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EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―
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第10章 波紋の中心へ ― アークシステムズ、核心の調査 ―

リンクル会議室。

壁に貼られたネットワーク図、システム構成図、ログ一覧。

3人の視線が交差し、室内の空気は緊張と集中で満ちていた。


なぎが椅子をくるりと回し、モニターをたまきしゅうへ向ける。


「……柊先輩、環さん。

これ、見てもらっていいですか?」


画面には、トリガーが仕掛けられたスクリプトの断片。

昨日まで不明だった“もう1つのコード”が浮かび上がっていた。


柊が腕を組んだ。


「……手口が2種類混ざっているのは、この部分か。」


凪は頷く。


「はい。

 ここだけ“別人の癖”なんです。

 本来の仕掛けに、あとから“誰か”が手を入れてます。」


環は身を乗り出した。


「……つまり、仕掛けたのは宮野さんだけじゃない?」


「ええ。

 宮野さんのコードは、確かに綺麗です。

 構造も読みやすくて“技術の美意識”が出てます。」


柊が微かに笑う。


「つまり、“誇りのある書き方”だな。」


「そういうことです。」


凪はマーカーを取り、スクリプトの1行を指した。


「でも、ここだけ違うんです。

 ロジックの回し方が荒い。

 変数の命名も雑。

 “急いで書いたコード”です。」


環は息を呑んだ。



凪は画面を閉じながら、静かに言った。


波多野はたのさん……ほぼ確実です。」


柊の目が鋭く光った。


「宮野さんの能力を知っていて、

 その“癖”を利用した、か。」


環は手に持っていたペンをぎゅっと握った。


「……宮野さん……利用されていたんですね……。」


凪がうなずく。


「はい。でも彼女はまだ気づいてません。

 “自分が仕掛けたJOKER”だと思っている。」


柊は椅子から立ち上がり、会議室の窓際に歩く。


「波多野の目的……それがまだ見えないな。」


凪は資料をめくりながら眉をひそめた。


「犯人なら普通……

 “漏洩したデータ”を使いたいはずなんですが——

 今回はその形跡がどこにもないんです。」


環がそっとつぶやく。


「……じゃあ……

 情報漏洩は“目的そのもの”ではなかった……?」


柊が振り返る。


「そうだ。

 目的は別にある。

 漏洩は“そのための煙幕カモフラージュ”だ。」


凪の声が低くなる。


「……横領。

 それが濃厚です。」


環の胸がざわついた。


「横領……?」


凪は静かに説明を続ける。


「リンクルの経理ログを少し見たんですけど……

 微妙に数字が合わない部分があって。」


柊が補足する。


「データ漏洩の混乱に紛れて、

 裏で金を動かすつもりだった可能性が高い。」


環の目が大きく開く。


「じゃあ……

 芦野あしのさんのキー操作は……

 “横領を隠すための事件”として使われた……?」


凪はうなずき、静かに言う。


「はい。

 “トリガーを引いた犯人”に見せかけられるよう、

 最初から仕組まれてました。」


柊は深く息を吸い込み、言った。


「波多野は……自信家の宮野さんをそそのかし、

 わざと“JOKER”を仕掛けさせた。

 調査する誰かが来ることも読んで。

 それがたまたま俺たちだった。」


環は手を胸に当てた。


(……波多野さん……

 どれだけ、結月ゆづきさんを……

 そして宮野さんを……利用したんだろう……)


凪はパソコンを閉じ、柊と向き合う。


「柊先輩。

 “あの人”に協力を仰ぎたいんですが……

 波多野はうち(アークシステムズ)の

 システムも狙うはずです。」


柊は微笑む。


「……ああ。そうだな……

 そろそろ出番だな。」


環が驚く。


「あの人……?」


凪が目を細めて笑う。


「天才リブーター桐生蒼真きりゅうそうまさんです。」


環の胸に微かな緊張と希望が灯る。


(……蒼真さん……Blue_echo……)


波紋の中心へ、

アークシステムズは確実に進み始めていた。

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