取り戻す、その4※キン視点
その木製の扉は鍵穴どころかドアノブもなかった、開けれねーじゃねーか。
『開けるには扉に手をふれて、やさしぃーくキスするんや』
そうきたか。趣味わりーな。
おれが扉に手を当てるとふわりと扉が光り、材質が木製からステンドグラスに変化した。月光に反射して光る白百合の庭に美しい衣を着た・・・王のステンドグラス。
「お前かよ!まさか此処にキスするのか!?無理だろこっち見るな気色悪い」
おれの今の姿があのおっぱいのものだとしても、おれはおれだぞ!?男とキスなんてしたかねーよ!たとえ女でも嫌だけど!
『王様に認められて初めてこの扉がひらくんやわぁ。初めて開けれたときはほんに嬉しゅうなったなぁ』
開けれる立場なのは喜べばいいのか嘆けばいいのかこのヤロー!
つっ・・・もう腹くくってキスするしかないじゃねーかクソッ。
おれはそっとガラスの王に唇を近づける『ちゃんと口にせんと』難易度上げやがった、うう・・・
「ちゅ」
ガラスのひんやりと硬い感覚、本物の王じゃなくてよかったかもな、此処まで近いと誰かも分かんねー。
ガラスに僅かな熱が伝わると、ガチャリという音とともにガラスで出来たドアノブが現れた。ようやくこれでスーに会える!おれはためらいなく扉を開けて愛しの間にはいった。
「スー!」
スーがいた。でかいベットの上で毛布を握りしめている。
「何よ?私をどうする気なの?早く出してよ、おにぃに会いたい」
「おれだよ、おれ、キンだよ!」
「?」
「えーと、あー、説明難しいから省く!取り敢えずおれはキンだ!おっぱいになっちまったけど、取り敢えずこっちに来い!」
スーの腕を掴んで窓の方へ小走りで向かい、窓を開き、身を大きく乗り出した。
「流石にすぐ下は屋根っていうラッキーはないか。」
高さはおよそ8メートルほどだからその気になれば飛び降りることはできる、でもその方法は今のこの体で耐えれそうにないし、何よりスーが危ない。
扉から出ればスーが逃げたことがバレてしまう。
「離してよっ!」
スーがおれの腕を弾いた、敵意丸出しの目でこちらを見ている。
「スー・・・?」
「おにぃはそんな女の姿じゃない!いくら私が子供だからって騙すのにも限度があるわよ!いい加減にして!」
「でも俺はキンで・・・」
「証拠を見せてよ!あなたがおにぃだっていう証拠を!」
何で、わかってくれないんだ?いや、思い出してみろ、おれだってあのナイフをおっぱいに突き立てるまで皮を着て変身するなんて半信半疑だったじゃねぇか、だったらやることは一つ、この皮を脱ぐことだ。
おれは腹の穴に手をかけ、上半身だけ脱いだ。
「おにぃ・・・本当におにぃだ・・・」
上半身分背が縮み、スーの視界に近づく。
「スー、一緒に逃げよう。」
スーの目に涙が溜まる、嗚咽のようなものも出始めるが、深呼吸して強引に押し込んだ。
「分かったよ、おにぃ。此処から逃げよう。」




