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98 俺は分かっていなかった

 3日間でやれる事はやった。いや、俺は料理人じゃないし、出来ることは限られている。


 基本的なことはツァレに頼んだ。子供達に食べれるようにと気を使った食事を作っているツァレは基本的なことは問題なかった。

 後は、サッテリーナさんに頑張ってもらった。スープの出汁というべきものをいくつか種類を作ることで、スープの種類を増やすことにした。それに中に入れるものを工夫すればなんとかなるだろうと思っていたが、ここで活躍したのが、あのキアナだ。


 俺の出したご飯をハイエナのように付きまとい、食事にありついたキアナは一度食べたものの味を覚えて、それを再現したのだ。

 流石に香辛料がないのでカレーまでは無理だったが、シチューもボルシチもポタージュスープも作り上げたのだ。料理スキルってスゲーよな。



 そんなこんなで、俺は再びゼルトとソルと共に行商人として旅立つのだが、ジェームズ、なんだ直ぐに戻って来るのだろうって毎回毎回そんなに問題は起こらねーって。なぜ目を反らす。


 キアナ、料理は任せろ?お前だけが作れても仕方がないから、きちんとレシピ化しとけよ。


 アルティーナなんだ?モジモジして・・・いってらっしゃいのちゅー?意味がわからん。


 ソル。どこに笑う要素があるんだ?さっさと行くぞ。


 そして、騎獣に乗り首都ミレーテを後にした。


「なぁ、ゼルト。俺は普通に商売というものをしてみたい。」


 騎獣に乗って北に向かいながら、ゼルトに俺の要望を言った。


「エン。言っておくが、俺は普通に行商人が巡る町に行こうとしただけだぞ。」


「それなんだが、中核都市で露店は出せないのか?」


「それは出店することはできるが、商業ギルドがある街じゃ、ギルドの許可書と場所代が必要になってくる。ぽっと出の商人が場所代と許可書代を稼げるかと言えば稼げないぞ。」


「ゼルト、今の俺は稼ぐ必要はなかったよな。どういう商品が需要があるか調べればいいんだよな。」


 俺は今回の行商で儲けることばかり考えていた。この時期に売れそうな商品を選び、フィーディス商会がない町にいって2回とも失敗した。いや、失敗でもないが、本来の目的を何も遂げることができなかった。


 小さな町にはその町の事情がある。魔物に襲われやすかったり、安全に漁をするために生贄を出していた。

 小さな町だとそういう事が顕著に現れるのだろう。この世界には多種多様な種族が存在する。その種族によって必要なものが違ってくる。


 しかし、中核都市となれば、多種多様な種族が集まって暮らしている。そこで、種族的に何が必要なのか統計がとれるのではないのだろうか。

 今回使用した魔魚が一部の種族しか食べられていないように、種族によって求めるものが違うはずだ。


 問題なのが、行商人として求められるということだ。日用品などは街にある各店で揃えればいいだけなんだから


「エンがそれで良いっていうならそうしてみるか。だが、大きな街と小さな町とでは需要が違うぞ。」


「それは分かっている。ものは試しだ。」





 俺は分かっていなかった。全くわかっていなかった。

 北のトロスという中核都市にたどり着き、ゼルトに商業ギルドに行ってもらい、場所代と許可書代を払ってもらって、露天を出すことになった。

 ゼルトに商業ギルドに行ってもらったのは、俺じゃ絶対に許可をもらえないからな。


 しかし、なんか見覚えのある街だなと思っていた。まぁ。中核都市となると大きな外壁が魔物よけとして存在しているから、同じ様な街がいくつもあるのだろうと思っていたのだ。


「ねぇ。あの子、ルギア様の子供かしら?」

「可愛いわね。」

「何を売っているのかしら?」

「たくさん買ってあげようかしら?」


 俺の出した露天は多くの女性に囲まれていた。俺は甘く見ていた英雄と言われたルギアの知名度と黒豹獣人としての俺の姿。これ、統計を取るというよりも、ルギアのおかげで売れているよな。

 今思い出したが、ここルギアがギルドマスターをしていた中核都市じゃないのか?

 ゼルト!なぜここを選択した!


 俺が春用にと用意した布地が飛ぶように売れた。後は、香り付けされた紅茶だ。

 これはあちらの商品ではなく。アイリスとサッテリーナの共同作業で出来上がったものだ。元々のこちらの紅茶に香り高い春の花をアイリスに育ててもらい、サッテリーナの時間経過で乾燥させた物を混ぜただけの紅茶だ。だからとても安上がりに出来上がった。


 サッテリーナに感謝していると、『腐敗するだけのスキルをこのように使っていただけて、私こそ感謝します』と泣きながら言われてしまった。腐敗って一体今まで何に使っていたんだ?


そして、トロスでの行商は問題なく終わったの・・・か?


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