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GHOST Tracking  作者: Anzsake
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鬼灯 好奇心


再生ボタンを押す。硝煙が晴れて一機のGHOSTが顔を出す。6つの目のような多角センサーは相変わらず禍々しい。標準的な近距離用のフェイスだ。


そいつが敵の4脚戦車と距離を詰める。戦車の砲塔がGHOSTを捉えた。砲身から火が吹き出すその瞬間、GHOSTが横に大きく回避する。その後すぐに直進にブーストを吹かし、右手に持っている小型のアックスを振りかぶる。

砲塔と車体の隙間を横に一閃。切り落とされた砲塔がズレる。


停止ボタンを押してウィンドウを閉じ、別のファイルを開く。また同じGHOSTが、アックスで戦車を撃破する動画だ。


「このアックス。自衛用の緊急用でしょ?」


横のサナの方を見る。


「そう。イカれてるでしょ?」


3本目の動画も状況こそ違えど、やっている事は同じだ。こんな馬鹿な事を何人もやってるとは思いたくない。


「GH-Cz-012。こいつ用の格闘兵装が特別に発注されたから、ホオヅキにはそれのモーションを作ってって依頼だよ」


ファイルを閉じて、デスクに置いた資料をもう1度開く。ほとんど鈍器のような不格好な銃剣。その詳細やスペックが書かれてある。


「随分と高待遇ね。Czってそんな金回りいいんだ」


「ま、ホオヅキなりに進めちゃっていいよー」


そう言ってサナは自分のデスクに戻っていく。3本目の動画が終わり、自動的に4本目の動画が流れる。


廃墟のビルの隙間を、GHOSTが飛ばす。射線に入った所で上に跳ね、敵の射撃と同時にバックステップ。0.5秒で前にブーストを吹かし相殺。アックスを叩き込む。


格闘兵装はこれまでも幾つかあったけど、やはりどれも戦術的価値は薄いと判断されたのか、今も使ってる話は聞かない。

それなのにまた、性懲りも無く次が来た。こいつも他の馬鹿と大した差は無いけれど、気になるのは型式番号だ。


Cz区画の戦線には、GHOSTは300機程投入されているはず。その中の12番は最古参に当たる。そんなヤツがただの標準装備だけでここまで生き残っているのは何だろう。


回避は上手いが、他の上澄みもやる一般的な挙動だ。当然、4本の動画全てが横の一閃。位置取りも上手い。


量産型有人人型兵器GHOST。自律兵器の暴走にて戦場となった戦線に投入されるロボットだ。一般的には射撃を主軸にする想定がされており、格闘兵装は接近された時のお守り程度の価値しか無い。


実際、GHOSTのモーションは簡素な物で、斧の攻撃モーションは横の一閃ひとつだけ。


私の仕事は、GHOSTの新兵装を使う際のアニメーションを作る事だ。射撃兵装の反動や重心を考慮した姿勢制御のプログラムを武器にインストールし、それを装備したGHOSTが

、その動きを反映させる。

そして今回の依頼が、新兵装である銃剣用のアニメーションを作る事。


「……誰が撮ってるんだよ。こんな動画」


一人で昼ごはん食べる時も、退勤する時も、電車に揺られる時も、頭の隅には仕事がある。

アパートの階段を上り、玄関の鍵を開けて自室に帰る。殺風景で何も無い。いつもの静かな部屋。


カバンを床に落とすように置いて、何も考えず家事をする。自律兵器との戦争が始まってから、娯楽産業は一気に衰退した。元々勤めていたゲーム関係の会社が潰れて、私の次の仕事場になったのが戦争産業だ。


家事が終わると手持ち無沙汰になり、ベッドに座って仕事の事を考え出す。どんなモーションならより複数の状況に対応出来るだろうか。でも、そもそもGHOSTは格闘戦を想定していない。


持ち帰った資料をもう一度読み返す。いつものGHOSTの依頼のはずなのに、この資料に書かれたボタン操作は、いつもよりひとつ多い。

明らかにそれを想定して書かれているから、ミスには見えない。


「……変だな」


窓の向こうのビルはずっと明かりが付いている。いっそあれくらい働いた方が、生きている実感を得られるだろうか。

なんて考えは、前線の兵士への冒涜か。


服を脱いでシャワーを浴びる。 流石に結婚を考える歳になってきたが、面倒が勝つ。何より、大した身分も無い自分を欲しがる男が居ない。


なんでも出来る気がするのに、思いつくのは仕事の事ばかり。それすらも満足に動けない。

もしも私が一からモーションを作れるなら、あんな直線的な回避動作から作り直してやるのに。


いや、やればいいのでは無いか?どうせ場所にも人にも縛られていないのならば、それこそ現地に行って調べてみたい。

暇だから。


シャワーを出て、髪も乾かさずPCを開ける。依頼主の連絡先を開き、メールを送信する。


件名:GH-Cz-012について


可能であれば、実機の戦闘データを直接確認したいです。

現地へ行っても問題ありませんか。


勢いで送った癖に、めんどくさい事に手を出したと後悔する。ただいつものようにアニメーションを組み立てて送ればそれで仕事は終わったはずなのに。

ただ隣のビルの灯りの、画面の向こうの戦場の、そんな頑張ってる人に感化されただけなのに。


コーヒーを淹れようと立ち上がった時、メールが帰ってきた。ただ一言、適当な文が帰ってくる。


件名:Re.GH-Cz-012について


いいよ


……もしかして、現場の人の依頼なのか?

■GHOST


巨大な自律兵器の暴走に対抗する為に開発された有人の人型兵器。2年前に正式配備されて以降、現在も生産、運用が続いている。

黒を基調としたフレームがほとんど剥き出しになっており、装甲は胸部等の1部のみで、身体で弾を受け切る事は想定されていない。

頭部の形状は、推定される照準距離により換装される。


全高623cm。重量8.2t



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