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「エラク」
「なんでしょうか?エリシュカ様?」
「今日の昼食なのだけれど、天気もいいし外でと言うのはどうかしら?」
「外でございますか?」
「えぇ、アッティラ様はお嫌かしら?」
「その様な事は無いとは思いますが」
「そう!では、どこかいい場所はない?」
「そうでございますね・・・」
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”ん?”
馬に乗り一人帰ってきたアッティラが、正面玄関前にエリシュカ、キンガ、エラクの三人が立っているのに気づき三人の前で止まり降りようとするとエリシュカがそれを止める。
「お帰りなさいませ。アッティラ様はそのままお乗りになっていてください。天気がいいので外での食事にいたしましたの」
そう言うと、近くに用意されていた三頭の馬にそれぞれ乗り、エラクを先頭に歩き出す。
”まさか外で食事とは・・・”
心の中で溜息を付きながら、この状況に逆らうこともせず大人しく付いて行くことにした。
たどり着いた先は、敷地内である小高い丘で屋敷が見下ろせ、その頂上には一本の木(モンキーポットのような木)。
皆が馬から降りると、アッティラの馬はエラクが、エリシュカの乗っていた馬はキンガが貰い、木に手綱を括り付け馬を留め置く。
「外は気持ちがいいですわね」
「そうですね。けれど、王女殿は乗馬がお上手ですね」
「ありがとうございます。実は、馬に乗るのは好きなんですの」
「ご用意が出来ました」
話しをしていると、キンガが二人に声をかける。
二人がキンガの方を見ると、木の陰の所に大きなシートを敷き、昼食などを入れてきた数個のかごを中央に置きそれをテーブルの様に使うためテーブルクロスで覆い、サンドイッチ、ティーカップなどが用意されている。
二人が向き合う様に座ると、エラクとはキンガは離れた場所に下がる。
「アッティラ様いただきましょう」
そう言いながら、カップに紅茶を注ぐ。
「ありがとうございます」
「いいえ」
「王女殿は、よくこのように外で食事をしていたのですか?」
「はい、お天気が良いと家族で外で食事をしたりしていました。アッティラ様はされてなかったのですか?」
「私は、小さい頃はありました」
「そうなのですね」
ランチ・・・相変わらず無言。
”ルーアに言われて気が付いたが、私が話しかけないのがいけないのかもしれないが、何を話せばいいのかわからん!”
横目でエリシュカを見ながら平静を装い、頭の中は話しかけるための話題を探すのにフル回転。
結局、無言のまま食事終了。
”はぁ・・・”
アッティラは心の中で大きな溜息をつく。
「外での食事は屋敷の中より美味しく感じますわね」
「そうですね」
「それでは、帰りましょうかアッティラ様」
「!?」
”待て待て待て!ここに誘ったのは誰にも聞かれたくない話しか何かがあるからとかではないのか?本当にここに食べるために来ただけなのか??”
アッティラがエリシュカの方を見ると、エラクとキンガに片付けるように言い、気持ちよさそうに背伸びをし馬を撫でている。
”嘘だろう?確かに手紙の話しなど言葉には出なかった。だが、しかし、あの話しの流れ時からすればだ、手紙に付いての話しがあると思うのが普通じゃないのか?”
「アッティラ様、どうかなさいましたか?」
片付けが終わり、皆が馬に乗る準備が整っているのにアッティラだけが考え事をしていて帰りの準備が出来ていない。
「いいえ、久しぶりに来たので景色を眺めていました」
取り繕う様に返事をすると、急いで馬に乗るアッティラ。
「お待たせしました」
「そうですわ!わたくし久々に馬に乗りましたの。せっかくですから敷地を案内してくださいませんこと?そうすれば、わたくしはもう少し馬に乗れますし、アッティラ様は久しぶりに敷地を見て回れますわよ」
”いや、言い事を思いついたように言われても・・・”
楽しそうにしているエリシュカの提案を無碍に断る事も忍びなく、小さく首を縦に振るアッティラ。
エラクとキンガは先に屋敷に帰る様に言うと、二人は屋敷とは違う方向へ丘を降りていった。