第41章 最終攻防(The Last Break) ― 追い詰められた“影”の本性、最後の罠が牙をむく ―
アークシステムズの夜は、
今まででいちばん緊張が張り詰めていた。
ぽかぽか邸では柊が、
アークシステムズでは凪と蒼真が——
米田の“急所”を同時に叩いた。
その瞬間から、流れが一変した。
◇◇◇
■米田の反撃:狂気の領域
米田圭介は、闇の中でモニターをにらみつけていた。
画面に表示されたログが、
まるで彼の怒りを映すように赤く瞬く。
「……如月……柊……
お前は……なぜそこにいる……」
ぽかぽか邸にいる柊を見て、
米田は理解した。
(——アークシステムズは“空じゃない”。
囮だ……!
柊だけ“別場所”に移した……!
その間に、凪陽翔と桐生蒼真が結界を張った……!)
「くく……
相変わらず……綺麗ごとばかりの甘い連中だ……!」
だが同時に——
米田はわずかに焦った。
(……なぜだ……
アークシステムズの反応が……鈍らない……?
なぜ、攻撃が止まらない……!?)
そう、米田が攻撃していたのは
凪と蒼真が作った “ダミー・アークシステムズ” だった。
影に潜む米田の喉が、ひとりでに鳴った。
「……凪陽翔……
お前……あのときの小僧じゃない……」
◇◇◇
■アークシステムズ側:最初の突破
アークシステムズの作業室では、
凪と蒼真が“対米田専用の攻撃”を繰り出していた。
凪は高速にキーを叩き続け、
蒼真は深層から米田のコードを削り取っていく。
「凪、次の3段階目が来る。」
「来ますね。
米田のクセ——“焦りの改変”。
ここ、甘い!」
凪は迷わず逆流コードを叩き込んだ。
――ビシィッ!
ログが大きく割れた。
「……崩れてる……
米田圭介の“中心ライン”。」
凪の瞳が光る。
「じゃあ……“奥の間”まで行きますか。」
◇◇◇
■ぽかぽか邸:柊の反撃
柊の前でもログが崩れ始めていた。
ぽかぽか邸に、米田から最後の波が届く。
——ガガガガガッ……
柊は目を細めた。
「……最後の、捨て身の反撃か。」
モニターには、
米田の“本性のコード”がむき出しになっていた。
環はその横顔を見て、胸がざわつく。
(柊……さっきより……もっと冷たい……
もっと……深い場所まで行ってる……)
環はそっと柊の隣に座り、
背中に手を添えた。
「……柊……大丈夫……?」
柊の目から、わずかに殺気が消えた。
「……ああ。
環が触れてくれるだけで……戻れる。」
「うん……わたし、ここにいるから……
必ず戻ってきて……」
その瞬間——
柊の全身の気配が変わった。
“戦闘態勢完全復旧”。
柊は怒りでも冷淡でもなく、
ただ静かに “完璧なプロ” の顔になった。
「米田。
……終わりだ。」
◇◇◇
■凪の応援が入る
そのとき、
凪からの通信が柊に届いた。
【凪 → 柊】
『柊先輩!
米田の内側、全部開きました!
こっちから“芯”を叩きます!
合わせてください!』
蒼真の声も続く。
【蒼真 → 柊】
『柊、勝負を決めるのは、おまえだ。
環さんのそばにいるのは……正解だ。
あとは任せる。』
柊は一息だけ深く吸い、答えた。
「……わかった。
こちらも“玄奥”に入る。」
環は柊の背中にそっと力を込める。
(……柊……必ず戻ってきて……
わたしのところに帰ってきて……)
◇◇◇
■米田の最期の罠
米田の攻撃ログが、不気味に歪んだ。
「……まだだ……!
まだ終わらせん……!
俺は天才だ……!
お前たちに……負けるものか……!」
画面に現れる奇妙なコード。
「先輩、罠です!
“自己破壊型ウイルス”が混ざってます!」
「動揺している……!
冷静さが完全に崩れた状態だ……!」
柊は落ち着いた声で言った。
「……なら、終わらせる。」
環は黙って見守っている。
凪と蒼真の側でも、
最終ラインの逆侵入コードが準備されていた。
◇◇◇
■最後の三重奏
ぽかぽか邸と
アークシステムズの2拠点。
そして——
環の温度。
3つがつながった瞬間だった。
柊の指が、最後の一手を叩き込む。
「——終幕だ。米田。」
――バシュッ!!
米田のシステム全体が、
まるで心臓を撃ち抜かれたように静止した。
「……決まった……!」
「これで……“影の心臓”は止まった。」
◇◇◇
■米田の敗北
米田の暗い部屋。
モニターが、ゆっくりと黒く落ちていく。
「……馬鹿な……
俺が……負けた……?
天才の……俺が……
あいつらに……
“信頼ごとき”で……?」
声が震え、笑いがこぼれる。
「……そうか……
俺は……
“仲間”の力を……
一度も……知らなかったな……」
光が、完全に消えた。
米田圭介——敗北。




