第二十四章
指定した場所にゴーチエと馬車はあった。
ただ、ゴーチエは銃を抱いて御者台で眠っている。
もし悪意あるものが来ていたら、彼もただでは済まなかったろう。
全てルナの我が儘なのだ。
「ごめんなさい……」
ルナはいびきをかくゴーチエに謝罪すると、肩を揺する。
「ゴーチエさん、ゴーチエさん、起きて下さい。ゴーチエさん」
「う、ううん?」
ゴーチエは目を覚まし、強ばる身体をほぐすように両腕を上げた。
「あ、何だお嬢さんか……もう明るいじゃないか」
「思ったより、時間がかかってしまいました」
「そんなことは良いんだ。何も起こらなかったかい?」
自分も危なかったのにルナを案じてくれるゴーチエに、彼女は一瞬泣きそうになる。
「……はいゴーチエさんの銃のお陰です」
「それは良かった。じゃあ、馬車に乗りな。早速送って行こう」
だがルナには言いにくいが、言わねばならぬ事があった。
「……ゴーチエさん。今日の夜もまたこに用事があります。ですが、また馬車を出してもらうとゴーチエさんも危険になるので、馬を夜、一頭貸して下さい」
「バカを言っちゃいかん」
ゴーチエの眠たげな目が、一瞬ではっきり見開く。
「あんたみたいなお嬢さん一人を、夜に出歩かせるなんてオレには出来ん。ここまでだが今日も送るよ」
「ですが……」
ルナは躊躇した。
馬車は高価な物だ。特にこの四輪箱型馬車、クーペは馬共々貴重で、欲しがる輩も多い。
今夜無事だったのは奇跡だろう。
「では、夜にここまで送り、今の時間に迎えに来て下さい」
「いや、だが」ゴーチエはむっつり考え込んでいる。
「その場合……あんたを残していくことになる。もしもの時に逃げられない」
「大丈夫です」
ルナは腰のベルトにある、先程渡された拳銃を示した。
「これがあれば問題ありません」
「……そうかなあ、しかしなあ」
「ほら、今日も無事だったじゃないですか。私は逃げ足が速くもあります」
「うーん」尚もゴーチエが渋っているようだが、ルナは急いで結論を述べた。
「ですから今日も夜、ここまでお願いします。そして朝にこの馬車に来て下さい」
「……あんたがそこまで言うなら」
「ありがとうございます」ゴーチエが考えを翻す前に、ルナは馬車に乗り込んだ。




