八百二十九話 驕りが招いた結果
(うわぁ~~~~……あの武器、ヤバいわね)
ハヌーマとの戦闘中、アラッドだけではなく、ガルーレもスティームとハヌマーンとの戦闘が気になり、チラ見していた。
「「ウキャオッ!!!!」」
「よっ、ほっ、せい!!」
当然、その隙を見逃すハヌーマではないのだが、ガルーレは前回の冒険で立体感知のスキルを獲得したため、姿が見えていなくてもハヌーマの攻撃を躱し、カウンターを決める。
(あの連続突き、私みたいな素手をメインにして戦うタイプからすれば、最悪の攻撃ね)
腕を引くという動作を必要としない突き。
しかも、突くために一度棒を戻すタイミングは自由自在。
近づこうにも近付けず、非常に苛立ちが溜まる。
仮に無理して接近しようとすれば、どういった反撃を食らってしまうのか……猪突猛進タイプのガルーレも、それは解る。
(それにしても、良く使いこなすわね)
一見、優秀なマジックアイテムのお陰で敵を近付けさせず、自分だけ攻撃を行えている様に見えるも、ガルーレはそうではない事を見抜いていた。
仮にハヌマーンが適当に連続突きを行っているのであれば、スティームの予測と速さで掻い潜り、接近して雷斬を叩き込むことが出来る。
(私にはあぁいう攻撃方法がないし、羨ましいわ、ね!!!!)
「ウギョっ!!!???」
スティーム対ハヌマーンの戦いを気にしながらも、自分がハヌーマと戦闘中であることは忘れず、きっちりカウンターで蹴りをぶちかまし、首骨をへし折る。
(にしてもあの白毛ボス猿……スティームの斬撃刃を声だけでかき消すって、どんな声してるのよ)
ガルーレはハヌマーンが一瞬だけ息を吸い込む動作が見えていたため、驚くことなくハヌーマの動きに対応出来た。
(それにしても、スティームは中々赤雷を、使わないわね)
ハヌマーンに接近することに成功したスティームだが、そのまま強化系スキルの発動と、普通の雷を纏う強化しか行っていなかった。
ガルーレは自分たちの中で一番冷静なタイプであるスティームであれば、隙が生まれた瞬間、直ぐに赤雷を使用して仕留めに掛かると思っていた。
だが、そうはしなかった。
ガルーレの眼には、まるで自分やアラッドの様に強敵との戦いを楽しんでいるように見える。
(あのガルーレが、楽しみたいと思えるほどの、モンスター…………はぁ~~~~~、本当に羨ましい!!!!!)
あの時、じゃんけんで負けてしまった自分が悪い。
そんな事は百も承知であるガルーレだが、それでも悔しいものは悔しく、現在スティームが戦闘中のハヌマーンと戦えない悔しさをハヌーマにぶつけていく。
すると……当然と言えば当然だが、アラッドとガルーレだけではなく、クロとファルもハヌーマ戦っているため、徐々に徐々に……確実にハヌーマの数が減少していった。
「疾ッ!!!」
「ウキャオッ!!!!」
ガルーレがスティームを羨ましがっている頃、彼らの戦いは更に白熱していた。
持ち前の速さと、ここ最近更に磨きがかかった技術力で攻めるスティーム。
対して高い身体能力と身軽さ、多才な技に伸縮自在の棒を操り、猛攻を防ぎながら反撃を行うハヌマーン。
(ぐっ!! ……このままだと、不味いね)
戦況は今のところ互角ではあるが、スティームの斬撃がハヌマーンの棒によって防がれてしまうと、確実にガードされてしまう。
最初は伸縮自在、伸び縮みする動作に魔力を消費しない。
ハヌマーンが操る棒のそういった効果に意識が向いていたスティーム。
しかし、連続突きを乗り越えて接近戦を始めてから、その頑強さに不味さを感じ始めた。
このまま自身の双剣とハヌーマの棒が何度もぶつかり合えば、双剣が持たない。
そんな嫌な予感がしたスティームは、ある種の傲慢さを捨てた。
(どうにかして、距離を取らないといけないね)
今現在、スティームは赤雷を使っていない……だけではなく、雷獣の素材をメインにして造られた双剣、万雷ではなく、今まで愛用してきた双剣を使用していた。
質は決して低くなく、スティームの得意属性である雷属性の効果が付与された双剣。
以前のスティームの戦闘力を考えれば、相応しい武器と言える。
しかし……アラッドと出会ってからスティームは確実にレベルアップしており、尚且つ……現在戦闘中のモンスター、ハヌマーンはこれまでスティームが遭遇してきた敵の中でもトップレベルの強さを持っている。
戦闘力では、間違いなく先日ウィラーナ周辺の雪原で遭遇したブリザードパンサーを上回っていた。
加えて、ハヌマーンが扱う棒はスティームの想像していた以上の硬度を持っている。
(……僕の驕りが招いた結果だ)
使用する時は、ハヌマーンがほんの少しでも隙を見せた瞬間。
そう決めていたスティームだったが、ほんの数瞬だけ……纏う雷を通常の雷から赤雷に変えた。
「っ!?」
「ふぅーーー……ごめんね。直ぐに、続きを始めよう」
当る。
もしくはガードされるか、紙一重で躱されるか。
そう思って振るった棒は空を切った。
結果は紙一重の回避ではなく、超余裕の回避。
しかも、本能が警鐘を鳴らす。
審美眼などなくとも、脅威は感じられる。
「ウキャッキャッキャ!!!」
その脅威を感じ取った上で……ハヌマーンは笑った。




