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【コミカライズ進行中】スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす  作者: Gai


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千百九十四話 伝えずとも

「お、おい」


「や、やべぇよ」


「だよ、な……あれは、普通じゃねぇよ」


ゴリディア帝国側の冒険者たちからも、先程木竜に挑んだ騎士は、自分たちよりも強いと……確かな実力を持っていると解る男だった。


そんな男が、決死の覚悟で挑んだ。

持ってる武器の質もそれなりに高く、放った技も……技術も間違いなく平均以上。


武器の質や技術だけではなく、漢気も並ではなかった。


騎士という……あまり好きになれない存在ではあるが、それでも本能が明確に自分より上だと認めてしまう様な男。

それほどの男が、あっさりと死んでしまった。


強者だ……猛者だ……そんな認識では甘いと、冒険者たちに思い知らせた。


「ドラスさん」


「あぁ、そうじゃのぅ」


呼吸が整ったを確認し、木竜は木による結界を解除。

アッシュ、シルフィーの二人が戦場に戻った。


ただ、先程までの戦場と比べて、戦況は異なるものに変わっていた。


(まぁ、そうなるもの……ドラスさんが相手となれば、あの純粋にバカ高い身体能力に渡り合えないといけない)


文字通り、同じ土俵に立てなければ勝負にならない。


(…………本当に、凄い人だな)


アッシュは自分たちの目の前で圧倒的な実力を見せてくれた木竜と、対等な立場で関係を持つ兄の凄さに感服……そして、目の前の現状に目を向けた。


「……どうしようか」


「…………そう、ね」


アッシュとしては、単純に敵が向かって来ないのは、更に体力が回復出来て、危険も減るので有難い状況ではある。


彼よりも好戦的であるシルフィーはというと……少し、悩んでいた。


(多分……戦いじゃない、よね)


自分たちを結界で守ってくれていた間、木竜が襲いかかって来る人間たちを倒していたのは、当然の行為。

最後の騎士に関しても、果敢に立ち向かってきたからこそ殺した。


だが、目の前の戦闘者たちの足が止まってしまってからは、自身が行っているとバレないように、ユニコーン親子やラディアたち……そして同士たちの支援を行っていた。


「「…………」」


戦争という戦場で、そこまで固まっていても良いのかという時間になる。


シルフィーは……兄であるアラッドに追い付きたい。

戦争という戦場を経験することで、その兄に少しでも追い付けると思った。


アッシュのサポートを行うことはあれど、その大剣で既に幾人もの命を絶ってきてきた。


(……今更、なのかな)


シルフィーが体験したいのは戦いであり、闘争。

決して……残虐、一方的な斬殺ではない。


(…………綺麗事、なんだろうね)


闘志、意外の感情がいくつも湧き上がる。

湧き上がって、湧き上がって……解らない。


解らないから、戦おうとした。


「さっきの人は、カッコ良かったよね」


「…………さぁ、どうだろうね」


シルフィーの意図は察した。

察した上で、彼女よりも思慮深いアッシュは素直に同意しなかった。


「ただ、騎士としてあるべき姿、だったのかもしれないね」


「っっっ………………ッ、あああああぁああああああああ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!!!!!!」


騎士としてあるべき姿だった。


敵国の人間が、何を思って……何を考えて、そんな言葉を口にしたのか解らない。

だが……それでも、先程散った騎士と顔見知りだった兵士は、やけくそとも思える声を上げながらも、突っ込んだ。


「ッッッ!!!!! ゥォオオオオアアアアアアアアッ!!!!!!」


「……チッ!!!! 嘗めんじゃねぇぞクソガキ共ぉおおおおおおおおおお!!!!!!!」


そこからは、雪崩の様に止まっていた兵士、騎士、冒険者たちの足が前に前にと動き始めた。


流されたからか、影響されたからか……本気だったかは、解らない。

それでも、彼らはゴリディア帝国の戦闘者として戦った。


(では、先程までの様に戻るとしよう)


木竜は一歩下がり、戦況の変化を即座に把握したユニコーン親子とラディアたちはサイドから着実に削り、数を調整する。


(…………なんで、だろう…………言い聞かせなくても、冷静に、動ける……落ち着いて、見える)


熱くなる、もしくは心の内側を無理矢理熱くさせている彼らに対し、シルフィーの頭は非常にクリアになっていた。


「ぎっ!!??」


「がはっ!!!!!」


「なっ!!!!????」


先程まで高まる熱が爆発してしまわないよう、無茶に繋がらないように冷静に、焦らず、正確にと必死に言い聞かせていたが……その必要が、全く必要ない。


瞬時に迫る攻撃が、種類が、距離が判別できる。

どこに大剣を振れば良いのか、叩きつければ良いのか、どの攻撃は受け止めなければ、受け流さなければならないのか解る。


(不思議な、感覚。これが……いつも、アッシュの感じてる、世界?)


万能感、とも言えなくもない状態。

それを自覚するも、シルフィーは調子になることはなく、先程までの様な熱に変わることもなかった。


(……初めての、感覚、だね。何も、伝えなくても、伝わってる……同じ事を、考えてる)


自分たちが冷静で、相手が熱くなっているから。

それが一つの要因であることは解っている。


それでも、アッシュはこれまでにない戦いやすさを感じていた。


(ひとまず、目的は……果てせそう、なのかな)


戦争とはやや関係無いことを考えながらも、刺すべきタイミングで刺し、払う時に払い……隙の無い瞬間に仕留める。


シルフィーと同様、二日目の戦争が終わるまで二人はゴリディア帝国の者たちの……味方であるアルバース王国の戦闘者たちの熱にも引っ張られることはなく戦い続けた。

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