千三百七話 終わらせよう
SIDE 投擲男
(少しは油断すると思っていたんだが……思ったよりも俺の情報……存在が向こうに伝わっているのか?)
投擲男もナスバーと同じく、可能であればギーラスという青年騎士を仕留めてほしいと命を受けていた。
一部の者からは、ドーピング丸薬を使用したナスバーを利用してでも仕留めろと言われていたが……投擲男はさすがに受け入れられなかった。
ナスバーと特に交友関係があるわけではなく、なんなら喋ったこともない存在。
だが、それでも同じ陣営の同士として戦う存在を生き盾として扱い、功績をかすめ取るような真似はしたくなかった。
その判断に……後悔はない。
それでも、標的やその周辺にいない者たちを一人も仕留められなかったという事実は、投擲男のプライドを傷つけるのに十分な結果だった。
「おいおい、大丈夫かよ?」
「……大丈夫ではないな…………ふぅーーーーー。仕方ないか」
「仕方ないって……おい、そういう事か?」
投擲男の存在がアルバース王国側に知れたと想定し、ゴリディア帝国は彼の傍に腕利きの冒険者を配置していた。
「あぁ、そういう事だ。連絡と援護を頼む」
「はいよ。ちょっとだけ待ちな」
護衛はアイテムバッグから通信用のマジックアイテムを取り出し、通信が可能な者たちにあるメッセージを送った。
この世界では珍しく、使い捨てタイプではない文字を送信できる使い捨てのアイテム。
しかし、遅れる文字の数は限られており、尚且つ魔力の消費量が少々多く、割に合わないと感じる者の方が多い。
だが、事前に単語に含む意図を共有していれば、一応使えなくもないマジックアイテムである。
護衛が送った文字は……跳ぶ。
「っし、大体十秒後に跳んでくれ」
「分った」
実際に先日戦果を挙げており、ゴリディア帝国としても投擲男は重要な戦力。
彼を失う訳にはいかないため、彼が跳んだ場合は護衛の冒険者だけではなく、その他の実力者たちも彼を狙撃するかもしれない攻撃から守らなければならない。
「ふっ!!!!!!」
大跳躍した投擲男。
彼は長距離から獲物を狩るための眼も持ち合わせており、自身の投擲をなんとか耐えて撤退したギーラスたちの位置をある程度把握していた。
基本的な投擲であれば、確かに届かない。
しかし、上から放つ投擲と……技が重なれば、その距離は決して安全地帯とはならない。
「破ッッッッッ!!!!!!!!!!!!」
投擲男が投げた槍は、爆裂竜という火属性の中でも非常に珍しいドラゴンの素材を利用した……使い捨ての槍。
Bランクドラゴン牙や爪を鏃に利用した矢、よりも一度に捨てる金額が大きい貴重品。
投擲男の切り札とも言える武器である。
加えて……投擲スキルの中でも火力だけならば最大級の技、竜星を発動。
戦場に放てば、家庭次第ではあるが纏めて百人以上……下手すれば数百人規模で一気に数を削れる一撃。
(これで、殺れるだろう)
ゴリディア帝国の読み通り、跳躍した投擲男に攻撃魔法や剛矢が放たれるも、事前に準備していた猛者たちの遠距離攻撃によって防がれた。
竜星が着弾すれば、間違いなく……ギーラスたちの負傷、もしくは死が確実なものとなる。
「なッ!!?? くっ!!!!!!!!!!!」
「「「「「「「「「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」」」」」」」」」
だが、竜星がギーラスたちの元へ届く前に、一つの岩石による大斬が放たれ……宙で大爆発が起きた。
爆裂竜の素材を使用している性質上、使い捨て槍は一定以上の衝撃を受けてしまうとその場で爆発してしまう。
とはいえ、並みの攻撃であれば当たったとしてもそのまま粉砕してしまい、地面に着弾してようやく爆発する。
しかし……巨岩の斬撃による衝撃は決して並ではなく、竜星の威力に負けていなかった。
「はっはっは!!!!!! やや押し負けたか。まぁ、空中で爆散させられたのだから、及第点と言ったところだろう」
マジックポーションを煽りながら戦場に現れたのは……片手で大剣を持つ騎士だった。
「ろ、ロードス団長」
「お前ら、ちゃんと生きてるか?」
「は、はい!!!!!!」
爆発の威力は尋常ではなく、岩石斬も爆散したことで大量の岩が降り注いだものの、そこら辺は自力でなんとかした騎士たち。
「ろ、ロードスって」
「ま、間違いねぇ……向こうの、大将だ」
「ば、バカじゃねぇのかっ!!!!!!??????」
他国の人間とはいえ大将に……騎士団の団長に向かってバカとは如何なものか。
そうツッコまれそうだが、ゴリディア帝国の騎士や兵士たちと同じく、アルバースの者たちも大半は「なんであんたが最前線に出てきてるんだよ!!!!!」と、心の中でツッコんでいた。
「はっはっは!!!!! バカで構わねぇぜ。だって……このまま勝利を掴みに来たんだからな」
そう告げると……大剣が超速で振り払われた。
「「「「「「「「「「……っ!?」」」」」」」」」」
次の瞬間には多くの兵士や騎士たちの胴体が切断されていた。
「さぁ、もう今日で終わらせようじゃねぇかッッ!!!!!!!」
今度は剛力による斬撃が振るわれ、大勢の木っ端たちが吹き飛んでいく。
前線で戦う者たちを思ってか……それ以上後方で大将面しているのに疲れたから最前線に出てきたのか、それはロードス本人にしか解らなかった。




