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なんて、二人にはかっこつけてみたものの、カッコつけた割には廃校の中は薄気味悪い。思わず舌打ちしそうになった、というか、思わずしてた。嫌な気配は体育館の方からしているが、中にいる怪異の数が多くはっきりとはしない。
「早速のお出ましか、だるい限りだ」と自然と悪態が出た。
いきなり前方から片腕のない血まみれの用務員のような恰好をしている男がこちらへ走ってやってきてた。うめき声しか聞こえないところから見ると話すことはできそうにないようだ。
俺は手を前に突き出し見えない壁を押すかのごとく前方の空間を押した。すると、男は見えない何かに吹き飛ばされるように吹き飛んでいった。
「一応、忠告するがこのまま向かってくるなら浄土にも行けず消されることになるがいいか?浄土へのいかせ方は知らねぇんだ。」
男は立ち上がると怒ってしまったのか先ほどよりも大きな声で呻きこちらへ駆けてくる。ちっ、と舌打ちをし、今度は目の前の空間を殴りつけた。するとさっきよりも強い衝撃を受けたように男は吹き飛んだ。
迎撃だけだと埒が明かないか。ひとまず逃げるか。直接触れるのも危険だしな、鉄の棒か何か鉄製の物があればいいんだけどな。
考えていると男はこちらに走ってきていた。反対側からは同じように男の霊がこちらに向かって走ってきていた。挟み撃ちされたような形になってしまった。
ここで力を使ってしまうと下手したら、祓屋、しかも弓削の者にばれてしまう。絶対に面倒なことになってしまう。それだけは避けたいが時間を使っている余裕もない。仕方ないと決心して挟み撃ちしようとしている二人の男に対して左右の手をそれぞれ向けた。
そして、手を開き二人の霊をまるで握りつぶすよう手を握った。すると、男の霊はそれぞれ苦しむように呻きながら光の粒子のようになり四散してしまった。
先に進んでいくと、とりわけ張り詰めたような雰囲気が辺りを覆う。どうやら、あの女の子のようだ。女の子は俺の目の前に立つとニコリと微笑んでいた。これまでの怪異とは違うと直感で感じた。
「強いんだね、あなた。私はね姫って呼ばれてるんだ。」
「なんと、怪異に話しかけられる日が来るとは。なんか用か?俺はこの先にいる連れの者に用事があるだけなんでな。通してはもらえないか?」
「ダメだよー。そんなことしたら怒られちゃうよ。引き返すか、私と遊ぶかのどっちかだよ?」
かわいい顔をしているが言っていることがなかなかに怖い。こっちがなかなか反応しないからなのか、女の子は笑顔のままだが、殺気をこちらに向かって放っている。おてんば娘ってだけではなさそうだな。
「時間切れだよ。」
耳元から姫の声が聞こえてきた。声とその殺気に驚きを隠せないながらも、反射的にしゃがみこんだ。頭上をぶぅんと何かが速いスピードで過ぎ去っていく音が聞こえた。反射的に何かから避けることができたらしい。
追撃を避けるためにその場から離れた。すると姫は大きな鋏を持っていることがわかった。小学生くらいの美少女が大きな鋏もって殺気を放ってるなんて笑えないなー、なんてのんきに考えていた。
「意外とやるんだね。まさか避けられちゃうなんて。」
「いきなりあった人を殺そうとするなんて、最近の小学校ではそんなことを習うのか?時代も変わっちまったもんだな。知らないかもしれないがよくないんだぞ。」
軽口をたたいてみたが内心はかなり驚いている。かなり強い怪異であることは間違いないな、まさかの武器持ちでしたかー。少し本気でいくか。
「あれ、やる気になっちゃった?」
「時間がないからな。もう、正当防衛だし、うらみっこなしな。」
姫を見つめて身構えた。しかし、姫は先ほどまでの雰囲気とうって変わって殺気を完全に消してしまい、にこにこと笑いながら、いきなり「じゃあね」と言って消えて行ってしまった。
何だったのだろうか、姫という怪異について考えを巡らせていたが、誰かの悲鳴が聞こえた。考えるのをやめ、その悲鳴の聞こえる場所へと走って向かった。
「消されちゃったら、おこられちゃうからなー。もっと遊んでみたかったな。残念。」
暗く静かな廊下に女の子の残念そうな声だけがこだましていた。
さっきの怪異には驚いた。こちらが本気を出そうとしたら気配を察知して逃げるとは。最近、怪異になったやつではないな。ヨリコさんに呼ばれたわけでもないだろう。何かしらの理由がありその目的を達成するためにいたんだろう。
疑問は尽きることはなかったが、一応、梓を助けることが目的であるためにそれを達成するためにも廊下を走り進んだ。
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