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EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season9 ― 見えない影と、暴かれる真実 ―
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第11章 Blue_echoの再起動(リブート) ― 静かなる天才、再び現る ―

アークシステムズの会議室。

午前10時。


空気は張り詰めているのに、どこか“整った静けさ”があった。


凪(なぎ)が端末を立ち上げながら言った。


「……蒼真(そうま)さん、そろそろ来るはずなんですけど——」



その時、内線電話が鳴った。

環(たまき)がすぐに受話器を取る。


「はい、アークシステムズです――あ、はい。お待ちしておりました。今、伺います。」


電話を切ると、柊(しゅう)のほうを見た。


「蒼真(そうま)さんがいらっしゃいました。迎えにいってきます。」


「ああ。頼む。」



◇



ドアが開き、

白いシャツに紺のジャケット、柔らかな気配をまとった男が入ってくる。


桐生蒼真(きりゅう そうま)。

ハンドルネーム《Blue_echo》。


「おはようございます。……遅れてすみません。」


声はいつもどおり静かで、

どんな状況にも飲まれない“深い水底のような落ち着き”を持っていた。


凪(なぎ)が嬉しそうに笑う。


「蒼真(そうま)さん!お忙しいのにすみません!」


柊(しゅう)は穏やかに頷いた。


「来てくれて助かる。状況は伝えてあるとおりだ。」


蒼真(そうま)は軽く会釈し、環(たまき)の前で足を止めた。


「改めまして、環さんも……お久しぶりです。」


環(たまき)は緊張しつつも丁寧に頭を下げる。


「はい。お久しぶりです。……よろしくお願いいたします。」


蒼真(そうま)はにこりと微笑む。


「はい。もちろん、お力になれれば。」


その笑顔に、環(たまき)の胸が少しだけ軽くなる。


(……蒼真(そうま)さんの優しさ……前と変わってない……)



◇



席に着くと同時に、蒼真(そうま)の表情が変わった。

柔らかさの奥にある“プロの顔”。


凪(なぎ)がログを映しながら説明する。


「今回の仕掛け……2種類の手口が混ざっていて——」


蒼真(そうま)は凪(なぎ)の言葉を遮(さえぎ)らない。

ただ静かに、深く頷きながら画面を見つめる。


「……Insert と Esc ですね。」


柊(しゅう)が驚く。


「もう見抜いたのか。」


|蒼真は目を細める。


「ええ。

 これは……“トリガーの仕組みそのもの”が目立ちすぎる。

 丁寧につくったコードの上に、

 “雑に塗られた別の意図”が混ざっています。」


環(たまき)が息を呑(の)む。


(蒼真(そうま)さん……すごい……

 凪(なぎ)くんですら1日かかった部分を……すぐ……)


凪(なぎ)も苦笑しながら言った。


「さすが……。僕が言いたいことを全部先に言われました。」


蒼真(そうま)は照れたように目線を落とす。


「いえ……凪の解析があったから、すぐ気づけました。」


柊(しゅう)が話を戻す。


「波多野(はたの)が宮野(みやの)の“癖(クセ)”を利用した……というのが、俺たちの結論だ。」


蒼真(そうま)は静かに目を閉じた。


「……波多野(はたの)さん。 あの人は、人の“自尊心”を利用するのが上手いんです。」


環(たまき)がハッとする。


「宮野(みやの)さんの……プライドを……?」


「ええ。

 “あなたほどの技術者はいない”

 “あなたなら正しく仕掛けられる”

 そう言われれば、自信家の人は動いてしまう。」


蒼真(そうま)の声は淡々としているのに、

その奥に“静かな怒り”が宿っていた。


「でも……利用されたことに気づいたとき、

 宮野(みやの)さんは——壊れます。」


環(たまき)の胸がきゅっと痛む。


柊(しゅう)が低く言った。


「……だからこそ、急ぐ必要がある。」


凪(なぎ)が頷く。


「はい。波多野(はたの)の“動き”がそろそろ出ます。」


蒼真(そうま)は端末を閉じ、落ちついた声で言った。


「波多野(はたの)さんは……

 “自分の計画が揺らいだとき”に必ず一度、

 動揺を隠すための行動を取るタイプです。」


柊(しゅう)が目を細める。


「つまり……そろそろ何か仕掛けてくる。」


「はい。

 一度、波多野(はたの)さんの端末……

 僕が直接見たいです。」


環(たまき)は驚いた。


「蒼真さんが……直接……?」


蒼真(そうま)は微笑む。


「ええ。

 ここから先は、“Blue_echo”としての仕事です。」


静かな声なのに、

その言葉は鋭い刃のように空気を切った。


アークシステムズの4人は、

ついに“波紋の中心”へと手を伸ばしはじめていた。

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