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元引きこもりが強箱スキルで異世界勇者っ!!  作者: 大石次郎


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30話 王都の依頼

俺達が教練中、各地の異変は急拡大!


野生のモンスター全般の活性化、強壮なアンデッドの出現、封じられた魔物の解放、魔族との契約による入れ替わり現象等の様々な災い。


タンダ地方だけでなく、世界中で発生しだしていた···


「さて、と」


俺は新装備の確認をする。どっちも銀製の、額当てと着脱式バックラー。ワイアーム皮の鎧とブーツだ。予備武器の手槍は10本。クロスボウ用に通常矢とは別に銀矢も20本揃えた。


リリンとユミィは元々装備が仕上がっているから変更ないが、ミゼヤッポは手裏剣と鎖鎌を銀製にして、クナイも鉄製に格上げした。


ミゼヤッポに関しては工作玉(こうさくだま)の類いも買い込んでたな。


「ほな、行こか?」


「ソウデスネ」


ずんぐりしてるが小型のウッドゴーレムを連れてるリリン。俺とユミィも作るの手伝ったやつ。


俺達はタンダ・シュノー市に1基だけある結構大きな転送門(てんそうもん)の前に着てきた。


利用料が高いが、行先が遥か遠い王都となればコストも許可申請もハードル高いヤツっ。


「転送代に見合う活躍をしてくれよ? 私の首が飛んじゃうからな、ハハっ」


ギルマスのフガク・ヅチ氏も見送りに来てくれていた。


「私の8割の力を打ち払った程度で油断しないようお気をつけ下さい。タケル様」


今回の教練でも世話になったけど、ずっとこの感じなランダンさん。いやランダンコーチか。


「了解ッス···」


「魔物の勢力が各所で増しています。タンダ地方をしっかり守って下さいっ。わたくし達も王都で頑張ります!」


「王都にはこの国の美味しい物が集まってそうだぞ? むふふっ」


異変は護りの硬いはずの王都でも続発していた。勇者職抜きでもすっかりタンダ地方で名が知れてしまった俺達は、この地方のギルドから数隊選ばれた代表隊の一隊として、王都に飛ぶことになったワケだ。


「じゃあ、行ってきます!」


俺達は転送門の運営員達に促されるまま、陣の中央に移動して、転送に備えた。


起動する陣! 思ったより強力な魔力の発動っ!


「おおぅぅっっ??」


「慣れませんね。酔いますよ? コレ」


「うち、コレ好きなやねん。ドゥンっ! なるの、好き」


「どぅん、トハ?」


「さっき食べたヌードルが出ちゃうぞっ?!」


俺達は魔力の光に呑み込まれていった···


_____



リリンとゴーレム以外は転送酔いでちょっとヨレヨレになってしまったが···俺達は王都には多数あった転送門の1基から降り、大き過ぎる建物内で出口がどこか戸惑いつつ、どうにか正面出口から出れた。


「ふぁ〜〜〜···いや遠いね?!」


そう、王都の転送門の建屋は王都郊外の高台にあった。めちゃくちゃ発達してそうな港街は丘を下った遥か向こうだ。


「外敵に利用されたり、転送門自体の事故への備えです。長距離転送には膨大な魔力が必要なので」


「オイラ、空蝉で近くならテレポートできるんだぞ?」


「部屋から庭に出れるか出れないかくらいやん?」


「んだよぉっ」


俺達は、高台でわちゃわちゃしててもしょうがないから乗り合い馬車の駅があったから、乗り込み、市街地を目指した。


同乗したのは行商や学士、階級の高そうな衛兵2名だった。


衛兵とは情報交換したかったが、疲れ切った様子で『話しかけるなオーラ』が凄かったので断念っ。


「高っ。王都、物価たっかぁ〜」


「動く絵映えしそうなスィーツが多いんだぞ? 映える〜」


リリンはミゼヤッポとゴーレムが魔力で立体表示させた王都の動く絵付きの観光ガイドを読み込み、ユミィは黙ってクエスト候補の都に異変資料の読み込みをしている。


俺はゆるゆる下る外の景色を見ていたが、最近ようやくまた見るようになった神様メモをそっと開いてみた。


『子爵の娘や、あの子みたいな慮るべき相手と相対することも想定されるよ?』


俺はメモを閉じて収納ポーチにしまった。


辛いな、主人公ポジ···


_____



冒険者ギルド、スエリィーア王国本部メル・スエリィーアギルドの建物は完全に『城』だ。


まぁここの王城や大聖堂はもっと凄いだけど、タンダ・シュノー市のギルドの時点でデカ過ぎだろ? と思ってたからこうなると感覚がバグる感じだ。


思わずミゼヤッポと2人で呆けてしまったが、


「とにかく受付にゆきましょう。タンダ・シュノーのように簡単に上へは取り次げないでしょうし」


「タケルもちょっとは受付と話しや?」


「うっ」


リリン監督に促されたりもしたが、俺達は受付を済ませてから、最上階の奥間のこの国の全冒険者ギルドを束ねるグランドマスターの執務室に向かった。


「来たね。四角く生成させたバインドを操り、ノッキングで炸裂させるスキルを我流で編み出した天才魔法兵、こと、当代の勇者殿!」


待ち構えていたのはこの世界でも珍しい腕が多数ある、この方は左右2本ずつある多腕族(たわんぞく)の妙齢の女性だった。力強い仏像みたいに完璧に身体を鍛えてる!


秘書官? はエルフ族の魔法使い風の男性だった。


「た、タケル・キャンデですっ、タンダ・シュノー支部より派遣されました!」


直立不動っっ。


「あたしはアビ・ザカンデ。この国のグランドマスターだよ?」


不敵に笑うグランドマスター、ザカンデさん! 資料によればレベル77の戦士職だっ。強!!


「活躍は聞いてる。ところでタケル殿、海は好きかい?」


「海?」


そう海、小2の時、親に連れて行ってもらったが、貧弱過ぎて日差しに耐えられず、ずっとパラソルの下で体育座りしていた思い出なら、ある。


んがっ、グランドマスターに話を振られた3日後、


「シャアアァァッッッ!!!」


王都近くの海辺の洞窟の川のように流れる地下水脈の上をっ、俺はライトの魔法を付与した大河のカトラスを頼りに、ウーシエと魔法道具の飛行絨毯で全速で飛んでいた!


背後から迫る歳経た海蛇龍エルダーシーサーペント!!


「ウーシエ! なんか火でバーンっ、て撃退してくれっ!」


「君っ、勇者でしょ?! 突っ込んで倒したらっ?」


「魔王軍幹部だろっ?」


「幹部じゃないよ! 実行部隊長くらいだからっ」


「シャアアァァッッッ!!!」


船齧れそうな大口で噛み付いてくるエルダーシーサーペント!!


俺の箱とウーシエの炎で勢いを削いでも止め切れず、俺はウーシエを抱えて飛行絨毯から反射箱で跳ねて飛び降りた。


引き裂かれる飛行絨毯。龍の左目を炎で炸裂させるウーシエ。


「ジャアッッ??!!!」


龍が仰け反り炎上する中、俺達は地下水脈に落ちた。水中でウーシエと向き合う。


再契約で? 今の彼女は温かくなっている。


またメモで怒られる。俺は一瞬、そんなことを考えていた。

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