


「「「またアタシらの自己紹介が!?」」」


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