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異世界への扉〜今日はどこ行く?〜  作者: Hippopotamus
序章 君が望むならば
7/15

装備を整えろ!

 今日は心地いい鐘の音と共にさわやかに起きた。


 「……うるせぇ! まだ日も上がってねぇじゃねか!」


 しかし、目覚めてしまったものはしょうがない。のそのそと起き上がり服を着替えた。ちなみに昨日、どうやら町に大衆浴場があると聞いてハンナさんの宿に帰る前にひとっ風呂浴びたので体は清潔だ。


 さて、軽く朝の運動がてらスキルの確認をして朝飯でも食おうかと一階におり厨房のハンナさん朝の挨拶をしてから顔を洗うため井戸のある裏庭に向かう。

 顔を洗ってから新しく覚えたスキルの試運転を30分ほどしていると東の空が朝焼け色の染まり始め、軽くかいた汗を流す頃には気持ちのいい朝になっていた。


 そろそろ朝飯を食べようかと宿に戻ろうと扉を開けようとしたちょうどその時、扉が開いたかと思うと少し朝霧の混じる綺麗な朝日に照らされきらきらと輝く銀色の髪を、少し長めのショートカットにした騎士風の女性とすれ違った。

一瞬、その宝石のような髪に目を奪われていると、おはようと向こうから挨拶された。女性にしては若干低いかと感じるが聞き取りやすく落ち着いた声はその凛として芯のありそうなその綺麗な顔立ちによく似合っていた。

 「おはようございます」と一瞬遅れて挨拶を返すとふふっと少し微笑みを漏らしたかと思うと井戸に向かって歩いて行った。

 俺は世の中には綺麗な女性もいるもんだなと思いながらハンナさんのいる食堂へと向かった。


 「おはようさん! ホープ。朝ごはん出来てるよ。すぐ食べるかい?」


 「はい。いただきます」そう言ってカルクス銅貨を三枚カウンターに置く。


 「はいよ! ところであんた昨日は結構稼いだんだって? そろそろまとめて宿代払っておくかい? 少し安くするよ」


 「ええ。 そうしたいのも山々なんですけど、まだ装備が整ってないので今日、一式揃えようかと思ってるんです。 なのでとりあえず一日分だけでおねがいします」


 「なんだい! あんたまだ装備も揃えてなかったのかい!? それでよくクエストを受けてたもんだね! まったく最近の若いもんは危機管理なってないよ」


 「はい……すみません」


 「はぁ。しょうがないねぇ! 今日の宿代はツケといてあげるからその分ちゃんとした装備を買っておいで!」


 「ありがとうございます、ハンナさん」


 「いいさね! ライトちゃんのお友達は私にとっても息子みたいなもんさ。 その分いっぱい稼いでおいで!」


 そう言われ、今日も美味な朝ごはんをいただくと武器屋や防具屋が開くまでの間、先にクエストを受けに冒険者ギルドへ向かった。


早朝のギルドはクエストを受けに来た冒険者でごった返していた。まぁそこまでこのギルドが大きくないのっても原因のひとつなんだけど。

 目ぼしいクエストを見つけるとなぜか比較的空いているトリスのカウンターに向かうと15分ほどで自分の番になりトリスに話しかけた。


 「おはよう! トリス。今日も頑張ってるね」


 「ひゃい!? ってホープさんですかー、よかったぁ」


 「まだ、そのあがり症治んないんだ?」


 「私のあがり症は筋金入りですから!」


 「威張ることじゃないけどね」


 「ですよね……」


 「ところで今日はこのクエスト受けたいんだけど……」


 「はい! こちらのはぐれウルフの討伐と毒消し草の採取クエストですね? はぐれウルフの討伐は一つ上のランクのクエストですがよろしいですか?」


 「ああ。なるべく深入りはしないから大丈夫だ。それに今日はちゃんと装備も整えていくから」


 「まぁ、ホープさんなら深入りしなければ大丈夫でしょうけど……って今までちゃんと装備してなかったんですか!?」


 「あ、ああ……そ、そうだけど」


 「なにちょっと引いてるんですか! 引きたいのはこっちですよ!」


 「ああ、ごめんごめん。 あまりにべたなつっこみについ」


 「ついじゃないですよ! ていうかちゃんと装備は整えてください!」


 「いやー、今日同じこと言われたばっかだわ。 ていうかトリス俺に対しては結構ぐいぐい言うよね」

 

