14 同期交流(1)
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《監視者》へのメール
from:K
本日、【冷界】で冷鬼一体捕獲、元の所へお帰り頂いた。
特記事項:なし。
質問:最近特に【冷界】が寒過ぎる。何か対策有る?
〈end〉
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Kへのメール
from:《監視者》
委細了解した。
寒くなる前に済ませろ。アルミスーツを使え。
この軟弱者!
〈end〉
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「ぷはーーっ、美味しい! あ、すみません、生中おかわりっ」
午後七時過ぎ、増えてきたお客の注文に走り回る店員さんを呼び止めて空いたジョッキを高く上げたのは、目の前で見事な飲みっぷりを披露してみせた黒木さんだ。
そう、あの黒木さんが私の向かいに座っている。
間に枝豆と茄子の煮浸しの乗っかったテーブルを挟んで。
その隣では山岸さんがメニューを眺めながら焼き鳥の注文票に本数を記入していた。
例のPJTの連絡会は、恙無く済んだ。
私の報告も、補足部分も含めてメンバーの満足のいく内容だったようで、一先ず胸を撫で下ろした。
何とかこのままこのPJTのメンバーに踏み留まれそうだ。
二課に戻る途中、山岸さんから「今夜同期飲みするけど、萩野さんも一緒にどう? 誰か一緒に連れて来てよ」とお誘いがあり、何だか一山越した感で脱力していた私は直ぐに快諾した。
仲の良い同期で総務にいる荻野由理を伴って指定された店に行くと、そこに黒木さんが居たという訳だ。
後で遅れて技術部の遠藤さんも来るとかで、計五人での同期飲み会だが、話を聞いていると皆急遽集まった様子なので、もしかしたら、私と黒木さんを気遣った山岸さんが設定してくれたのかな。
よく知る黒木さんに謝罪する機会を与えたかったのかもしれない。
黒木さんは私が現れるや、昼間の自分の態度について謝っていた。
横でオギノは不思議そうな顔をしていたけど、私は気にしていないと黒木さんに伝えた。
あの時の感情のままだったら卑屈になっていたかもしれないけど、一先ず無事に連絡会を終えた今では素直にそう言えた。
「ああ〜、でも悔しいな〜。私も倉吉チームに入りたかった〜」
二杯目の生中もクイクイ傾けながら、黒木さんがまだボヤいている。
つまりは昼間の失言も、私に対する不満というよりもこの気持ちが強過ぎた故のストレート過ぎる発言だったという所か。
山岸さんによると、黒木さんは大学の工学部で建築系のゼミでは紅一点だったそうで、だからという訳ではないのだろうが、男っぷりが良いというか、何でも率直にズバズバ言う所があるのだという。
言った本人は悪気は無く後で指摘されて初めて気付くこともあるそうだ。
企画部で無いオギノの前で部内の話題を話すのは憚られたが、彼女は気にする様子なく、「いいなあ、倉吉さんとチームなんて・・・」と目をハートにしていた。
そこで私はふと気付く。
黒木さんが携わっている『ダイヤモンド・パレス』の企画は倉吉ともう一人のツートップ、乾さんが居るチームだ。
それを指摘すると、オギノはまたもや「ええーっ、乾さんと同じチーム・・・企画部羨まし過ぎっ」と肘で小突いてきた。
黒木さんはこんな低俗な話には乗ってこないかな、と思っていたら、「顔はねー、どちらかというと私は乾さんに一票なんだけど」と、意外にもそこから男前総選挙の話になって、女三人で盛り上がっている内に焼き鳥と遠藤さんが到着して、仕切り直しの乾杯をした。
共に修士卒で落ち着いている男二人を他所に、誰の推しメンが誰でと楽しく会話していると、「え? 萩野さんは沢内さん推しなの?」と、山岸さんが驚いて口を挟んだ。
「はい、いつもオギノの所に行く時は秘書課の中を探してしまいます。でも大抵不在で、甲斐課長と目が合う前に退散するんです」
秘書課の甲斐課長はオギノの推しメンだーーーシブい。
冗談めかしてそう答えると、山岸さんは「てっきり倉吉さんかと思った。あんなに赤面して慌てていたし」と意地悪そうに笑って言う。
「そりゃあ、緊張もしますよー」と笑って誤魔化した。
照れていたと思われているならその方が良い。
恐怖のあまり硬直していたとバレるよりは。
「そうかー、倉吉さんはあれで何人も悩殺してきたそうだから。結果仕事で役に立たなくてメンバーから外すこともよくあるらしいし。でも、萩野さんは大丈夫だね」
山岸さんがニコニコして言うと、黒木さんがまたはぁー、と頬杖をついて溜め息をついた。
それを見てオギノが「黒木さんは乾さんが居るじゃないですかぁ」と慰めている。
すると黒木さんが、「乾さんねー、あの人、よくわからないから・・・」ポツリと呟いた。
一課は六人の主任の下にそれぞれ数人から十数人の人員を配してグループを形成し、その中でPJTごとに少人数のチームを組むのだそうだ。
PJTの内容に応じてグループを超えて組んだり協同したりするそうだが、黒木さんのいる本田主任のグループは人数も多く、他グループと仕事する事は殆ど無いらしい。
その中でも目立って活躍している乾さんなのだがーーー。
「乾さんって、天才肌って言うか、ホント有能だし頭キレるし、仕事も出来るんだけど、勘とか閃きとか何か訳分かんないで済んじゃう事が多くって」
そこが不満ではあるのよね・・・、の溢した黒木さんは、新たに酎ハイをオーダーした。




