千二百二十七話 二部屋で
「……なんだか、思っていた以上に活気がありますね」
「そうだな」
「あぁ……少し、意外だ」
三人がスパリガに訪れて初めて抱いた感想はそれだった。
思っていた以上に、街全体に活気がある。
それが悪い事でない。
寧ろ、彼から戦争が始まるというのに、お通夜の様な雰囲気になっていれば、戦場へ向かう者たちの士気も下がるというもの。
それを考えれば、寧ろ活気があるのは良い事なのだが……だとしても、スパリガを包む活気は三人にとってあまりにも予想外の熱さだった。
「有名どころの騎士団長がいるのかもしれない」
「なるほど……そうでなければ説明が付かないな」
「騎士団長だけではなく、似た様な立場の冒険者たちもいそうですね」
強者が集っている。
ゴリディア帝国との戦争を、勝利に導いてくれそうな猛者たちが大勢いる。
となれば、これほどが活気がある……お祭り騒ぎな雰囲気も理解出来るというもの。
「とりあえず宿を探そうか」
「ですね」
街中で、もしくはギルドのロビーで寝るということも出来なくはないが、戦争中とはいえ……バカな事を考える者がいないとは、断言出来ない。
「ごめんなさなね、もう満席なの」
「すまんな。全て埋まっている」
「悪いね~~~、もう一杯一杯で」
「「「…………」」」
三人ともある程度早めに来たつもりだったが、悉く満席だと断られてしまう。
「ふむ……仕方ないか。二人とも、金は持っているか?」
「多少は」
「お、俺も多少は」
「そうか、良かった。では…………あちらの方へ向かおう」
ディーナが指を刺した方向は、富裕層向けのエリア。
ディーナは両親の仇を討つため、強くなろうとモンスターと戦って戦って戦い続けていた。
両親が冒険者だったこともあり、剥ぎ取りの腕も一級品。
武器の買い替えは何度もあれど……それ以上に稼ぐ金額の方が多かった。
オルフェンは基本的に金遣いが荒くなく、いざとなれば獣心を解放することで、武器を消耗せずモンスターを討伐することが可能。
クラートは……一時まで生活に困ることはないが、貯金の額が大金と呼べる金額ではなかった。
しかし、新しい武器や防具を得たことで武具の消耗が一気に止まり、そのお陰で着実と貯金額が増えていた。
「…………ぎ、ギラギラ、してるな~~」
金の準備は、そこまで心配はしていない。
ただ、裕福層たちが訪れるエリアの雰囲気に、あまりにも場違い感を感じていた。
オルフェンも得意な雰囲気ではないが、気にするだけ無駄だと割り切っていた。
「……ここにしようか」
ディーナが選んだ宿は、当然従魔が泊れる宿だった。
「二部屋ですね。空いてますので問題ありませんよ」
従業員に声を掛けると、即座に案内された。
ディーナとしては三人部屋を取り、三人で泊っても良かったのだが、二人から止められた。
クラートは元気がある好青年。
オルフェンはやや陰鬱とした雰囲気を持つ青年。
雰囲気は異なるものの、純粋そうっといった点に関しては同じ見え方をする二人。
だが……彼らはしっかりと男性、男の子である。
鬼人族であるディーナは鬼人族らしく、女性にしては細身ではなく確かな筋肉が付いている。
人によっては好みのタイプではないと断言する者もいるだろう。
身長もそれなりに高く、どちらかと言えば好まれにくい部分が多いものの、しっかりと出ているところは出ており、引っ込むべきところは引っ込んでいる。
加えて、顔はそこら辺の美人よりも美人。
これまた、人によってはキツイと感じる者もいるが……二人はそうとは思わないタイプ。
そのため、そんな男の本能を刺激される女性と共に臨時パーティーを組むのはともかく、がっつり同じ部屋に泊るというのは、色々と困るものがある。
「さて、これからどうする?」
「せっかくですし、スパリガを見て周りませんか」
「ふむ……この熱気の中だ。寧ろこの機会だからこそ見て周るべきか。オルフェンはどうだ」
「俺は…………まぁ、それでも構いけど」
あまり賑やか過ぎる雰囲気は得意ではないものの、ディーナの言う通り今の熱気がある機会だからこそと思い、クラートの提案に乗った。
「夕食までには時間がある。少しつまもうか」
裕福層エリアを抜け、大通りへと移動。
夕食まで数時間以上あるため、三人は露店の飯を摘まみながら観光。
戦争が始まるタイミングというころもあり、値段は少々高めの設定。
それでも、三人ともどうしてそうなっているのか理解はしているため、特に文句をぶーたれることなく購入。
「………………」
「? 私の武器が気になるのか、オルフェン」
「少し。メインの武器はロングソードだけど、前から他の武器も気になり始めて……ディーナが持ってるそれは、見たことがないなと思って」
「そうか。これは薙刀という武器だ。槍の親戚…………いや、槍と刀の子供か?」
「……なんとなく理解した」
「それは良かった。万能タイプのアタッカーになりたいのか?」
険しい道のりではある。
だが、それが出来る人物を知っているからこそ、ディーナは無駄な努力になるとは言わなかった。
「……そこまで、しかっかりした形ではないけど……なんて言えば良いのかな。武器は敵を倒す為の道具、っていう感覚が強くなってきて…………必ずしも、それはロングソードである必要はないんじゃないかと思えてきて」
オルフェンが真剣に説明してくれているのは、解る。
ただ、ディーナとクラートも理解出来なかった。
そんな中……ディーナの従魔であるブローズだけが、なんとなく理解していた。