 「それはホープさんが変なペースに持っていくからですよ!」


 「人のせいにするんじゃありません!」


 「なんでー!?」


 うーん。こいつもなかなかいじりがいが出てきたな。 まぁこれであのあがり症が少しは治ればいいんだけどな。


 「でそろそろ行っていい?」


 「はぁ。もういいです。 あ。ちょっと待ってください。 先日の件についてギルド長からお話があるそうなので出来れば今日か明日にでもお会いになっていただけますか?」


 「ギルド長? 長ってことはここのトップだろ? そんな偉い人にまで出てくるのか」


 「ええ。 なにしろ今までにない事案ですから、ギルド長自ら確認したいらしいです。 すみません。 大事にしていまって……」


 「いや、トリスはちゃんと自分の仕事をしただけだろ。 気にするな。 それに俺は他の冒険者にばれなければそれでいい。 べつに怒られるわけじゃないしな! うーん、それじゃあ今日はそこまで遠くには行かないし夕方までには帰って来られると思うからクエストの報告をしたら行くよ」


 「はい、ありがとうございます。 それじゃあ終わりの鐘が鳴る前に三階のギルド長室までお越しいただけますか?」


 「ああ。了解した」


 「それじゃあ。 残念ながら私は今日、朝番なので夕方にはいませんけど、気を付けてください! 色々と……」


 「あ、ああ? ありがとな。 じゃ行ってくるわ」


 思った以上に大事になったなと考えながらギルドを出ると北の通りを抜け、武器屋などがある商業地区に向かう。


 十分ほど歩くと剣のマークが描かれている少し黒ずんだ年季の入った看板を見つけると中に入る。っとその前に念のためジョブの欄を異邦人に変えておく。武道家だと装備できなかった時、困るからだ。

 

 異邦人なら多分装備できるだろう、木の棒とか持ててたし。


 そして新ためて店に入る。


 ……いらっしゃいっと言う声とともに目に飛び込んできたのは二メートルはあろうかという巨体に橙っぽい暗めの赤色の短髪を軽く逆立て、黒いひげを蓄えたむきむきのでかいおじ様が人を視殺出来るんじゃないかという鋭い眼光で仁王立ちしていた。


