第43章 終幕(Finale) ― “天才”の終わり、“信頼”の勝利 ―
アークシステムズとぽかぽか邸。
2つの拠点からの同時反撃が重なった瞬間――
米田圭介の中枢システムが、
まるで崖から切り離されるように崩れはじめた。
画面が明滅し、
ログが乱れ、
彼が積み上げてきた“影の王国”が粉々になっていく。
「……ふざけるな……
俺が……俺ほどの天才が……
こんな……!」
怒りとも、叫びとも、
悔しさともつかない声がモニター前に響いた。
「天才は俺だけなんだよ……
俺は……俺は俺だけの力でここまであがってきたんだよ……!」
画面にコードの断片が散っていく。
自分の“王国”が壊れていく音を、彼は聞いていた。
「おまえらのように……
信頼だの……仲間だの……
そんなぬるいもの……いらなかった……
いらなかったはずなのに……!」
歪んだ表情が、ひとつの言葉へと沈んでいく。
「……なぜだ……
なぜ俺が……
おまえらに負けなきゃなんない……」
最後のログが静かに消えた。
――“影の王”は沈んだ。
◇◇◇
■ぽかぽか邸・戦いのあと
柊は画面を見つめたまま、
張りつめていた全身の力が抜けていくのを感じた。
「……終わった。」
その瞬間、
隣にいた環が、
思わず柊に抱きついた。
「……柊……ありがとう……
わたし……わたしも……狙われてたなんて……
怖かった……」
柊は驚いたように目を見開き、
次の瞬間には強く、しっかりと抱き返していた。
「……環……
守れてよかった……。
ほんとうに……。」
環は柊の胸に顔をうずめたまま呟いた。
「柊が……帰ってきてくれたから……
わたし……ずっと安心してた……
怖かったけど……
ずっと、隣にいてくれたから……」
柊の腕に、力がこもる。
「環……
俺は……おまえを失いたくなかった。
そのためなら……いくらでも戦える。」
――その光景を、
灯と結月は静かに見守っていた。
結月は小さく涙を指で拭い、
灯は環の背を見ながら微笑む。
「……よかったね、環。
守られて……愛されてるわ。」
「……うん……
本当に……守られたよ……」




