八百二十五話 解り辛い武器?
「ヌゥアアアアッ!!!!!」
「ゴアアアアアッ!!!!!」
探索を始めて数時間。
アラッドたちはまだ目的のハヌマーンどころか、ハヌーマとすら遭遇出来ていなかった。
だが……現在モンスターと戦闘中のガルーレは、非常に楽しそうな笑みを浮かべていた。
「………………アラッドも同じことをするんだろうけど、よくやるよね」
「馬鹿だと思われるかもしれないが、俺やガルーレは……そういった性なんだろうな」
現在、がルールはフォレストコングというCランクモンスターのゴリラと戦っていた。
勿論ただ戦うのではなく、パンチにはパンチで返したりと、戦いというよりは力比べをしていた。
「フォレストコングを相手に……骨が砕けたら、とか考えないのかな」
「……単純な力比べが楽しいというのと、そこに関しては特に頭で考えずとも、体が勝手に考えてると思うぞ」
「そういう、事かぁ…………でも、フォレストコングは決して楽な相手じゃないよ。オーガやトロールの様に一発一発を全力で叩き込むだけじゃなくて、頭も使って戦う」
「そうだな。あんなパワープレイが出来るのに、割とそういうところがある」
過去に何度かゴリラ系モンスターと戦ったことがあるため、スティームの言いたい事は良く解る。
(確か、ゴリラは森の件じゃと呼ばれてたんだったか? いや、それはフクロウだったか??? ………………俺の記憶がバクっていなければ、ゴリラも森の賢者、賢人みたいな二つ名を付けられたはずだ)
フォレストコング……名の通り、まさに森のゴリラ。
森や密林などで戦うことは非常に慣れており、木に捕まって一回転して蹴りを叩き込むなど、器用な動きもする。
「でも、ガルーレはその辺りも解って戦ってる筈だ」
「だと良いんだけど…………」
ガルーレとフォレストコングの戦いが始まってから既に数分が経過。
フォレストコングとパワー勝負をしていれば、そろそろ体が悲鳴を上げ始める。
いくらガルーレが見た目以上に頑丈な体をしているとはいえ、フォレストコングは見た目通り頑丈で屈強な体の持ち主。
(でも、ガルーレの場合なぁ……)
そろそろ肉体にダメージが、疲労が溜まってきてからが本番。
「せりゃッ!!!!!!」
「ッ!!!!!! っ!!??」
ガルーレが意識せずとも、一定のダメージが蓄積すれば、切り札であるペイル・サーベルスが発動する。
拳にはところどころ内出血しており、骨には罅が入っている。
時折フォレストコングは器用に蹴りも放ち……ガルーレはそれにわざわざ応えるように、蹴りで返していたので、脚にもダメージが蓄積されていた。
「破ッ!!!!!!!!」
「ゴバっ!!!!!????? ッ、ァ…………」
そして超強化されたがルールの攻撃によって、今度はフォレストコングの拳が砕かれた。
両手の骨を破壊され、最強の武器が失われた。
そんなフォレストコングに死体撃ちの様な真似をすることはなく、最後に胸部に向かって拳を叩き込み、心音を停止させた。
「ぷは~~~~~~~。いやぁ~~~~、良い戦いだったね」
「相手がCランクのモンスターとはいえ、見ているこっちは少し冷や冷やしててたよ」
「ごめんって~~。やっぱこう、見るからにパワータイプのモンスターじゃない。だったら、力比べしてみたくなるものでしょ」
「…………アラッドの言う通り、本当に君たちはそういう性なんだね」
解ってはいても、ほんの少しため息が零れるスティーム。
「……………………」
「? どうしたんだい、アラッド。そんな悩ましい顔をして」
「いや、そういえば、ゴリラ系のモンスターって、また別の武器があったなと思って」
「えっ!!!??? もしかしてこいつ、私に手加減してたってこと!!!!????」
まさかの情報に、ガルーレは驚きと怒りが同時に湧き上がる。
私を相手に、手加減していたのかと。
生死が掛かった戦いで、手札を全て晒さなかったのかと。
ただ、アラッドはそこに待ったをかけた。
「落ち着け、ガルーレ。えっとだな……まず、俺がフォレストコングとかのゴリラ系モンスターが持つ他の武器っていうのは、握力の話だ」
「手で掴む力よね」
「そうだ。ゴリラ系モンスターはそれが優れてるんだが…………同時に、パンチの威力も優れている。どちらも優れた武器だからこそ、フォレストコングは自分の武器がパンチ以外にもあると気付かなかったのかもしれない」
そもそもパンチは解りやすい攻撃方法ではあるが、握力というのは少々武器としては認識しづらい。
(そういえば、若ヤクザの頭が破壊力は体重とスピードと握力が大事って言ってたか…………フォレストコングはゴーレムほど遅くはないが、決して素早くはない。スピードが無ければ、相手を掴んで握力の高さを武器として発揮するのは難しいか)
仕方ないよな~~~と勝手に納得するアラッド。
しかし、実際にフォレストコングと戦ったガルーレにはモヤモヤが残った。
「ガルーレ、フォレストコングはアラッドの言う通り、本当に把握してなかったんだと思うよ。じゃなかったら、このまま戦い続ければ死んでしまうという状況で、持ってる手札を全て使わないという選択肢はあり得ないよ」
「そうかな~~~~…………まっ、それもそっか!!」
スティームの言葉もあり、ガルーレは直ぐに頭を切り替え、意識をこれから遭遇するモンスターへと切り替えた。