 「……お邪魔しました」


 くるりとその場でUターンすると外に出ようとするとがしっと肩を掴まれた。


 「待て」


 「すみません。食べないでください。 食べるならせめて一思いに頭からいってください」


 「食べはせん」


 「え……?」


 「お前さん、冒険者だろう? それもかなり最近登録したばかりの初心者だ」


 そういって体を触ってくる。


 「やっぱり食べるんですね。 今度は違う意味で」


 「? だから食べやせん」


 そういうと奥に行き雑多に置かれた中から一振りの片手剣を持ってくる。


 振ってみろというので二、三度軽く振ってみるともう一度置かれた剣の中からさっきよりも少し軽そうな片手剣を持ってきた。そしてもう一度振れというのでまた二、三度振る。


 「初心者向きのショートソードだ。 お前は力よりも素早さで翻弄するタイプだろう。 それを使え」


 どうやら悪い人ではなさそうだ。


 「ありがとうございます。えーっと……」


 「……ゴルバだ」


 なんか顔に似合わずちょっとチョコっぽい名前だ。もしくは凄腕スナイパーか。


 「選んでくださってありがとうございます。ゴルバさん。私はホープと言います。 気に入ったので買わせていただきます。 おいくらですか?」 


 「……3500ペカだ」


 カードでおねがいしますと言って腕輪をカード化する。支払いを終えてちゃんと支払えているかカード確認する。


 「ありがとうございました。 これから色々お世話になると思いますがよろしくお願いします」


そういって頭を下げる。

 ああと手を軽く上げて奥に入っていく。

 外に出る瞬間、死ぬんじゃねぞ……という声が聞こえてきた。



 外に出て剣を装備出来ているかメニューで確認するとちゃんと装備されており、ブロンズショートソードと書かれていた。そしてATK+5となっていた。


 次に、鎧のマークの描かれた新しそうな看板のお店に入る。 

 いらっしゃいませー!っとひょろい軽そうな男性が出てきた。


 「何をお探しですか? これなんていいですよ。金ですよ金!」


 金の鎧なんてだれが着るんだ。


 「いえ、なんか初心者用の動きやすい防具ってありますか?」


 「え、あーはい。こちらですねー」


 見るからにやる気なくしやがった。その時奥から大きな声で怒鳴り声が聞こえてきた。


 「ごらぁ! いっつも言ってるじゃねぇか! お客を選ぶんじゃねって! またやってんのかおめーは!」


 すると奥から髭はないがさっきお世話になったばかりのゴルバさんにそっくりなおっさんが出てきた。あれ…? どいうことだ?


 「すまねーな! にーちゃん! こいつにはあとで厳しく言っとくからよ! ってどうしたんだおめーさん? ああ、さてはおめーさんはじめてだな? そいでゴルバの店に先に行ってきたんだろ? ありゃ、俺の兄貴だ。 俺はロドスってんだ。 まぁ贔屓にしいてくれや!」


 ぽかーんっと話を聞いていたがはっと我に返ると挨拶を返した。


 「あっ、私はホープといいます。一昨日この町に着いたばかりで、昨日冒険者になりました。ゴルバさんにもさっきお世話になりまして、ロドスさんもこれからよろしくお願いします」


 そういうとロドスさんは、がははっと笑いながら俺の背中をバシバシと叩いた。


 「冒険者には珍しく礼儀正しいにーちゃんだな! よろしくな! ホープのにーちゃん。 おーっと、防具だったな。 ちょっと待っとけ!」 

 そう言って奥の棚から何かの魔物の皮が使用された動きやすそうなレザーアーマーを持ってきた。


 「こりゃあ、ワイルドブルを使ったレザーアーマーだ。 動きやすくて丈夫だ、初心者には少し高ぇかもしれねえが物はいいもんだ。 それに命を預けるもんなんだ、少しぐれぇしっかりしたのを買わなきゃだめだ!」


 試しに着けてみるとぴったりだ、そして確かにしっかりしている、しかも思った以上に動きやすい。さっそく気に入った俺は値段を聞いてみた。


 「正直かなりいいですね、これ。 おいくらですか?」


 「そうだろ? 8フォリスだな。今ならついでにひざ当てもつけるぞ」


 「ということは8000ペカか……」 うーん……ええい!ままよ! 


 「これ買います!」


 「おお、いいねー気に入った。最近の冒険者にしちゃ思い切りがいいな。 最近のやつは防具をケチりやがるからよ! いいぜ! もし修理が必要になったら来な! 次回だけタダでやってやるからよ」


 「ありがとうございます!」そしてこれもカードで支払う。一気に昨日稼いだ分の殆どが消えてしまった。


 また来いよ! 死ぬじゃねーぞ!とがははっと豪快に笑ながら送り出してくれた。


店を出ると装備を確認する。ちゃんと装備されてるようだ。胸のパーツにはワイルドブルのレザーアーマーとなっており、DEF+8 AGL-2と書かれていた。


 次にカードを確認する。


名前:ホープ

年齢:21歳

種族:人族

レベル:5

天職:武道家

ランク:F

所持金:4900ぺカ


 うーん、結構使ったな。まだライトに金返せてないし、ギルドにも2ソドリスの借金がある。しかも今日の分のハンナさんのところの宿泊費もだ。あれ?……俺、借金まみれじゃね?


 よ、よーし! その分稼げばいいんだよ! 装備も整えたし! 今日は狩りまくるぞ!

 

 そして俺は西門近くにある試しの森に駆け足で向かった。

 

ウホッ!

ちなみにあの兄弟は双子で、見た目は某何たらのアルケミストの師匠の旦那さんです。



ご意見ご感想はちゃんと装備しなければ意味ないぞ。



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