変な人…
今回短めです。
私はいつまでここに居れば良いのだろう?
…知ってる、サービスが終了するまでだ。
いつものようにウサギ型のモンスターを眺める。
そして思うのだ、羨ましいな…って。
動き回って、大きなマップの好きな所に行けて。
まぁ…初心者に狩られてランダムにリスポーンする身になってみないと分からないけれど。
彼らは彼らで思うところがあるのかもしれない。
叩かれたら痛いのかな?…いや、それは無いかな。
私は彼らに叩かれても痛くなかった。
耐久力と怯み値が設定されているだけだった。
…ふと、ウサギを狩る冒険者の中に変な冒険者を見つけた。
皮の鎧を着た小柄な少年アバター、ここまでは良く見るのだが武器がおかしい。
持ち手に蔓のような装飾が施された、植物を思わさせる模様の真っ直ぐな剣。
固有の名前を持ったユニーク装備である事は間違い無いと思う。
剣を一回振るだけで体勢を崩し、アクションゲージを使いきり長いディレイを有していた。
おまけに一回一回体勢を崩しているため攻撃が当たらない。
装備には適正レベルが存在する。…あれは明らかに適正レベルを越えていた。
いくら強い剣でも一回振るだけで疲れる上に当たらないのでは意味が無い。
あれなら青銅のナイフかなんかの方がマシなはずである。
…しまった、見すぎたようだ。目があってしまった。
少年は私の元に駆け寄ってくる。
「ふぅ…、戦うのって難しいですね。コツとかありますか?」
ずっと見ていたのでアドバイスでもくれるのかと思って近付いてきたようだった。
少年は私の花畑で座り込む、座ると体力の回復が早いのだ。
「え…、あの、ごめんなさい。私は…戦えません」
「へー、支援職の方ですか?それとも製造?」
「…NPC」
「…」
「…」
妙な沈黙が二人の間に生まれた。
「…あ、でも、一つだけ」
「あ、はい!」
「武器…変えた方が良いかも?」
「マジですか!これめっちゃ強い武器だと思ってた!」
「あ、うん。武器は…強いの」
「では何故?」
「あうー…、えっとね。君が、まだ弱いの」
「なんと…、弱いと使えないのか…」
「…うん。武器のステータスに適正レベルって書いてない?」
「えーと…90!?…ショックだ」
「ごめんね?」
「いえ!教えてくれてありがとうございます!また来て良いですか?」
「へ?…あ、うん」
少年は町の中へと走っていった。武器を買うつもりなのだろうか。
それよりも、どこであんな武器を手に入れたのか気になる。
適正レベル90、設定できる最大値だった気がする。
…また来て良いですか…か。
「ふふ」
「何か面白い物でもありました?」
「ひゃう!」
目の前に少年が居た。
「な、なんで居るの?」
「名前、言い忘れました、アレクです」
「あ、ああ。それは…ご丁寧に」
アレクは再び町の中へと消えていった。
「変な人…」
見た目だけではNPCかどうかの判断は出来なかったりします。