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85 一人一話

 丞は月曜日の準備したのか確認したら49話目まで戻りました。

 金曜の夜から日曜の夜までで35話・・・


 そんな時間経過の85話、楽しんで頂けたら幸いです。

「ああ、目撃者な。たぶんTKGで把握してるよ。ショックを受けてるようだってのは俺からも連絡しとく」


「お願い」


「こういうのはTKGの得意分野だ。まかせとけ。じゃあな」


「うん。じゃあね」

 全との話を終えた丞は弁当の蓋を開ける。

 電話する前は男性店員さんが気になって弁当も食べづらかった。

 これで心置き無く夕飯を食べられると言うものだ。

 学校で食べると脂が固まるので平日は選ばない焼肉弁当。

 今日は温められて溶けた脂身とタレの匂いが食欲を誘う。

 姫様がいたらタレしか残らないかもと考えながら、大きめに切り取った白米と肉を口に放り込む。

 美味いものは脂と糖でできているって本当だとしみじみと感じる。

 甘じょっぱいタレの染みた白米、確かに存在を主張する肉。


 上を見ればキリがないが、お腹がすいた今なら最高の味だ。


「烏龍茶の方が良かったかな?」

 砂糖の入ったコーヒーでは口がスッキリしないなと思いながら、丞は弁当とパンを平らげる。

 テレビで紹介されたパンはバターの風味にちょっぴり塩気が足されて甘味を引き立たせていた。

 紹介される価値は十分あったなと考えながら丞はアイスのパックを揉む。

 ちょうど良い溶け具合。

 蓋を開けて中身を味わう。


「ああ、美味しかった」

 結構なスピードで夕飯を食べ終わった丞は、人気ひとけの無い公園のベンチにもたれ掛かって空を仰ぐ。

 それなりに都会のこの街では、空が明るくて星が良く見えない。

 トレジャーハントの時に見た、遮る物の無い無数の輝きに比べれば十分の一ぐらいか?

 それでも、数えようとは思えない数だ。 

 見えてる星に惑星がありそれぞれに住人がいると考えれば、フぃみョンで見た事のある人はほんの一握り。


「姫様達は今頃どこを飛んでるのかな」

 丞は騒がしかった今日を思い浮かべる。


 フぃみョン内は宇宙人は人として自動認識される。

 起きた後に実際に会うのとは少し感じ方が違った。

 フぃみョン外ですんなり宇宙人に対応できたのは今までの経験あればこそだ。

 丞も下手をすればあの店員さんみたいになっていたかも知れない。


「最初に会ったのが姫様達で良かったな」

 わがままな姫様と苦労人のミッケニ。

 ほんの半日しか付き合わなかったが楽しかった。

 まあ、厳密に考えれば丞が最初に会った宇宙人は幼馴染み二人なのだが。

 次はジョンさん。

 地球人のふりをしていた人は除外で良いかな?

 丞は首を振って、あらぬ方向に向かって一人歩きする疑問をどっかに放り出した。

 携帯で時間を確認する。二十時半。


「まだ早いな」

 休日の寮は結構社員さんがうろうろしている。

 丞は弁当のゴミを自転車の籠に放り込んで暇潰しに本屋に向かった。



「あ~。今日は疲れた」

 忍者の如く自分の部屋に戻った丞はベッドの上に買ったラノベを放り出す。


「シャワー。シャワー」

 汗でベタつく服を脱いでさっぱりしようとユニットバスに入る。


「あれ? 点かない?」

 ユニットバスの電球が天寿を全うして御亡くなりになってたようだ。


「うわ。真っ暗」

 まさに一寸先は闇状態の中、丞は手探りでお湯をだす。

 

「シャンプーはどこだ?」

 体は上から洗う。子供の頃からの習慣に従って髪から洗っていく。


「量が多かったか」

 普段より明らかに多い泡が顔まで垂れてきて目を開けていられない。


「ええと、石鹸は?」

 目を閉じたままの手が宙をつかむ。


『もっと左です』

 真っ暗な空間で丞以外の声がした。


「だ、誰かいるの?」


 シャンプーをしている時に後ろから視線を感じるんです・・・


 コンビニのお姉さんに一店舗に一話あるのよと言われて、さっき本屋で立ち読みした、心霊特集を思い出しながら、丞は振り向いた。

 目が開けられ無いのだから、振り向いてもあまり意味はない。


 ボ~ゥ。


 まずは頭を流そうと前を向いた丞の眼前に白い生首が浮いていた。


「うひぃぃぃぃ!」

 丞は後ずさって壁にぶつかる。


「悪霊退散! なむあにだぶちゅ! アーメン!」

『見事にバラバラですね。御用がなければ退散しますが』

 生首が少し斜めになってへたりこんだ丞を見下ろす。


「何で、いつもの白い所じゃないの?」

 生首がシープだとわかった丞が立ち上がった。

 シープの着ている黒いタキシードが闇に溶けて、白い羊の首が浮いてるように見えている。


『あまり裸を見られるのが、お好きでは無いようなので』

 しれっと説明したシープの口の端がかすかに上がっている。


「絶対わざとでしょ? まさか本屋で心霊特集を立ち読みしたのも見てたの?」


『いえ、周囲の監視を始めるのは丞様が一分以上目を閉じてからです』


「ああ、いつも出てこないのは一分以内に髪を洗ってたからか」

 心臓のドキドキ音がおさまっていく。


『フぃみョンでスキャンした物体の位置情報をフィードバックしますか?』


「お願い」

 丞のまぶたの裏に白い線だけで黒い背景に描かれた浴室が浮かび上がる。


『目を開けると消えます。ご注意下さい』

 シープが線だけのユニットバスの扉を開けて出ていく。


「コンビニだけじゃなくて寮にも怪談ができそう」

 妖怪天井歩き猫。羊の首。メインディッシュ隠し。スパッツ鬼。


 丞はため息をついて温かいシャワーで冷や汗を洗い流した。

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